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閑話3 宮古の心配

 月夜達が幻想郷にて修行を開始した頃。

 アルカンティー王国王城、勇者組も訓練より帰還し夕食の席に着いていた。地球にいた頃よりも確実にハードな運動をし、さらに下手したら地球の頃よりも上質な飯を食べる。勇者の面々の身体は男子ならば差はあるが筋肉が付いたことで逞しくなり、女子は引き締まった身体になりつつあった。

 習慣となりつつある各自の反省談でやや騒がしい食堂の一角、そこでは勇者組の唯一の大人である宮古と、勇者組の中でも個性的な方向に強くなっていた木陰(このかげ)実千みちが話していた。


「それは本当ですか木陰さん?」

「間違いないと思います」

「そうですか……ありがとう。でも、盗聴・・はいけませんよ」

「練習してたらたまたま聞こえちゃったんですよ先生」


 にひひっと何の悪びれもなく宮古の言葉を流す木陰。彼女の得た技能(スキル)は【陣地作成】。ある一定範囲内において様々な効果を発揮し、攻撃系ではないが極めて強力なスキルだ。

【陣地作成】の効果の一つに領域内の情報管理というものがある。言うなれば、木陰の領域ではあらゆる事象が木陰の手の内に収まるということだ。


 木陰はスキルレベルを上げるためにも常に【陣地作成】を行使している。それは王城でもだ。最近にいたってはスキルレベルも4まで上昇し、王城のほとんどが木陰の領域内となっていた。つまり、王城での言葉のほとんどは木陰に筒抜けているのだ。


「多分だけど明日の朝には発表されると思うよ」

「わかりました。木陰さん、このことは誰にも話さないでおいてくださいね」

「明日には知れちゃうけど、まあいいよ」

「ありがとうね」


 木陰は既に食事も終えており自室へと引き返した。彼女はもともとインドア派で、その性根には引きこもり願望があった。それが【陣地作成】というスキルに繋がったのではと、木陰自身も話すところだ。


 宮古は木陰に齎された情報に、自室に戻ってからため息をついた。ちゃっかりと城下町で買ってあったお酒を煽って顔を机に伏せた。


「結局駄目でしたか……」


 宮古は月夜が旅に発ってからも、生徒達が戦争に参加せずに済む方法を探っていた。それが教師としての務めであり、それ以前に、子供達に戦争を味あわせたくないという、ごく一般的にな感性だ。

 宮古は社会科の教師。それも現代社会を得意としており、戦争については嫌というほど勉強していた。まさかこんな形で知識が役に立つとは思ってもいなかったが、宮古はずっと模索していたのだ。


 しかしどうにも無理だった。地球の戦争について知識があっても、この異世界のことは何も知らない。調べようにも字を読むことが出来ず、情報が全くと言っていいほど得られなかった。


 ただその反面ら生徒達のやる気も尊重していた。だからこそ全力でサポートにあたっており、勇者組が今も政治的いざこざに巻き込まれず平気でいられるのは、宮古の尽力があってこそだった。


 生徒達からはちゃん付けで呼ばれ、明智にクラスをまとめる立場を取られても、やるときはやる。それが宮古凛だった。


 その心配はもちろん月夜にも及んでいる。

 宮古は月夜が旅立ち暫くしてから冒険者協会に依頼を出した。内容は月夜に関する定期的な動向報告。国から支給される金で支払いをした。

 衣食住が保証されており使い道も果実酒くらいという状況では、有意義な使い道だと宮古は考えていた。無趣味を寂しいと思う自分もいたが。


「月見里さん大丈夫でしょうか……。というよりも、ツキヨエルって……」


 宮古は冒険者協会からの報告を思いだし、安心と不安が絶妙に混じった浮かべた。もちろん字の読めない宮古は口頭での報告を受けていたが、報告をした職員も微妙な表情をしていた。

 月夜が冒険者となったこと、推薦を受けたこと、格上のはずの魔物を倒したこと、なぜかツキヨエルととある支部で崇められたこと、そして頼もしい仲間が一人出来たこと。

 地球にいた頃からあまり人と関わろうとしなかった月夜が変わっていることに、宮古は思わず頬を崩した。


「でも、なんでオルボア地方に」


 それが不可解だった。何せオルボア地方といえば魔王軍との戦線に接している地方だ。当然魔物も多く危険が……というのが宮古の考えだった。しかしそれもすぐに否定される。

 それは今は仲良くなったアリサやエルバ姉弟との談話の時の事だ。すっかりと溜まり場となった書物庫でアリサが唸るなか、カレインがティーカップをテーブルに置いた。


「いえ、オルボア地方で命の危機になるということはないかと」

「ど、どうしてですが?」

「明確な理由はわからないのですか、オルボア地方には魔物がほとんどいません。いるのは迷宮から逸れた魔物ばかりで、それも少数の衛兵対処されているのです」

「じゃあ、月見里さんは大丈夫なのですか」

「ツキヨ様なら十分対処可能かと」


 事実、月夜はオルボア地方の魔物くらいならば一人でも余裕だ。それは王城にいた頃カレインが見ていた頃のことで、さらに成長をしているだろう月夜なら大丈夫だろというのがカレインの意見だった。


「でもあんな田舎に行くってツキヨ、本当に妖精に会いにいったんだ」

「オルボア地方に妖精がいるんですか?」

「まあ噂よ噂。ツキヨは信じるって言ってたけど」

「意外ですね……」

「やっぱりそうなんですね」


 と、そこからはツキヨ談だ。もともとこの四人は月夜を中心に関わり始めた四人だ。図らずもとも話題は月夜についてのことが主になる。宮古が月夜定期動向報告依頼を出してからは、その報告日には必ず集まっているほどに。




お読みいただきありがとうございます!

今年はこれで最後となります。来年もよろしくお願いします!


よいお年を!

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