29話 それぞれの
大変遅くなり申し訳ありません! 学校行事が立て続けていて執筆出来ませんでした! これからは通常に戻ると思いますので、よろしくお願いします!
アルテミシアさんが消えた後、私達は部屋を出て建物を散策しました。とりあえずわかったことはここが途轍もなく大きく、そして秀麗な白亜の城という事です。ですから散策した後は、そもそも夜中に起きたこともあり眠くなってしまい、適当な部屋を見つけ三人で寝たのです。
そして起きたのはまったく変わらない、太陽が頂きに飾られた昼でした。これはまずいと二人を起こし急いで部屋を出ると、そこは廊下ではなく中庭でした。そこではアルテミシアが虚空に座って待ち構えており、
「修行を始めるぞ」
と宣言したのでした。それと同時にアルテミシアさんが指を鳴らすと、ルーラさんは問答無用で転移させられました。それに私とエルミダちゃんも焦りましたが、アルテミシアさんが手で制しました。
「昨日言ったとおり害獣駆除に送っただけだ」
「それ幻獣種ですよね!?」
「死にはせんから安心しろ」
「まったく安心できません……」
とはいえどこに転移させられたのかも分からず、どんな魔術を用いているのかも全くわからない私ではどうにもなりません。チープな言葉ですが、信じて待つ事しか出来ないのです。
「小娘、他人の心配ばかりしている余裕があるのか」
「すいません。お願いします」
アルテミシアさんは中庭に降り立つと、私ではなくエルミダちゃんに向きました。
「小娘……わかりづらいか。おチビ」
「おチビ!?」
「お前は妖精と遊んで来い」
「……え?」
「ではな」
また一人消えてしまいました。ここは怪奇の城なのでしょうか。ただ今回は安心出来……もしませんね。遊んで来いって、どういうことかわかりませんし。
いよいよ私の番です。
「さて小娘。お前がどの程度魔術を理解し、扱え、どんな戦闘をしてきたかは昨日も言ったようにわかっている。結論から言うとだな、お前に戦闘の才能は全くないな」
「……」
いきなり才能無し宣言をされてしまいました。いえ、自分でもあるかと聞かれればないとは答えますが、こうも断言されるとくるものがあります。
「【転写】を魔力ですることで魔術を行使するという発想はいい。多くの魔術を学んで自ら新しい魔術を開発したのもだ。が、それを使うセンスがない。
まあ、頭を使っている分有象無象よりはマシと言える」
今度は一転褒められました。意外でしたので私は反応することも出来ず、次の言葉を待ちました。
「故に私がお前に教えることは二つ。現代には伝わっていないであろう古代魔術を含めた幾千もの魔術。そしてそれを扱うために必要な純魔術師戦闘のイロハだ」
***
銀閃は固い攻殻にぶつかって火花を散らし空気を割るような音走らせた。
「ノロマのくせに硬いわねッ」
ルーラが思わず口汚く吐いた。それも仕方ないことだろう。
ルーラはどことも知れぬ洞窟に転移させられ、目の前には自身の10倍の巨躯を誇る幻獣シュタールプッぺが屹立していた。そして即戦闘開始。当たればひとたまりもない鋼鉄の拳による乱撃を避け続け、地道にコツコツと剣撃を繰り出す。それが既に15分にも及んでいた。
「危ないわねッ」
この鋼鉄の人形に普通に剣を振っても傷一つつかないと早くも気づいたルーラは、関節部などを狙うなどしているが効果もない。今のところ余裕を持って攻撃を躱せてはいたが、拳が砕いた洞窟の破片で足場が悪くなりつつある。さらに言えば体力も永遠には保たない。
正直言って打倒する手段がないと焦りを感じていた時、ふと背後にアルテミシアが現れた。
「なんだ、まだ倒せていないのか」
「アルテミシア様」
「まったく、この程度も倒せなくてはこの先が思いやられるな」
「っ!」
「剣の振り方がそもそもなっていないのだ」
そう言ってアルテミシアは虚空より一振りの剣を取り出した。細身の剣を手に一瞬でシュタールプッペに迫撃した。一閃だ。たった一閃で鋼鉄の腕を一刀両断した。
「凄い……」
「このくらい当たり前だ馬鹿者。手数を稼ぐのはいい。だが振るう剣が軽すぎる。そんなものが通じるのは、せいぜいノミくらいだ」
「はい! ご教授ありがとうございます!」
「はあ。頼むよ、害獣駆除くらいまともにしてくれ」
そう言い残してアルテミシアは姿を消した。言葉通り、何の裏もない言葉だったのだろう。しかしルーラはそんなこと関係ないと目の前で見せられた剣技に興奮し、侮蔑を勝手にアドバイスと解釈していた。
「行くわよノロマ人形ッ!!」
だからか、やはりいつもより口が悪い。
***
「えっと、どうすればいいのかなぁ……」
そう零したのはアルテミシアに転移させられたエルミダだ。転移先は森。迷いの森とは違い不思議と明るく気持ちの落ち着く森で、エルミダは一人で不安な気持ちも徐々に落ち着けていた。
だが以前一人というのは変わらない。アルテミシアには妖精と遊べと言われていたが、肝心の妖精を見つけられていなかった。
「ふっ、おチビではまだ捉えられんよ」
「ひゃ!?」
エルミダは突然目の前に現れたアルテミシアに腰を抜かした。そんな様子を見てアルテミシアも思わずため息を吐いた。
「なぜおチビにその眼が宿ったの不思議だな……」
「と、突然出てこないでください!」
エルミダは顔を朱に染めて怒りながら立ち上がった。お尻に着いた土を払い改めて訊く。
「あの、私にはまだ見えないってどういうことなのですか?」
「かしこまるな。おチビはまだ子供だろう」
おチビも子供扱いも不服ではあったが聞き入れもらえる気もせず、エルミダは文句も言わず従った。
「じゃあ見えないってなんでなの?」
「透視眼は見えないものを見る眼ではなく、見づらいものを捉える眼だということだ。
妖精自体は誰にでも見れるんだよ。ただそれを認識出来ていないだけでな」
「私が見えないのは?」
「ここにいる妖精はお前が見ていたものよりも強い妖精だ。つまりより自然、より当たり前の概念ということだ。それらを認識出来るだけの瞳力がないということだ」
「それじゃあ妖精と遊べないよ」
「ふっ、自然と戯れていろ。勝手に慣れてくる。私は寝てくる」
「え、行っちゃうの」
「当たり前だ。意識が私に向いてしまうだろう」
「えぇ……ってもういないの!?」
子供一人、何もない森に放りだす。それがアルテミシア流、透視眼修行法だった。
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