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24話 談話

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今回の会話率が高い


「妖精様について、どれくらいご存知ですな?」


 村長さんとの話はそんな問いから始まりました。


「お恥ずかしながら、特に詳しいことは。調べはしたのですが、妖精は一種の守護神とされていることくらいしかわかりませんでした。それ故に、この地方で妖精信仰が盛んなことくらいです」

「なるほど。私が若い頃とさして変わりがありませんな……」


 村長さんは一人納得の色を示しました。


「では、まず妖精様が何なのかについて説明いたしましょう。

 妖精様は一言で言えば自然の権化です。万物万象ありとあらゆるものに存在しています」


 例えば、と村長さんは炎に照らされ薄っすらと見える、集会所の端にあった花を指しました。


「あの小さな花にも、妖精様はいると言われています」

「あの花の妖精ということは」

「……察しがいいですな。そうです、あの花の妖精様です。つまりあの花の散り時が、あの花の妖精様の死であると言うことです。もっとも、弱い力の妖精様ですがな」

「……」


 つまり今までも、そして今も私の周りには妖精がいるということですか。


「ですが、力の強い妖精様もいます。長い時を残っていたりするものの妖精様、あるいは規模の大きなものの妖精様です」

「空とか、ですか」

「ええ、空の妖精様ももちろんいます。煌めく星の妖精様に、輝く月の妖精様。豊作の妖精もですな。

 私達がこうして暮らしていられるのも、妖精様のおかげなのです。作物を育てる為に必要な水も太陽も妖精様からのお恵みですから」

「その為のお祭り、感謝祭なんですね」

「そのとおり」


 妖精信仰は神道に近い考え方なのでしょうか。地理地形・気象の自然現象などのあらゆる事象に神々を認めているように、妖精信仰も万物万象に妖精の内在を認めているようですから。


 ですが、私は妖精というものを知覚したことがありません。もちろん簡単に姿を現さない存在だとは思うのですが。それでもどこにでもいるというのなら、誰かが見ていてもおかしくはないですし、オルボア地方以外にも妖精の話があるはずです。

 それに、本当に恵みを届けてくれる存在なら、これに縋らないわけがありません。もっとも、公の話となっていてもおかしくないのです。


 本当に、実在するのかが怪しくなってきました。おかしいですね、知れば知るほど存在が危ぶまれてくるなんて。ファンタジーの世界なのではないのですか?


「すいません、妖精がどこにでもいるのなら、見ることは出来ないのですか? 失礼を承知で言いますが、妖精を見たという人に会ったことがないんです」

「たしかにおっしゃるとおりですな。どこにでもいるなら、見たことがある人がいても不思議でない。

 では、次はそのことについてお話ししましょう」


 村長さんは酒を一口含みました。


「結論から申しますと、妖精様を見ることは通常ありえませぬ。妖精様は我ら人間より存在の格が上位であるが故です」

「そう、なのですか」


 妖精は見られない、ですか。


「ただ、例外もありました。ツキヨ殿は、私どもの化粧について気になられたのでは?」

「はい」

「これは祭の間に施しているもので、妖精様を見る為のおまじないなのです」

「妖精を!? では、それをすれば見られるのですか?」

「本当に見られるわけではありませぬ。妖精様を見ることが出来たと伝えられている、この村の祖がしていたという化粧なのです」


 村長さんは皺の寄った手で化粧を撫でました。どこか遠くを見ているようです。


「我らがご先祖様方は、妖精様を見る特別な目を持っておりました。その目を頼りに妖精様が好むこの土地に村を拓いたのです。妖精様の恩恵を受け取れますから」

「では、村長さん達は」

「はい。血も薄れてしまい、今ではその特別な目を持つものもおりませぬ。オルボア地方の妖精信仰が盛んなのも、この村から出たご先祖様がオルボア地方各地に村を築いたからだと聞き及んでおります」

「そんな理由があったのですね」


 妖精信仰の経緯についてはわかりましたが、これでは妖精が実在するのかどうか判断しかねます。ここまで来たのですから妖精を見たい気持ちは高いけどのですが、反面見られないとも思っていた私もいました。


 ほかに何か聞きたいことはあるかと言われましたので、私は一つ問いました。


「あの、この村には結界が張られているのですか? 私では知覚できなかったのですが、耳にしたものですから」

「張られておりますよ。妖精様の結界ですな」

「妖精の?」

「はい。妖精様が好むこの土地にはもともと、妖精様の力で天然の結界が張られていました。今は見えませぬが、先祖様の特別な目では見られたそうですな。とにかく、ご先祖がこの地を選んだ理由でもありますな」

「だから村を守るものがなにもなかったのですか?」

「はい。結界の効果で普通は人が入って来られません。ある程度の条件を満たしていれば別ですがな。

 常人では知覚することすら出来ない妖精様の結界は、決して敵をこの地に辿りつかせないのです」

「何故私達はここに来られたのでしょうか?」

「それはわかりませぬが。きっと、妖精様がお許しになられたのでしょう」


 最初に言われたことはつまり、そういうことだったのですね。

 しかし見えないはずの結界が反応したと言ったあの女の子は、嘘をついたのでしょうか。だとすると、何故あの子達がいの一番に私達の場所にやって来たのかわかりません。

 では、女の子には結界が見えているのでしょうか?


「今晩はこのくらいにいたしましょう。暫く滞在されるといい。そのうちに、妖精様のことについてもっと知れるでしょうからな」

「あ、はい。ありがとうございます」


 そうして私は未だあるいくつかの謎を抱えて、村人達との談話に花を咲かせ夜を明かしました。


お読みいただきありがとうございます

来週もよろしくお願いします。

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