閑話 旅立ちの後
ツキヨが旅立ったことが城に知れたのは次の日だった。ツキヨが食事に現れないことを不思議に思った勇者様方が、彼らの保護者であるミヤコ様に詰め寄ったところ、露見してしまったらしい。きっかけはツキヨのことを姉御と呼んでいたあの三人組だそうだ。
露見はしたが時既に遅し。ツキヨはすぐに王都を出ると言っていたから、今頃は隣街にはもう着いているだろう。
だけど城の多くの者にとってはよかったのかもしれない。ツキヨは引き篭もりの穀潰しと評価を受けていた。“名誉ある勇者と仲間たち”と関係を持ちたい侍女たちは、特にツキヨを嫌厭していた。
だからかツキヨの捜索も形だけのものだった。
城の者でツキヨのことを正しく評価していたのは、あの朝にツキヨを見送りに集まった私とエレナとカレインだけだ。……そういえば、アリシア様が何故かツキヨのことを探していたが、どういう関係なのだろうか。
ツキヨが影響を与えていった者は少ない。けど、影響を受けた者は何かしらの変化が訪れていた。
「美味しい」
「少しちょうだいカレイン」
「ここは休憩所じゃないんだけど」
書物庫ーー私の部屋にはエルバ姉弟が入り浸るようになった。城の端にあり滅多に人も寄り付かないこの部屋は身を隠すのに、つまりサボるのにはうってつけの部屋だ。
「いいじゃないアリサさん。何かの縁ですよ」
「私は静かにーー」
と口を開いたが、その声が二人の耳に届くことはなかった。私の声をかき消すように、訓練所から溌剌とした声が溢れてきたからだ。
その声の主は勇者様方だった。
「ツキヨ様が出てから、気の入り方が変わりましたよ彼らは」
「そう」
私の不機嫌な視線を辿ったのかカレインが言う。
たしかに、カレインから聞いた話だとツキヨは無茶な方法で喝を入れようとしたみたいだ。いくらなんでもそれはダメでしょうと、お姉さんとして叱りたくもなったが、問い詰めると何故か浮かべる嬉しそうな表情を見ると、叱るに叱れなくなった。
どうやら、ツキヨの無茶も無駄ではなかったみたいだ。
「カレインは勇者様方に教えなくていいの?」
「僕は所属が違いますから。こうして来ているんです」
「来なくていいのに。私の安寧を返して」
「無理だねアリサさん。ここ居心地がいいもの。ツキヨ様が入り浸るのもわかるわ」
「文官長、仕事に戻りなさいよ。ツキヨはいないんだからね?」
「……現実逃避くらいさせて」
こうして馴れ合うのも、まあ、以前に比べたら悪くはないと思う。何故か気の合ったのがツキヨで、気は合わないけど居心地がいいのがこの二人だ。
そう思うのもツキヨと出会う前なら考えられないことだ。
「何してるのかなツキヨ」
これにて一章完結です! 記念に評価とかレビューとか感想とかブクマとか、してくださると嬉しいです!
二章からは週一投稿になりますが、何曜日がいいのでしょうか? 時間はおそらく同じになりますが。ご要望があれば感想にてお願いします!




