第5話 ダイエットの為に、国を変える!
大臣達の反撃にあって数日、抵抗として食事制限だけは続けている。
大っぴらなダイエットはできず、悶々とした日々を過ごす。
唯一ダイエットに賛同してくれた大臣と共に、書類との睨めっこを今日もこなす。
「要は、観光で稼いでる分に見合う新たな財源。消耗品が溢れてしまう事でのバランス崩壊。これらをどうにかすりゃ良いってんだろ?」
解りきっている結論に、しかし簡単に答えはでない。
幾つかの案は出すが、一朝一夕というものでもなかった。
どれもこれも大臣にダメ出しされる。
「溢れる消耗品をよそに売りつければ……」
「貿易のバランスを崩しては摩擦を生みますぞ、更に大きな問題になりかねません」
「消耗品の生産量を減らして、その人手を他の産業に……」
「急に設備を整えるにしても、時間と金が掛かります。国民も仕事を強引に変えられては不満が」
「溢れる消耗品を、人ではなく家畜や肥料に……」
「我が国はそこまで畜産が盛んでもありません。消耗品も、食物以外にも多くあります」
どれも根本からダメという訳ではない。
しかし一つ一つでは弱く問題も孕んでいる。
大臣の指摘もアテツケではなく、真摯に国と肥満の事を考えての事だ。
「いっそ原材料から見直して生産物を……むぉ?」
何度目かの提案に、しかし変化が訪れる。
資料室のドアが開かれ、何人かの大臣達が入ってきた。
先日の会議でも反対派だったはずの大臣達だが、その表情は少し変化がある。
「先日の王の発表なされた事、そちらにも一理あり見過ごすべきではないと考えます。……難しい案件でしょうが、我々も協力させて下さい」
思いは伝わっていたようだ。
まあ先日のものは、あくまで自分が痩せる為の環境作りのためだが……。
それでも協力の申し出は心強いし、何とも嬉しい。
太ましい手同士で、もっちりと握手を交わす。
「協力に感謝する。今の所俺が出した案としては……」
新たな協力者達に説明をする。
反応はやはりそう変わるものではなかった、どれも一長一短であると。
しかしながら思い思いに悩み、資料と戦い、様々な案が練られていく。
「貿易の問題は、こちらも仕入れる量を増やしましょう。それを回して新たに事業を……」
「なら生産量を減らす必要もないでしょう。これを機に設備投資を増やして、同時に職業訓練も……」
「余っている土地を拓いて畜産業を伸ばしましょう。雇用創出にも繋がり……」
三人寄れば何とやらとは言うが、既に資料室には所狭しとずんぐりみっちり詰まっている。
しかし、先日詰め寄られた時の嫌な圧力はない。
あるのは真摯な熱気と、新たな試みへのワクワクだった。
「まあそうは言っても……やはり」
しかし熱さと湿度の上昇は変わらない。
書類がふやける前に、デブ達が先に根を上げた。
資料を広い会議室に持ち出し、更に大臣達と話を詰める。
「しかしながら王よ。国民の不安等はどうします? 制度や法の変化だけで何とかなりますかな?」
いつの間にか来ていた爺が、皆にコーヒーを出しつつ問い掛けてくる。
やはりその目は鋭く無視できない雰囲気がある、そしてデブい。
「それに関しては、直接言葉を伝えるしかないだろう。王として……いや、1人の健康な体を目指す者として、真剣に考えるよ」
「そうですな……頑張ってくだされよ」
爺からのコーヒーを啜る。
いつもはシロップやミルクたっぷりの甘ったるいコーヒーだが。
今日のコーヒーは真っ黒の、初めて出されるブラックだった。
「爺……これは?」
「おやおや、うっかりしておりましたかな。わしも年ですかのお」
ほろ苦い、しかしどこか甘みを感じるコーヒーだった。
わざとらしい爺の笑い声を聞きつつ味わう。
……どうせならアイスコーヒーが良かったというのは伏せたまま。




