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黒き聖獣の物語
むかしむかしある嵐の夜に、一匹の心の優しい黒き獣が、ある民家へと迷い込みました。
獣は実は魔物でしたが、人を襲うような狂暴な心は持ってはおらず、すぐにそこに住んでいた少年と仲良くなり、どんな時でも傍に寄り添って過ごしました。
それは少年が成長しても変わらずに、立派な騎士となった青年の傍でいつでも手助けして過ごすようになります。
長く、どんな苦難も共に乗り越え、力をあわせて解決していき、いつしかその魔物は黒き聖獣と呼ばれるようになりました。
しかしある時、悪い魔女と戦う騎士をかばって獣は深く傷を負ってしまいます。
治療も間に合わず、癒す事も出来ない中で、けれど獣は最後に青年を救うために、世界の果てまで響くような咆哮を上げ、悪い魔女の気を引いて深い眠りへとついていきました。
どんな時でも青年を手助けしてきた獣は、優しき心を持った黒き聖獣として、長く世に語られ続ける事になりました。