難病に切り札
いつの頃からだろう…。
夜、寝床の中で目をつぶり、暫くすると閉じてあるはずのまぶたの内側に光を感じてしまう…。
蛍のように淡く、明け方の消えゆく星のように脆く。瞬き、歪む。
症状が半月も続くとさすがに心配になり、街で評判の眼医者に行ってみた。
しかし症状を言っても相手にされず、眼圧測定と眼底検査でお茶を濁され…。他の科にかかれと言われて、ハイお終い。
「それはないだろう。」と粘ると、マイナートランキライザーを処方された。完全に変人扱い…。
原因がわからないならば、分かるところを紹介すればいいのに料金はシッカリ請求しやがって…。何てヤブなんだ。他人の意見など参考にするもんじゃない。バカバカしい、時間のムダだった。
今晩もまぶたの裏では謎の光源が、休みなく瞬き、妖しく揺らめく。仕事で神経が高ぶっている時や深酒をした時はほとんど気にならないんだが、たまに早めに寝床に入ろうものなら…。待ってましたとばかりの現れ、見慣れない文字や図形まで描き出す始末。結局は酒を入れなければ、眠ることも出来ない。なんてこったい、コレじゃ酒の量が増し増しになっちまって、ドコぞの血管が切れるか、肝臓がヤられちまうだろう…。
目を閉じるとチカチカするだけだから気にしなければいいんだけど、何かヤバイ病気があるんじゃないないの?脳みその中だとか、目んたまの中だとか…。
やっぱ、ヤブが言うとおり精神科いったホウがいいんダろか…。
あゝ、気持ちがワル。ノウみそをダレかにいじられてるみたいだ…。
「課長。この感応者には限界が来ております。もう彼に我々のメッセンジャーとして働かせることは不可能かと思われます。」
「精神活動の後退があるか…、仕方が無い。時間はあまり残されていないが、他の感応者を…。」
「ハイ。今度の対象者は大国の指導者です。」
「そうか、例の国のか…。やもを得まい、好戦的なオトコだが惑星規模の危機にはうまく立ち回るだろう。」
「では、メッセージの送信を始めます。」
「間に合ってくれよ。フィロウィルスは我々の重要な資源なんだ。ヤケになって核なんて使われたら、元も子もないんだからな。」
遥か地球から数千光年離れた銀河パトロールでの一コマ。
彼らは生物多様性の確保のため日夜弛まぬ努力で、作業を繰り返しているのであった。
彼らは目的達成の為に、洗脳、拉致、殺戮など荒事も朝飯前であった。まるで今回洗脳される大統領のように。
終わり