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エクスプロード

 買い出しから帰ってきたエリーとユリウスの美形コンビは、最初そこで何が起きたのか理解できなかった。慣れ親しんだアジトは至る所で煙が充満し、鉄と火薬の匂いが奥から煙に乗って漂ってきていた。


「なんですかこれ」

「銃でも暴発したのか?」


 入口に立った時点で件の煙と匂いに出くわした二人は、揃って顔をしかめた。ここには彼ら以外の「ワイズマン」が全員いた。彼らは無事なのか?

 ユリウスとエリーはまず仲間の安否を心配した。そして考えるよりも前に体が動いた。


「俺は奥。お前は手前の部屋を頼む」

「わかりました」


 こうなった原因を探すのは後回しだ。二人はさっそく生存者の捜索に向かった。ユリウスは奥にある大部屋、エリーはメンバーの寝泊まりする個室を担当した。

 しかし捜索自体はあっさり完了した。ユリウスが娯楽室兼作戦室と化していた大部屋に向かうと、そこに帰ってきた二人以外の全員が集まっていたのだ。


「ようユリウス。戻ってたのか」

「おかえりなさい。ご無事で何よりです」


 真っ先にジョージが反応し、ロンソが続けて声をかける。中央の大テーブルを囲むように座っていた残りの面々も、こぞってユリウスに視線を向ける。

 全員ススで真っ黒だった。目立って負傷した者こそいなかったが、それでも「酷い」見た目をしていた。


「大丈夫か? 凄い見た目してるぞ」

「まあ、色々あってな」


 呆れたように声をかけるユリウスに向かって、イヴァンが肩を落として答える。彼の横にいたヨシムネは苦笑を漏らし、イヴァンの言葉に合わせるように口を開いた。


「でもそんな複雑な話じゃないわ。とってもシンプルな理由でこうなったの」

「どんな理由だよ」

「急かすなよ。今話すから」


 説明を求めるユリウスにジョージが返す。それを聞いたユリウスが不服そうに顔をしかめると、その時唐突に彼の後ろのドアが開け放たれた。


「ユリウス、こっちには誰もいませんでしたよ」


 個室を全て確認し終えたエルフのエリーが、律儀にユリウスに報告しに来たのだ。そして彼女はユリウスにそう言った後、目の前にその目当ての人間が全員揃っている事を確認して、呆気に取られた表情を浮かべた。


「ここにいたんですね」

「そういうことだ」


 ユリウスが彼女に声をかける。エリーも納得したように頷き、ジョージはそんな彼らに向かって空席を指し示しながら言った。


「まあ色々話したいことがあるが、まずは座れ。立ったままで話すのも辛いからな」





 ユリウスとエリーが席に着いた後、ジョージが代表して彼らにここで起きた事を説明した。そうして彼が話し終えた後、今度はフリードが「何故そうなったのか」について説明をした。


「つまり、出世の機会を台無しにされた芸術家が、俺達を殺しにかかって来たって事なのか?」

「殺し屋を雇ってな。もちろんそれが正解じゃないかもしれんが、今のところはそれが一番確率が高い」


 事を要約するユリウスにジョージが答える。すると今度はエリーが彼らに向かって質問した。


「何か手がかりは無いんですか? 襲ってきた犯人の痕跡とか何かは?」

「あるにはある」


 またしてもジョージが答える。それから彼はテーブルの上に置かれていた紙片を取り、それを二人に向けて差し出した。


「これだ」

「これは?」

「魔法陣の一部だ。ロンソが言うには、魔力を込めたこいつを木箱の底に貼り付け、爆発させたらしい」


 ジョージがロンソに目をやる。彼の意図を察したロンソは一つ息を吐き、それからユリウス達に向かって声を放った。


「ここには接触起爆型の呪文が呪文が刻まれているんです。一定の刺激を受けた場合、あらかじめ内包されていた魔力を外部に解放し爆発するように作られているのです。犯人はここに自身の魔力を流し込み、木箱に貼り付けて私たちに送りつけたのでしょう」

「ただの箱が爆弾になったって事か」

「そういうことです」

「じゃあ、なんでその犯人は、その爆弾で皆を殺そうとしなかったんですか?」


 エリーが疑問をぶつける。彼女の言う通り、爆発の影響を受けた面々は全身ススまみれになってはいたが、目立った外傷は皆無だった。


「その気になればやれるんですよね。でもそれをしなかった。何故?」

「警告か、もしくはいつでも殺せるんだぞという余裕の表れか。その両方かもな」


 エリーの疑問にジョージが答える。何せ敵は、こちらのアジトの場所を把握していたのだ。にも関わらず、襲撃犯は致死性の低い爆弾を置くだけに留めた。「お前らはやろうと思えばいつでもやれるんだぞ」というメッセージの意味で置いたとしても不思議ではない。

 ジョージはそんな事を考えながら紙片を懐にしまい込み、周りを見ながら口を開いた。


「とにかく、こいつは俺の方で調べてみる。ちょうど知ってそうな奴に心当たりもあるしな」

「本当かよ」

「それじゃあ、こっちはその間何してればいいかしら?」


 イヴァンが驚き、ヨシムネが尋ねる。ジョージは再度周りを見回した後、腕を組みながら答えた。


「部屋の掃除を頼む」

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