令嬢と将軍
人外を利用するだけの貴族
人外を嫌う王子
国の中を一番見ていた令嬢は、愛しい悪魔の誘いに乗っただけのお話
「処刑は明日です」
「そうですか」
冷たい牢に入れられて何日経ったのか。窓一つない牢では時間の感覚さえも曖昧になってしまいました。
ですが、これでいいのです。反逆者と言われても、私は胸を張れます。
『あの人の為に、協力していただけますね?』
愛しい宰相様
貴方が私のことなどなんとも思っていないのは知っていました。貴方の目に映るのは、守護者様ただ一人
あの方を自由にするために策を練っていたのも知っていました。
だからこそ、私は王子に擦り寄ったのですから
それもこれも全て、国と宰相様のために
□□□
「…逃げようとは、思わないのですか?」
「思いませんわ」
ニッコリと微笑む令嬢は、未だ幼い顔に確かな決心を宿している。それに将軍が口を閉ざす中、彼女は言う。
「この国はあの方に頼りすぎているんです。それなのに感謝を忘れています。
国も民も、一度ちゃんとした目で見るべきなんです」
「そのために、王子に?」
「はい。あのままだったら、きっと外交問題にまでなったでしょう」
人外、半人外というだけで王子は己よりも下にみていた。
それは夜会でも同じだった。このまま即位すれば他国に対して余計な火種を撒いていただろう。かといって、他に王子は居ないから以前に王妹が嫁いだ公爵家から引き取ることになる。
そうなれば王子派と公爵派で内乱になる可能性もある。乱暴だが、これで様々な問題がなくなるといえばなくなる。
利用される吸血鬼はいなくなり、人外問題を起こす王子は反逆罪で処刑
あとはどう立ち回るかだが
「君はそれでいいのか?」
「いいんです。私はあの方の力になれれば」
「…宰相殿か」
美しい赤金の悪魔は、吸血鬼を引きとめられなかった責任をとるとして国を出た。恐らく、いや確実に友人を追いかけたのだろう。それに令嬢は将軍を見つめながら聞いた。
「将軍は、よろしかったのですか?」
「私はこの国を愛している。最後まで国と王と民の為に尽くすつもりだ」
「…貧乏くじですね」
「そうだな」
お互いに長くはない人生を思いながら、それでも彼らは微笑んでいた。
数日後、守護者契約破棄に関わったとして一人の少女と王子が処刑された。
少女は罪人として
王子は王族として葬られたが、一部の者達によって少女の墓には花が添えられていたそうだ。
令嬢は王子が国王になって吸血鬼さんが利用された挙句冷遇される。
その結果、他の人外が国に対して制裁をしてくる。という最悪のストーリーまで考えていました。
その結果、滅ぶ可能性があっても一度吸血鬼の庇護を国から引き離すことにしました。魔物は自然災害だけど、戦争や経済制裁による内乱は人災だからね。
悪役として令嬢は王子様を誘惑して反逆者になって断頭台に散っても、後によく事情をしる人外さんたちは「彼女こそ英雄だった」とか何十年も後に話すんでしょうね。彼らにとって人間の生き死には季節の移り変わりのようなものですから
そして、これにてクローディア王国編は終了ですかね。もし次にこの国のことをかくことがあれば、それは次の世代の話になると思います。
因みに次の話も既に出来上がっています。こちらは完全短編なのでご安心を
では!