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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
一話、一つ屋根の下で?
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テンションに身を任せた結果

 カラオケは三時間程続いて御開きになった。

 來は満足そうに一人で手を振りながら帰っていき、カラオケ店前にぽつねんと残される圭一たち。

 各々顔を見合わせ、圭一は右方向に指を指す。


「俺……こっちなんだ」


 全員が全員口下手そうだったので、重い空気に耐え切れず、さっさと回れ右して歩きだす。


「あ、私も……」


 慌てたように駆けだして圭一の隣にやってくる采香。

 その後ろから無言でやってくる魑魅。

 さらに申し訳なさそうに一番後ろを歩いてくる在人。


「って、全員こっちかよっ!?」


 思わず振り向いてツッコミ入れる圭一。

 溢喜のせいで身についてしまったツッコミ属性はもはや彼の条件反射と化していた。

 真後ろにいた魑魅が大きな目玉をさらに大きく見開いて驚いていたのを見て圭一は即座に後悔した。


「ご、ごめん今田君……」


 全員を代表するように、在人が本当にすまなそうに謝る。

 両手を組んで胸に当て、恐々上目遣いに見てくる在人。

 なよっとした身体つきに女顔が相まって圭一はなぜかドキリとさせられた。


「あ、いや。謝らなくていいし……」


 嫌な汗と高鳴る心臓に内心焦りつつ四人揃って歩きだす。

 共通の話題は全く無く、話し出す人も全くいないので嫌な雰囲気の漂う中、ある交差点に辿り着く。


『あ……』


 突然漏れた溢喜の言葉に驚き立ち止まる。

 目の前の十字路を黒い何かが通り過ぎていった。


『うっわ~。アレって交差点で四回見たら死ぬっていう都市伝説? 始めて見たよ』


 物珍しいモノを見てテンションが上がる溢喜。

 圭一と魑魅はただただ口を空けて呆けたように十字路の先を見ているだけだった。


「あのー。どうされたんですか今田さん? 切裂さん?」


「え? あ、あ~ちょっと立ち眩みが……」


 額に手をやり天を仰ぎ見て、圭一は疲れたように歩きだす。


「体が弱いんですか今田さん?」


「いや、そういうわけじゃ……まぁいいや。ところで今井さんは家どこなの?」


 何の気もなくただなんとなく話の種にと聞いた圭一だったが、采香は別の何かと受け取ったようで、顔を真っ赤にしていた。


「あ、あの私の家は……その……あっ」


 必死に言い訳でも考えるように周りを見回し口ごもり、気付いたのは二つ目の十字路に差しかかった時。


「わ、私こっちですからっ! さ、さようならっ」


 慌てるように走り去っていった。

 何が起こったのかすら解らない圭一たち。

 その頭上で溢喜だけが近くの電柱に拳を叩きつけながら笑っていた。


「相川……でよかったよな? 家ってこっちなのか?」


「あ、うん。ルルルハイツっていうマンションなんだ、僕」


 ルルルハイツ? その聞き覚えのある名前にはて? と首を捻る圭一。

 溢喜の方はポンと手を打ち『ああっ』と声を上げていた。

 ついでに魑魅も目をめいっぱい開いて驚いていた。


『圭くん圭くん。ルルルハイツって圭くんのマンションのことだよっ』


「え? あ……ああっ! ホントだ。俺の住んでるとこだよ」


 同じ住居だったことについついテンションが高くなる。

 気が付くと圭一は在人の腕をがしりと握って思いっきり振っていた。


「同士発見だ、同士。俺203号室なんだっ。相川は?」


「え? え? 103……だけど」


 部屋番号が真下だってことに気付いてさらにテンションアップな圭一。女の子のように細くて綺麗な色白の手を両手で握って思いっきり握手する。


「真下かよっ! 真下の人なのかよっ!? 超ーマジテンションアップなんだけどっ」


「え? あ、うん……そうだね」


 されるがままに腕を振られている在人は困惑した顔で近くに助けを求める。

 そしてたまたま近くにいてしまった魑魅に目が合った。


「202……です」


 注意していないと聞き取れないほどの小さな声が、ぼぉっとした目の少女から零れていた。

 圭一はその声をなんとか聞き取り手を止める。

 油の切れた機械のようにギギギと首を回して、


「202っていったら……」


『昨日引っ越し祝い持ってったとこだね』


 圭一のテンションは最高潮に達していた。

 だから普段はやらないだろうことを勢いでやってのけていた。

 在人の手を離し、魑魅の手を素早く掴み取る。


「魑魅。隣同士これからよろしくっ」


「あ……うん……」


 在人同様にされるがままに腕を千切り取られそうなほどに振りまくられていた魑魅。

 呆気に取られた表情で真っ直ぐに圭一を見ていた。

 数年間友達のいなかった圭一の暴走は、すぐに醒めることになる。


 テンションが上がっていた時には思いもしなかった恥という言葉がゴゴゴゴとか背景音付きでやってきた気がした。

 握手に振られる手の勢いは次第に小さくなっていき、やがて圭一の顔が完全に真っ青になった瞬間、完全に止まった。

 自分が行っていた現実に気付いて慌てて両手を離して飛びのく。


「わ、悪りぃっ! つい嬉しくて握手なんかしちまって。あの……驚いたよな? ゴメン切裂さんっ」


 気恥ずかしくて情けなくて、二人から逃げるように走りだす。

 誰かが名前を呼んだ気もしたが、彼らの前にいる自分が恥としか感じられなくて、部屋に向かって一目散に駆けた。

 突然の出来事についていけていなかった溢喜は二人に手を合わせてごめんなさいのジェスチャーをして、聞こえないとは思いながらも言い訳をしておく。


『ごめんね。圭くん案外シャイだから、女の子の手握る行為、相手の了解が無かったらイケナイことだって思ってるのっ』


 早口でそれだけ言って、圭一を追いかける。


『こぉら圭くんっ! 私を放っていくとはどういう了見だぁーーーーっ』


 空き地から飛んできて盆栽を割った野球ボールを片手に野球少年たちを追いかけるおじさんのような怒り方で浮遊していく溢喜。

 間抜け以外の何者でもなかった。

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