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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
三話、 身投げ神社の怪?
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私が死んでも、一緒に居てくれる?

 もはやなす術が無かった。

 結界に閉じ込め物質化させることに成功したクビククリ。

 そのおぞましさ、凶悪さはその場にいた全ての人間に恐怖と絶望を与えていた。


 結界を張っているお坊さんたちは結界の維持とクビククリ現界に力を裂かれ、中に入ってクビククリ浄化を狙う若生先生たちはいまいち力が不足していた。

 クビククリの怨念が僧侶たち全ての力よりも上なのだ。

 ここまで人を揃えてもクビククリを封じれない。

 皆、その絶望感にくじけそうになりながらも声高らかにお経を唱えて行く。


 クビククリは呪詛にも似た悲鳴を響かせながら若生先生たちの力を削いでいく。

 やがて、また一人の僧侶が倒れた。

 その瞬間、微妙なバランスだった均衡が崩れ、クビククリが身をよじらせる。

 僧侶たちの首にある縄が一層濃くなったのが圭一たちには見えた。


「このままじゃ……」


 クビククリを封印すら出来ない。

 七不思議の幽霊たちも僧侶たちが現れた時点ですでに校内に引っ込んでしまっているし溢喜はクビククリに……

 來も撃退に力を貸してくれているが、僧侶に無理矢理放出させてもらっているようなものなので無駄な力が多い。


 僧侶たちも念仏を唱え続け数時間。

 水も飲まず休みもせず話し続けている全員が喉を痛め始めていた。

 決め手を欠いたまま悪戯に生命力を浪費していく。


 もう、誰の目にも明らかだ。

 クビククリを封印する力が無い事くらい。

 誰もが諦めかけていた。でも。


「最後の手はある……」


 いままで無言だった魑魅が呟く。

 圭一がえ? と振り向くと魑魅は切なく微笑んで見せた。

 その顔を見た瞬間、圭一はなぜか魑魅が遠くに行ってしまうように感じた。


「私がもっと早く決断してればよかった。そうすれば溢喜さん……消えなくて済んだ」


 後悔した顔をして、でもすぐに真剣な瞳で圭一を見る。


「圭くん、私が死んでも……一緒に居てくれる?」


「何を……言って……」


 それはいつか誰かが言った言葉だった。

 圭一の心に突き立つ棘のように鋭い言葉。

 溢喜が死ぬ前に呟いたたった一言の告白。そして願い。


 意味が理解できず、でも放っておけばまた一人、自分の前から消えていってしまうと理解できた。

 考えるより先に魑魅を止めようと走り寄る。

 でも、それより早く、魑魅は静かに目を閉じる。

 魑魅が旅立つ。思考の海へ、夢の彼方へ……


 やがて、全てと隔絶された闇の中で、ヤツが再びやってくる。

 おぞましい容姿に吐き気を催す空気の中で、魑魅は一人、そいつと対峙する。

 黒い、暗い、漆黒の悪霊。背中を向けた状態で、そいつは魑魅に声を掛ける。


「また来たね」


 化け物が声を発した。

 地の底から響く聞き覚えの在る声。

 それは魑魅の声に似ていたし、全く別の物にも思えた。

 暗い闇に在ってなお昏いモノ。


「また、やるかい?」


 振り向いた闇。その瞳だけは黒でなく……

 魑魅はその瞳を見たくはないと一瞬目を瞑り、でも勇気を出して見開いた。

 もう逃げる気はないと、気力と意思で魑魅は化け物を見る。


「次は私と……」


 黒きモノがニタリと笑う。


「どこを換える?」


「クビククリ、倒せますか?」


 震えた声に黒きモノはクックと笑う。


「我に下郎が倒せるかと? 抜かしおる」


 黒きモノは両腕を差し出す。

 闇でしかなかったがそれが両腕だと魑魅には理解できた。


「右腕を換えるか? 左腕か? 好きな方を選べ」


「左……」


「では、換えよう」


 黒きモノが好色を浮かべる。

 嬉々と喜び魑魅の左腕を噛み砕く。

 痛みはない。ただ自分の大切な何かを失くした喪失感だけが攻め寄せる。


「ではまた……」


 化け物は満足できたと立ち去った。

 後にはただ闇だけが存在する。それは夢かうつつか。

 一つだけ確かなことは、魑魅の腕は喰われ、新たな左腕がそこにあるという事実。


 魑魅も目を閉じ現実に向き直る。

 意識の拡散、すぐに収束。

 幾度となく見た悪夢から、どうにもならない現実へ。


 目を開く。

 気が付けば、いつの間にか圭一に抱きかかえられていた。

 目を閉じた後倒れていたらしい。

 心配そうに見つめてくる圭一に微笑を返し、自分の物ではなくなった左腕を見る。


 容姿こそ変わらないがすぐに分かった。コレは自分の腕ではない。

 自分の腕を偽ったおぞましいモノだ。こんなモノが自分の腕に擬態していると思うと、吐き気を催しそうになる。でも、もう換えることは不可能だ。

 これからはこの腕こそが自分の腕になるのだ。

 でも、だからこそ今はソレを必要とする。


 周囲では僧侶たちが結界を張りクビククリを押さえている。

 すでに何人か呪いで力尽き、気絶している者もいるが、それでも全ての僧侶たちがクビククリの消滅を諦めていなかった。


「若生さん、私を入れて」


 結界内で実体化したクビククリ相手にお経を唱える住職に小さく言葉を紡ぎ、圭一の元を離れた魑魅が走り出す。

 呆けたようにはぁ? と驚く住職は、しかし、思わず結界に穴を開ける。

 黒い瘴気がクビククリともども結界の外へ漏れ出し……


『ギェェェェェッ』


 魑魅が左手を瘴気に突っ込んで霧散させた。クビククリから悲鳴が漏れる。


「結界、閉めて!」


「う、うむっ!?」


 結界の中に魑魅が入り込む。タイミングを合わせ住職が結界を張り直した。

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