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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
三話、 身投げ神社の怪?
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幽霊による除霊作戦・後編

 それは……まるで黒雲のような存在だった。

 いくつもの人の顔がくっつき、ところどころに周囲の者を引き込もうと現れる無数の腕。

 生まれては雲の中へ消え、また別の場所から突き出ては消える。


 人の顔も同じだ。黒き涙を流し絶叫を迸らせながら、怨念渦巻く瞳で睨みつけ、雲の中へと消えて行く。

 この世の悪夢が実態を伴って現れた。そんな姿を持っていた。

 不気味な咆哮とも絶叫とも付かない叫びを上げては消えていく無数の顔達に、圭一は吐き気すら覚えた。


『これはまた……なんとも不憫な容姿よな』


 きっと何百年と幽体を取り込み、元々の姿形とは似ても似つかぬ異形に変化した悪霊だった。

 怨念の集合体。

 生者を恨み、呪い、近づく全てを取り込む最悪の幽体だ。


『このまま再封印するぞ、場所は……ここだ。生徒たちには絶対に近づかない様ここに新しい不思議を作らねばな。妾の不思議の部分を変えるか。八不思議にしてしまうよりは現実味もあろう』


「そんな狸の皮算用してる場合か!」


『わかっている。皆用意はいいな! そろそろ封印と行こうか!』


 弥生の号令の元、再び祝詞が謳われる。

 ここからが本番だ。姿を現した悪霊を退治する。これこそが、一番厄介な戦いである。

 七不思議の面々も、己の持ちうる能力を最大限に利用して封印に力を入れる。


 魔法陣の防壁を破らせないよう霊力を送りつつ、七体の幽霊による除霊法、下手を打てば己自身を成仏させかねない諸刃の剣であるその呪法をクビククリへと向けるのだった。

 自身の存在を保ちながら結界を張り、さらに成仏を行う。


 彼女たちも死に物狂いでこのバケモノを倒そうとしている。

 圭一たちはすでにやることを終え、ことの成行きを見守るしかできないでいた。

 圭一にとっては拷問にも等しい時間だ。


 一緒に何かできるのならまだよかったが、他人が頑張る姿を横で見ているだけというのは彼には苦痛以外の何物でもなかった。

 しかも、自分たちの尻拭いをしてもらっているのだ。

 惨めな気持ちがこみ上げてくるのが自分で分かった。

 同時に、この場にいない來への不満が募って行く。


『……まずいな』


 不意に、弥生から言葉が漏れた。

 圭一はその言葉の意味に気付きはっとする。


「無理なのか!?」


『このままいけば大丈夫だ。結界の方が薄すぎるがな』


 結界が薄い……?

 疑問を口にしようとした時、それは起こった。

 突然魔法陣からビキリと音が響いた。

黒い靄が一瞬、外に漏れかける。


『千鶴、弛んでいるぞっ』


 が、弥生の怒声が響き渡った瞬間、結界の綻びがなくなり、再びクビククリが結界内に縛られた。

 おそらく、今は拮抗できているのだろう。

 問題は、結界を張っている七不思議幽霊たちの精神力。


 一定まで下がった瞬間、結界を破られクビククリが外に出る。

 そして、その限界点は……近い。

 問題点は一つ、人手が足らない。


 せめて結界を張る者と封印する者が別々ならば上手くいっていただろうが、人数上の関係で、兼用したがためにクビククリを封印する余力がなくなり始めていたのだ。

 結界に集中すれば破れることはないが、封印ができなくなってしまい、結局、しばらくすれば破壊される。

 かといって封印を優先すれば一所に留まることなく封印自体ができなくなる。

 まさにジレンマに陥った状況だ。このままだとクビククリが放たれかねない。


「何か、俺らで手伝えることはないのかっ」


『ないっ! 幽霊でも霊能者でもないお主等に封印などできるかっ。大人しくしておれ』


 思うようにいかない封印に、苛つき始めているようで、口調が荒くなってきている。余程余裕がない様だ。

 そんな彼女を手助けできない事に圭一はもどかしさを募らせる。


『ちょっと待ってよ。じゃあ、私なら手伝えるんじゃないの?』


 言って、結界から飛び出したのは溢喜。

 言うが早いか弥生の元へと飛んでいく。

 圭一が止める暇すらなかった。


『何ができそう?』


『いい、下手に来られても戦力がダウンするだけだ』


 しかし、弥生から帰って来た言葉は辛辣だった。


『なんでよ! 私だって幽霊よ!』


『余力がないのだお前は。下手に手伝えば消滅するぞ。愛しい者と永遠の別れがしたいのか! 大人しく戻れ!』


 弥生の言葉に溢喜はムッとしながらも大人しく戻っていく。

 やはり圭一と離れることになりかねないという言葉は彼女に効いたようだ。

 だが、その瞬間、運悪く結界が音を立ててひび割れた。


 弥生の舌打ちと怒声が響く。

 七不思議の面々が封印に力を入れるが、空いた結界の隙間から、溢喜に向かい黒雲が襲いかかる。

 慌てた溢喜は思わずそちらを見て、目前に迫る黒い悪夢に身体を硬直させてしまった。


 圭一が手を伸ばすが届くはずもない。

 魑魅は渾身の力で圭一を引き留め、それでも圭一の力に抗しきれず引きづられてしまっている。

 結界から二人して出てしまい、でもやっぱり届かない。


「溢喜ッ!」


 手を伸ばす。

 自分が好きだと言ってくれた。最愛の人だと、死んでも愛してくれた、世界の中でたった一人圭一を愛して寄り添うと誓ってくれた少女。それが、今、無慈悲な悪夢に捕まった。

 圭一の目の前で、溢喜が……クビククリの中へと消えていった。

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