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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
三話、 身投げ神社の怪?
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幽霊による除霊作戦・前編

 用意が出来た。と弥生が教室にやってきた。


『あとはクビククリを捜索するだけ。クビククリを発見したら七不思議である我々が捕縛する。現世に可視化して除霊開始だ』


 面倒な手順ではあるが、コレが一番の最短除霊ルート。

 霊が霊を除霊するという不思議な現象ではあるが、彼らに任せるのが一番に思えた。

 圭一は頷き、魑魅と二人で校庭へと向かった。

 すでに日は沈み夜の帳が世界を包み、満月の光が怪しく降り注ぐ中、校庭に刻まれた白線が奇妙な光沢を放っていた。


「ここに来るのか……」


 圭一たちの周囲には寺で清めた塩を四隅に盛った結界が作られていた。こんなものが本当に効くのかと不思議に思う圭一だったが、七不思議の面々に頼るしか今は道がない。

 出るなというのなら出ないに越したことはない。

 圭一は隣の魑魅を見る。彼女も不安そうな顔をしていた。


「捜索はどうすんの?」


『なんかね、皆で誘導するからここで見とけって。下手に動くと瘴気に当てられて面倒だから』


 溢喜が圭一に纏わりつきながら答える。

 圭一は鬱陶しそうに手で払う仕草をすると、溢喜はぷぅと頬を膨らます。


『あ~圭くん酷いんだぁ。見た魑魅っち! 圭くん私のこと邪魔だってジェスチャーしたんだよ!』


「……」


 話を振られて魑魅は困った顔になる。

 フォローしてくれそうな相手を探すが、圭一以外には見あたらなった。


「その……挫けず頑張って」


 月並みな台詞を小さな声で答えると、溢喜はさも嬉しそうに喜んだ。


『お~しっ、魑魅っちの応援も貰ったし、更なる愛でアタックしてやる~っ』


 とぉっと圭一に突撃した溢喜は、勢い余って圭一を突き抜け、地面に刺さった。

 首だけ土に埋まった溢喜は、しばらくじたばたとした後両手で地面を押さえ思いっきり首を引っこ抜く。


『ってこらこら圭くんよ。ふつうは抱きしめたりしてくれてもいいんじゃない』


「結局地面に埋まるのは一緒だろ。それより気をつけろよ溢喜。クビククリがここに来るってことは取り込まれる確率が一番高いのはお前なんだぞ」


『大丈夫だってば、ヤバいと思ったら魑魅っちに取り憑いちゃうから。ほらこの通り』


 いまいち緊張感のない溢喜に圭一はため息を吐く。

 溢喜が背中に半分入られている魑魅もさらに困った顔をしていた。

 しばらく何もすることがなく校舎を眺めていた圭一は、突然起こった悲鳴に身体をビクリとさせた。


 空を切り裂く誰かの叫びに、弥生らしき横柄な怒鳴り声。

 騒がしくなった校内から阿鼻叫喚の大音響を切り裂き、人体模型が泣きながら走ってきた。

 エクトプラズム大量放出で鼻水のようにぶら下がっているが、本人はそれどころではなさそうだ。


「琉実! どうだ」


「来たべ、来たんだべさっ」


 クビククリが来たってことか? でも姿が……

 周囲には何の変化も無い。

 幽体が見える圭一たちにもクビククリは見えなかった。


「き、来たってどこにだよ!?」


「み、見えないだか!? 真後ろに……うひゃぁっ、取り込まれっべ!」


 泡を食って逃げ出す琉実。

 圭一たちのいる安全な場所を通り越し、魔法陣へと向かう。


「お、おい。ここ本当に大丈夫だろうな!?」


『大丈夫だって圭くん。このままここにいればいいんだよ』


 そうだよな。と安心した直後、魔方陣の中央が膨れ上がり、黒い靄が吹き出した。


「地面からか!?」


 魔方陣の中央へとより固まっていく幽体に思わず腰を抜かしたように倒れる琉実。それを見た途端、圭一は琉実に向かい走り出していた。


「圭くんっ!?」


 珍しく魑魅が大声上げて制止を掛けるが、圭一は結界を飛び出し琉実を抱え上げる。

 湧き出る靄が琉実と圭一に襲い掛かる。

 圭一は一度も速度を緩めず魔方陣を駆け抜ける。


『圭くんっ!』


「大丈夫っ、すぐ戻るからお前らはでてくんなっ」


『阿呆っ! 貴様も出るなといっただろうが!』


 思わぬ場所から叱責が飛んだ。校舎の壁を突き抜け弥生が飛んでくる。


「仕方ないだろっ! お前らを取り込ませるわけにいかないんだっ」


『ええい、まぁよいっ。とにかくクビククリは丁度結界の中じゃな。琉実、さっさと配置に付け!』


 教室から出られない初音を使うため、充分な距離がいるらしい。琉実は圭一から離れると、そそくさと走り去っていく。


『圭くん、早く戻って!』


「分かってるっ!」


 圭一が結界に戻ると、弥生が声を張り上げる。


『一つ人乗せ逝く船は』


 近くにいた琉実も同じに声をだしていて、七つの異なる声が様々な場所から聞こえてくる。


『二つ浮動の海を逝く』


 七つの声が折り重なるように重なると、それは言葉というより歌のように聞こえた。


『三つ皆々従えて』


 不意に、魔法陣から出ようとした黒い塊が、悲鳴のようなものを上げてのた打ち回る。

 まるで眼には見えない壁に阻まれているように、魔法陣から漏れることはないようだ。


『四つ世之瀬を恨み病む』


 ラップ音が鳴る。一度や二度じゃない。

 無数に激しく鳴り響くその音は、黒い塊の動きに連動しているようだった。


『五つ何時頃揃うやと』


 空気を切り裂くような悲鳴が上がる。七つの声を打ち消さんとばかりに張り上げる。


『六つ無理して引き入れて』


 ふと、魔法陣が淡い光を灯し始めた。

 古本屋で買った悪霊退散用の本に書かれていた方法だったのだが、どうやら本当に効いているらしい。

 正式名称は七人岬可視化結界だそうだ。素人目には全く意味が分からなかったが、弥生の御蔭で実用段階に持ちこめた。

 本来は生者七人で行うモノだそうだ。


『七つ長きの呪は尽きて』


 魔法陣を吹き飛ばさんと、クビククリがうねり狂う。


『七人岬は……揃いやむ』


 刹那、魔法陣が光に包まれた。

 暫く内包物であるクビククリを覆い隠し、やがて……光の収まりと同時に、ついにクビククリがその姿を現した。

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