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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
一話、一つ屋根の下で?
3/39

入学

『ふぇ~……コレが学校?』


 溢喜が驚きの声を上げるのも仕方が無かった。

 越してきてから次の日のことだ。

 これほど……これ程立派じゃない校舎は初めて見た。


 登校する学生たちに紛れるように学校にやってきた圭一は、近代学校をものともしないような木造建築で横一直線、一階のみの校舎を見て唖然とするしかなかった。

 戦前あたりの学び舎だと言われても大差ないそこは、本当に何の変哲もなく木造横一線の長い校舎だった。

 いくら田舎とはいえこの校舎は余りにも酷ではなかろうか?

 

 電池の直列繋ぎよろしく繋がった校舎の先には体育館。

 さらにプールまでがくっついていて、校舎の前方は結構広い運動場。

 逆に裏は山。卒業写真の背景にデンと構えている外国人力士のように異様な存在感を誇張していた。


 校門とすら呼べない囲いの無い入り口でしばらく阿呆みたいに口を開けていると、溢喜が肩を叩いてきた。

 何かと思い圭一が溢喜を振り向くと、溢喜は目線だけを移動させていく。

 不審に思いつつそちらに眼を向ける。


 人が居た。

 ただの人じゃない。

 圭一をじっと物珍しそうに見続ける女の子だった。


 女の子だと思ったのはこの学園特有らしい橙色が主体のセーラー服を着ていたからだ。

 容姿はボーイッシュで頭の頂点に何故か立っている毛が一筋。

 何も考えていなさそうなキョトンとした瞳でありながら何かを探られているような不思議などんぐり眼を大きく見開き、手提げカバンを両手で抱えていた。


『ねぇねぇ、あの娘なんだろね? 私見られちゃってるぅ? いや~ん、死んでからも好意の目で見られちゃうなんてぇ。私ったら罪なお・ん・な♪』


 それはねぇ。と心の中でツッコミ入れて、少女に向き直る。


「あのさ……」


「っ!?」


 声をかけた瞬間、弾かれたようにビクリと肩を震わす彼女。

 慌てるように校舎に向かって走り去っていった。


『あ~ららぁ、フラれちゃった~ぃ』


「いちいち五月蠅いよ」


 初日から嫌な出だしである。

 今夜は枕を涙で濡らしそうだと、悲嘆にくれる圭一だった。


 この学園は都会と比べると生徒数が極端に少ない。

 一学年二クラスで一クラス43人ぐらい。ぐらいというのは生徒数の違いで学年ごとに生徒数が違うからで、三年生はAクラス44人。Bクラス43人。二年生は43人づつ。

 んで、今年の新学年である一年生はAクラス42人。Bクラス41人と例年に比べるとちょっと少なかったりする。


 先生の数も少なくて、正規の教員が8人。臨時教師3人と教頭、校長しかいなかった。

 その教員数でどうローテーションを組むのかと思ったが、どうやら担任の先生が全ての教科を担当するらしい。

 特別教科だけ臨時教師や他の先生が担当。ということだ。


 校長挨拶で説明を受けた時、思わず小学校かと怒鳴りつけたくなったが、溢喜が代わりに叫んでいたので口を開く気もなくなっていた圭一だった。

 式の最後にクラス割り表を手渡され、圭一は溢喜とともにBクラスに向かっていた。


『お~、ここが私の教室かぁ』


「お前のじゃないだろ……」


 コレが最後のちょっかいだと心に決めて、教室前で溢喜を見た。


『ん? どしたの?』


「頼むからちょっかい出すなよ」


『いっつものことなんだけど別に私が何かしてるわけじゃないよね。圭くんが勝手にツッコミしてるだけでしょ』


「お前が変なトコでボケキャラなのが悪い」


『何よそれぇ――――っ』


「とにかく、学校の間だけでいいから大人しくしててくれ。じゃないと恥ずかしさで首を吊りかねん」


『あはっ、じゃあ正真正銘一緒になれるねっ。二人で天国行こうね圭くん』


 悪意は無いのだろう。

 無邪気に笑う溢喜に軽い殺意を抱きつつ、圭一はドアに手を掛けた。


「噂じゃ自殺は地獄行きらしいぞ溢喜」


『ええっ!? じゃあ一緒になれないじゃないっ』


「そう思うなら俺を追い詰めるのは止めてくれ、中学と同じあだ名になったらまず間違いなく焼身自殺しかねないから」


 言って勝手に想像してみる圭一。

 自分が火塗れになる姿を想像すると自然と背中に怖気が走った。


『あっ、待って圭……』


「さて、俺の席は入り口側四番目。丁度柱のトコか」


 と言いつつ扉を開くと、頭上から落ちてくる黒板消し。

 溢喜の静止も空しく圭一の頭にポフッと落下する。

 とたんに巻き起こる笑いの渦。余りにもお約束過ぎるトラップに怒る気も失せる。


『うっわ~、圭くん頭真っ白だよ? ちょっと染めたみたいでカッコイイかも』


 ホントに言ってるなら殴るぞ。当らないけど。と、溢喜に目で訴えて自分の席へと座った。

 男子生徒たちがドアの周りにやってきて、さらにドアにトラップを仕掛けていた。

 あんなんで人生楽しめるお前らが羨ましいよ。


 圭一は黒板消しをセットして楽しそうに含み笑いをしている男どもに溜息を吐きつつ、教室を見回した。

 クラスの総人数は41人。

 男子10人に女子が31人。男女の順番はバラバラで、圭一の前後左は全て女子だった。


 男女の順に交互に配置されているのかとも思ったが、男子の後に男子のところや女子女子と来ている場所もあるので、おそらく男女混合のあいうえお順なのだろう。

 というよりはそうでなければ女子の方が圧倒的に多いせいで交互にすらなりえないからだろう。


 元女子高の名は伊達ではないようだった。

 キョロキョロとしていると、隣の女生徒と目が合った。

 どんぐり眼のその少女は驚いた顔で圭一を見つめていた。


「あ、君は朝の……」


 見覚えのある妖怪アンテナのような毛で思い出す今朝方出会った女の子。

 なんとなく運命的だなぁと思いつつ会釈する。


「っ!?」


 またも弾かれたようにビクリとなって、少女は慌てて目を逸らす。


『う~ん。完全に嫌われてるね圭くん』


 うるさい。ほっといてくれ。

 無視と蔑みには慣れてるよと心の中で呟き、そんな自分に鬱になる圭一だった。

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