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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
三話、 身投げ神社の怪?
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憑依

 やってきた寺にいた人物に声をかけ、また絶句。

 辻の幽霊よりも衝撃的な出会いだった。


「おや、今田くんに切裂さん。こんなところでお会いするとは、これはまあまあ、偶然とは世にも不思議なものですね」


 ニタリと不気味に顔を歪ませたトカゲ先生は、圭一たちを(気味の悪い)笑顔で出迎えてくれた。

 先生は本堂に二人を案内すると、住職に紹介する。

 こちらは不気味な先生と比べると悪鬼と仏。柔和な笑顔の坊主さんだった。


 聞いた話によるところ、二人は親子の関係らしい。

 その過程、若生先生が26歳という事実を知らされた二人。

 どうでもいい予備知識が一つ増えた瞬間だった。


 簡単なお払いを受け互いの首を確認。

 まだ取れていないので住職に抗議。

 5時間にも及ぶ激闘の末、ようやく魑魅の首から縄が消えた。

 魑魅からも自分の首から縄が消えたことを聞かされて喜び合う。


「ありがとうございました」


「いやいや、こんなに真剣にお払いをしたのは久しぶりですよ。どうにも見える方相手には手を抜けませんな」


 はっはと笑いながら片手を差し出す住職。


「料金は二人で30万にマケておいてあげよう」


 がめつい住職だった。

 そこへ若生先生とその頭に避難していた溢喜がやってくる。


『終わった?』


 聞きながら首を確認。縄が無くなっているのを見て圭一に飛びつき喜んでいた。


「父さん、一応僕の生徒ですからお金を取るのは……」


 ボソボソとした言葉に住職は禿げ上がった頭を叩いて、


「そりゃ弱ったな」


 困った顔でまた笑い出す。


「まぁ、サービスだ、何かあればまた来なさい」


 笑顔で笑う住職に溢喜が近寄りあっかんべぇ。

 住職は全く気付いてないようで笑いをあげながら奥に引っ込んでいった。

 霊感はないようだ。ただの一般人だろう。それで坊主とか大丈夫なのだろうか?

 だが圭一たちについた呪いが解けたのは事実なのでそれなりの実力はあるようだ。


「しかし、君たちが御払いを受けに来るとはいったい何事かな」


 若生先生が左手を顎にやって考えるように圭一を見る。

 言いにくいことを聞かれて思わずえっと呻く圭一たちを覗き込むようにして、言葉を続けた。


「そういえば宇津木さんが身投げ稲荷がどうのと言っていたね」


 ドキリとした。


「君たちだけじゃないんじゃないのかな? どうなんだい?」


「あ、いや、その……」


 やってはいけないことをしてしまったのを見透かされたようで、なんだか恥ずかしくなった。

 俺ら帰ります。そう答えて魑魅を連れて早足で逃げ帰った。

 若生先生は顔が恐すぎる。




 夜。來、他二名を無理矢理除霊させるためにはどうすればよいのか。

 家に帰って散々溢喜を交えた三人で頭を捻ったがいい案は浮かんでこない。

 ならばこういうのはどうだろう? という溢喜の提案で、圭一と魑魅は再び夜の学校にやってきていた。


 ようするに、三人で出ない答えは10人で解いてみよう。そういうことだ。

 教室に集まっていた七不思議の面子の元へとやってきた圭一たちは、彼女たちに本日の出来事を話した。


『虚け者ッ』


 即座に返ってきたのは弥生の怒声。

 椅子から飛び降り圭一の前にやってきて実体化した足で思いっきり足を踏みつけた。


「いってぇっ! 何すんだよっ」


『それはこちらの台詞だ戯け。祟り神の呪いなんぞ受けおって。恥を知れ恥を!』


「い、いやでも……」


『まぁ、再封印した努力は認めてやろう。呪いの解呪がしたいのだろう。その坊主の寺に連れて行けばよいだけなら妾に考えがある』


「マジかっ! そりゃ助かるっ」


 思わず弥生の手を握りありがとうを連発。

 ちょっと照れたような顔で、弥生は取り繕うように言った。


『し、しかしアレだな。よくもまぁ再封印用の札を持っていたな』


「はい?」


『タタリ神を封印したのだろう? 札で』


「え? いや、扉を閉じただけ……だけど?」


 幽霊全員が凍りついた。


『う、嘘でしょお兄ちゃん、封印……お札使ってないの?』


 いち早く我に返ったのは花子。恐る恐るといった表情で聞いてきた。

 圭一はコクリと頷く。


『う……虚け者ぉッ!!』


 弥生が爆発した。


『阿呆か主はっ! 一旦開封されたモノを退魔師でもない主が簡単に封印なんぞできるかっ! 札を使う以外に封印なんぞ出来るはずもなかろうがっ』


『ま、まぁまぁ弥生ちゃん、圭一さんもほら、解けちゃった封印必死に戻そうとしたわけだし……』


 琉実がフォローを入れるが弥生の怒りは収まらない。


『それですむ問題ではないっ! クビククリがっ! はっ、こうしてはおれん。おい女。主の体を借りるぞ』


 言うが速いか魑魅の背後に回り、後頭部に足を突っ込む。

 魑魅が突然のことにビクンと体を仰け反らせ、弥生が魑魅に進入したと同時に、意識を失ったようにがくりと項垂れた。


「魑……魅?」


 思わず駆け寄る圭一が肩に手をかけようとした瞬間、がばりと魑魅が顔を上げた。


「紙はあるか」


 いきなり聞こえた魑魅ならざる声に圭一は驚いた。

 魑魅の声帯でありながら違う女のような声。それは弥生の声に良く似ていた。


『ノートよりは白紙の紙。ですよね』


 そういって自分の机から白紙の用紙を取りだしたのは初音。


「それからカッターナイフ。ペーパーナイフ、彫刻刀でも良い。とにかく切れるものだ」


『私の鎌でよろしければ』


 魑魅に答えを返したのは千鶴。しかし魑魅はその言葉を跳ね除ける。


『虚けめ。外に出るのにお前の鎌では……まぁいい、ここで作る今すぐ貸せっ』


 千鶴が取り出した鎌を強引にぶん取ると、魑魅はあろうことか自分の薬指に小さな傷つける。


「お、おい魑魅?」


 魑魅の奇行に訳が分からず止めようとすると、三葉が圭一の裾を掴んだ。

 振り返った圭一にゆっくりと顔を横に振って否定する。

 ただ黙って見ていろと、声に出さずに語っていた。


「左の薬指は最も心臓に直結した場所。婚約指輪を填める誓いの指だ。また処女の血は符術や生贄にもっとも適しておってな、妾の生きておった頃は……と、できたぞ」


 紙に意味不明な血文字を描き、魑魅は満足そうに頷いた。


「な、なぁ。なんとなくで間違ってたら悪いんだが、もしかして弥生?」


「なんだ? 今頃気付いたのか?」


 両手を腰に当てふんっと息を付き、魑魅の体に憑依した弥生は出来の悪い子供を見るような目で圭一を見下した。


「よいか圭一。これから妾はクビククリの再封印をしてくる。場所はうろ覚えなので案内いたせ」


「案内いたせって……まぁいいけどさ、クビククリってなんだ? どこにいるか知らないぞ俺」


「阿呆。主が封印を解いた祟り神のことだ」


 未だに自分で傷つけた指が痛いのか、しきりに口に含んで血を吸いながら、弥生は反対の手で札と化した用紙を手に取り、ふと思い出したように七不思議の仲間たちを振り返った。


「花子よ。糊はないか? 米でもよいが貼り付けるなら長く保てるものを所望なのだが」


『うーん? 長く貼りたいなら木工ボンドとかの接着剤がよくないかな』


『あ、なら瞬間接着剤がコンビニで売ってるよ。速く乾いてしっかりくっつく奴』


 花子が出した答えに溢喜が嬉しそうに割り込んだ。


「よし、では行きがけにこんびにとやらに……」


「ここから一キロはあるぞコンビニ」


 圭一の言葉に驚きすぎて声の出ない弥生。さすがにそんなに歩く気力はないのか、無難に木工ボンドを準備室から拝借する。


「準備室? なんの?」


「昔は理科室用の準備室だったのだ。今は使われなくなって物置となっておる。使えるものがあるから準備するという点ではその掛け札は間違いではないぞ」


 ボンドをガラクタの山から掘り起こし、弥生と共に身投げ稲荷へと向かう。

 百段以上にも及ぶ階段を息を切らせて駆け上がり、二人同時に鳥居に到着。

 上半身を前に倒し、膝に手を付き肩で息する弥生は、妙にすがすがしい顔でふ~と鳥居に背もたれた。


「懐かしいなこの倦怠感。生身であるが故の疲れという感覚」


 そうして御堂を横目で眺め、目を見開いた。

 開いていた。

 それはもう全開というべきほどにぱっかりと、観音開きの扉が見事に開かれ、中にあったナニカはすでにそこに存在していなかった。


 思わず疲れを忘れて駆け寄った。

 目の前まで来た空の御堂に愕然とする。

 圭一も弥生も、しばらく一言も口にできなかった。


「遅かった……か」


 弥生の呟きが、圭一には絶望にすら聞こえた。

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