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死んでも愛してくれますか?  作者: 龍華ぷろじぇくと
二話、 学園七不思議さん?
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着替えに手間取ったのさ

 一時間延々と走らされた体育も終わり、体育倉庫に着いた圭一は、残り九人の着替えが終わって帰っていくのを待ちつつ、ゆっくりと着替えを済ます。

 わざわざ一緒に残ろうとしてくれた在人に先に食事に行くように伝え、誰も居なくなった体育倉庫で圭一は溢喜を呼んだ。


『……何か用?』


 ようやく話せたというのに険悪ムード丸出しで、今にも噛み付きそうな溢喜に知らず閉口する。

 それでもまぁ……こちらが折れないと機嫌直らないし、こんな事で嫌気さして溢喜を嫌いになんてなりたくないしな。


「なぁ……俺さ、なんか気に障ることしたか?」


『さぁ? 自分の胸に聞いてみたらぁ~』


 嫌味たっぷりに言ってくれる溢喜。

 でもな溢喜。その言葉を言ったところで自分が何をしたのか解らないから聞いてる男にとっては逆に怒りすら覚える言葉なわけよ。

 例えお前が何かに気付いて欲しくても、その言葉は恋人同士にとって破局を決定しかねない言葉なのだ。

 いや、まぁ友人とかにとってもだけどさ。


 思いはしても口には出さず、圭一は落ち着いて考えめぐらせる。

 確かに自分が何をしたのかは考えつくことは無い。

 それでも機嫌を取りたいのはやっぱり死んでしまったとはいえ溢喜が好きだからなのだろう。


 でなかったら今頃はどっかの寺に飛び込んで除霊を行ってもらっているはずだ。

 しかし覚えておいてくれ。

 もしもこれが俺のせいでなく溢喜自身の問題によるものなら……圭一は静かに息を整える。


「なぁ溢喜、お前が何で怒ってるのか分からないんだ。ホントに教えてくれないのか?」


『当たり前よっ』


 本人は本気で怒っているらしい。

 これは本当に自分が悪いのだろうかと圭一は内心焦りにも似た不安が鎌首をもたげる。


「でもな溢喜。人が失敗を自覚するのは思いの他難しいんだよ。誰かに教えて貰いでもしない限り一年や二年は考えないと出ない答えもある。お前はそれだけ話もせずに歌い続ける気か?」


 肯定されたらまず間違いなく圭一は自分が発狂することを自覚していた。


『さ、流石に一年は……』


 しばらく黙ったまま、でもしぶしぶと溢喜は語りだした。


『圭くん、魑魅ちゃんといつの間にか仲良くなってた』


 確かにと納得の圭一。しかしそれは溢喜が急に居なくなっていたせいだということを溢喜は知らない。後で教えて貰おうかとも考える。

 溢喜は一体なぜ居なくなったのか。彼女は素直に教えてくれるだろうか?


『だけど、それよりも……』


「それよりも?」


 他に何かあるのか?

 俺が魑魅と仲良くなるより溢喜にとって不満だったことなんて……本当に何だ? 全く考え付かない。

 一体何で怒ってるんだ?


『圭くん、在人くんにムラムラしてたっ』


「ぶはぁっ!?」


 衝撃の事実。溢喜の嫉妬相手は在人だった。

 ってなんでだよ!?

 あいつは男。男だぞ。なんでそっち方面に嫉妬してんだよ!?

 おかしいだろ。お前一体何を想像した!?

 というかどういう感違いだよ!?


「男相手にムラムラするかっ!」


『で、でも……』


「いや、まぁ確かに時々びっくりするくらい女の子っぽく見えるけどな。魑魅や來ならともかく在人に嫉妬してどうする。俺は男相手に一線越える気は無いぞっ」


『そっか、よかったぁ』


 ふはぁと息を吐いて、溢喜は気付いた。


『ちょっとぉ圭くん!? 魑魅や來ならともかくってどぉゆーことっ!?』


「だぁぁっ! そりゃ言葉のアヤだっ! 女の子を好きになるならともかく男は除外って意味だよっ」


『え~、信用できなぁ~い』


「俺にど~しろってんだっ」


 再び不機嫌になる溢喜。

 もう、本当に機嫌直すの諦めて寺に駆けこもうかな……

 結局、溢喜の機嫌を直すだけで昼休憩が終わりを告げた。




 放課後、溢喜の機嫌が直って雑音はなくなったハズなのだが、内から響く地鳴りのようなうめき声に悩まされる圭一がいた。

 腹が……減った。


「あのさぁ……あんた何? 昼食べなかったの?」


 さすがに真ん前で異様な音を鳴らされては不思議に思わない方がおかしい。

 來が心配するのも仕方の無いことだった。


「ああ……着替えに手間取ってね……」


「いやあんた、40分くらいあったと思うんだけど昼休憩。何があった何が?」


「ああ、着替えに手間取ったのさ……」


 少しは悪いと思っているのだろうか?

 圭一が自分の上で頬を掻く溢喜を見ると、悪戯を見つけられた子供のように目を逸らすのだった。

 鳴りもしない口笛を吹いている。恨めしい……祟るぞこの野郎。


「ま、いっか。そんじゃさっそくボーリング行くぞ~」


 気持ちを入れ替えるようにガッツポーズ。

 來はいつもの五人を集めて強引に引き連れていく。

 唯一ふらついた足取りの圭一だったが、來に右手を引かれ無理矢理に引きづられて行った。

 せめて……行き掛けに何か食べモノを……

 あ、でもこの近辺食事処ねぇや。圭一はすぐに思い出して食事を諦めた。

 今日は朝と夜二食だけになりそうだ。


 自分のせいなのでちょっと気の毒そうな溢喜が苦笑している。

 溢喜は教室を出る前に一度振り向き手を振った。

 誰にも気付かれない少女に、ただ一言だけ、またねと呟いた。

 自分の胸に聞いてみたら?

 この言葉、言われたことがあります。

 仕事関係者だったのですがその人との仲はその言葉以降決定的に悪くなったのを記憶してます。

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