081 魔族について
ノーライフクイーンのアルマにしてもらいたいことか。こんな機会は二度と訪れないと思うので慎重に考えたいところだが、うーん、アルマ自身を拘束するようなもの、つまり、君のような吸血鬼にずっと側にいてほしいとか、仲魔になってくれというのはダメだろう。
グローパラスに居住してもらえば色々便利に……いや、強大な魔力を持つ魔族を常駐させるのはあまりに危険だろう。ダーナ王国が許可を出すとは思えない。
「いつでもアルマと連絡を取れるような手段を教えてくれないか?」
危険な相手だが、繋がりを持つことは意味があるだろう。そして、連絡手段を持てば何かの機会で役に立つかもしれない。
「そ、そういうのは、もっとお互いを知ってからですわ!」
「えー……」
よく分からない理由で却下されてしまった。今回の件の報酬として渡すには大きすぎる情報ということだろうか。
そうなると、この場でできることに限られてしまいそうだ。そういうもので何か有益なものは……。
「魔族についていくつか質問をしてもいいか?」
「……まあ、質問の内容によりますけど」
モンスター娘についての情報はモンスター娘を介して入手することができる。ただ、魔族についての情報はほとんど得られていないのが現状だ。ここで、魔族相手に正しいと知識を仕入れることはプラスになるだろう。
「まず、魔族ってどういうモンスター、いや、生物なんだ?」
「いきなり難しい質問をしますわね……」
アルマは嫌そうな顔をしたが、どうやら答えてくれるようだ。
「今よりずっと昔、モンスターはもちろん、人間すらまだ創造されていなかった時代に、世界に魔力が溢れすぎた時期があったそうですわ。暴走の危険性のある魔力を放置することをよしとしなかった神々は、魔力が溢れ出る場所をまとめて別の世界を作り、その地に生命の核をばらまいたと伝えられています」
「生命の核?」
「魂や意思と呼ばれるものを生み出すものらしいですが、私もそれについてはこれ以上のことは分かりませんわ」
「そうか……。で、ひょっとしなくても、その別の世界というのが魔界か?」
アルマは小さく頷いた。
「魔界では、生命の核に魔力が集まり、多くの魔族が生まれました。今となってはその時代から生き残っている魔族は少なく、始祖魔族とも呼ばれて畏敬の対象ですわね。多くが魔王と呼ばれていますわ」
「今では、魔族はどうやって生まれるんだ?」
「魔族が滅ぶと、生命の核が残るそうです。形あるものではないらしいので、私たちにはそれを確認することはできませんが。そして、その生命の核に再び魔力が集まり、新たな魔族が生まれます」
「それは同じ魔族が復活するってこと?」
「滅びた魔族の復活という例はいくつもあります。しかし、復活していない魔族の数はそれとは比べ物にならないほど多いですが」
となると、いくつか考えられるな。復活のためには一定以上の魔力が必要で、その魔力が集まるまで復活できない。または、復活した魔族は完全に滅んでいたわけではなく、魔力を集めてその姿を取り戻しただけ。どちらでもなければ、同じ魔族として復活することもあれば、まったく別の魔族として復活することもあるという時の運みたいな感じか。
「ん? 魔族って、そういう自然発生でしか誕生しないのか?」
それは生物として正直どうだろうか。
「魔族は現在のモンスターとは異なり、男女の性差がありますわ。子孫を残している魔族も少なくはありませんわね」
あ、モンスター娘ばかり相手にしていて感覚が麻痺していたけど、モンスター娘以外には普通に男と女がいるんだっけ。
「ちなみに、男と女で強さが違ったりするのか?」
やっぱり、魔王と呼ばれる強大な魔族は男が多いのかな。
「基本的に女の魔族の方が魔力が強いですわ」
アルマはふふんと胸を張って答えた。……そうなのか、女の方が強いのか。生物って基本的に女の方が強いよね。
「なんか男としては悲しいなあ。で、話を変えるけど、アルマはノーライフクイーンと呼ばれているけど、吸血鬼の一族ってことだよな?」
「誇り高き吸血鬼ですわ」
「魔族には吸血鬼の他にどんな種族がいるんだ?」
「一番多いのがリリムですわね。次がサキュバスやインキュバスといった淫魔で、獣魔の数も多かった気がしますわ」
獣魔と言われると魔族というよりも違ったものを思い浮かべてしまうな。
「ですが、圧倒的に多いのは明確な種族がない魔族ですわ」
「えっと、つまり、自然発生した魔族が多いってこと?」
「確かにそれもありますが、個人主義の魔族が多いというのが大きいですわね。私たち吸血鬼は一族を大切にしますが、そうした魔族は珍しく、ほとんどの魔族は自分という魔族とそれ以外の魔族という認識の仕方をしているといったところでしょうか」
あー、つまり吸血鬼ノーライフクイーンのアルマという認識ではなく、魔族のアルマという認識の仕方ということかな。
「魔界では主に魔力の強さで下級魔族、中級魔族、上級魔族と分けられて、それ以外の分類には興味がない方がほとんどですわね」
「ちなみに、アルマは?」
「ノーライフクイーン、ノーライフキングは例外なく上級魔族ですわ。そして、私はその中でも上位と自負しておりますわ」
あくまで上位であって、一番ではないのね。
「さっき始祖魔族や魔王といった言葉が出てきたけど、それらも上級魔族?」
「始祖魔族の方もやはり例外なく上級魔族ですわね。そして、魔王は別格の存在ですわ。圧倒的な力を持ち、自然に魔王と呼ばれるようになるのが魔王で、十人前後しかいなかった時代もあれば、五十人以上の魔王が乱立していた時代もあると言われています」
「今は何人なんだ?」
「私が魔界を出たときは十七人でしたが、今も同じかどうかは分かりませんわ」
結構アバウトなんだな。
「それでだ、ここからが核心の質問なんだけど」
「まだあるんですの?」
「グローパラスのことは知っているだろ。俺は魔族もグローパラスに迎え入れたいと思っている。そのためには、おそらく何らかの契約が必要なんじゃないか?」
アルマの目が光った。
「やはりそれを聞きますか」
「……ということは、あるんだな」
「ええ。もっとも、契約と言っても結構な種類ありますけど」
「グローパラスの一員として迎え入れるにはどうすればいい?」
「一番簡単なのは力で従えて契約を結ぶことですわね。使い魔として好きに使えますわ。もっとも、その魔族よりも圧倒的な力を示す必要がありますが」
うーん、そういう一方的な関係は違うんだよな。
「もう少し対等な関係のやつがいいんだけど」
「それならば、契約相手の魔族が求めるものを与える契約が一般的ですわね。ただし、契約の時に注意しないと一方的にむしり取られるから注意が必要ですわ。力の差が大きい相手とはそういった契約をしないのが無難ですわね。あなたの場合は、中級魔族でも大丈夫だと思いますけど、上級魔族と契約するのはまだやめておいた方がいいですわ」
さすがに上級魔族相手は危険か。ということは、アルマ相手もまだ無理ってことだな。
「契約するためには、魔界にいる相手を召喚する魔法が必要ですわ。召喚したい相手によって方法が異なるので、求める相手を召喚することも難しいですわね。基本的に魔族は魔界から出てきませんから」
じゃあ魔界にいないでここらへんをほっつき歩いているアルマは何なんだと言いたいが、機嫌を損ねたら質問を打ち切られるかもしれないのでこらえておく。
「アルマは魔族を召喚する魔法をどのぐらい知っているんだ?」
「……多くはないですわね」
「今グローパラスで必要なのは、財務管理に長けた者、医術や薬草学に長けた者、魔族やモンスターについての知識が豊富な者なんだけど、俺でも相手ができる魔族でアルマが召喚方法を知っている魔族はどんなのがいる?」
「そうですわね……」
アルマは考え込みながらいくつかの名前をあげていく。
「財務管理なんてまた細かい注文ですわね。あなたでも相手ができるとなると、ラウムぐらいしか思いつきませんわ。財務管理だけでなく、内政全般が得意でしたっけ。医術、薬草学なら、マルバス、フォラス、バシン……あ、マルバスはまだあなたでは相手にするのが難しいかもしれませんわね。フォラス、バシン共に薬草た鉱石の知識が豊富と聞いていますわ。知識なら、プルソンやオロバスですわね。プルソンは財宝について詳しくて、オロバスは世界の真理がどうのとか辛気臭いことを研究していると聞きましたわ」
なんか聞いたことのない名前がぽんぽん出てきて混乱してきた。
「全員の召喚方法を教えてくれると助かるんだけど」
「それは今回の私の対価としては大きすぎますわ。今挙げた中の一人だけなら教えてあげますけど。本当は、それでも対価が大きいということは知っておいてくださいまし」
たった一人か。それでも、有益なんだろうけど。
うーん、どうしよう。




