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モン娘えぼりゅーしょん!  作者: 氷雨☆ひで
二章 移動手段を求めて
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046 移動手段の模索

 モンスター娘を効率的に探すためには、何らかの移動手段がやはり必須だ。それもただの馬や馬車などではなく、もっと移動速度が速くて手間がかからないものが理想的だ。

 そうなると、まず思いつくのはモンスター娘による移動だ。地形の影響を受けない飛行能力を持つモンスター娘がいい。パッと思いつくので、ペガサス、グリフォン、ヒポグリフ、ワイバーン、ドラゴンなどがいるが……一体どこにいるのか見当がつかない。かつては北部の山地にワイバーンがいたそうだが、ハーピーやラミアに聞いてもよく分からないそうだし。

 そうだ、モンスター娘自体の移動にも時間がかかることを考えると、大勢を運べる方がいいか。体が大きくて、体内に他人を乗せて運ぶことができるモンスター娘がいれば都合がいいのだが。バス的な感じだな。エロイムエッサイムな十二使徒でもそういうのがいたっけ。

 ただ、神話や民間伝承などのモンスターでそういう体内に収納する乗り物モンスターは見たことがないな。やはり、複数を一度に運ぶとなると体の大きなモンスターしか考えられない。ドラゴンは……この世界では今はどんな外見をしているんだろうか。サンドワームみたいに巨大なモンスター娘だったりするのかな?


 うーん、思考が色々と迷走しているな。

 ……やはり、今後のことを考えると複数を運べる移動手段が必要になると思う。 モンスター娘ではなく、ここは魔法で考えてみるのがいいかもしれない。転移魔法というやつだ。どの程度の規模かは知らないが、転移魔法が存在することはクレアとティナが言っていたしな。ただし、魔法の構造が秘匿されていて使い手が少ないんだったか。でも、魔法学院の学院長が使えるって言ってたな。


 そこまで考えを進めていると、タイミングよくクレアとティナがやってきた。

 俺がいるのは屋敷の居間で、紅茶を飲みながら考え事をしていたわけだが、どうやら二人も紅茶を飲みにやってきたようだ。


「二人ともちょうどいい所に来た。ちょっと話を聞いてくれないか」


 俺は二人に紅茶を淹れながら、今さっき考えたことをそのまま話した。


「そんなわけで、学院長に面会をしたいんだが、二人を通して面会の約束を取り付けたりできないか?」


 二人は学院の生徒だから、場合によっては面会しやすくなるかもしれない。もちろん、二人に無理と言われたら正規の手段を使えばいい。


「いいわよ。学院長は結構気さくな人柄だし、会うのは難しくないと思う」

「ただ、面会を求める手紙をあらかじめ書いて下さいね。その方が円滑に事が運ぶと思われますので」


 まあ、そうだよな。それなら、転移魔法について知りたいということと、なぜ転移魔法を必要とするかを書いた方がいいな。グローパラスについては……人間とモンスター娘との共存という話まで書くのはまずいかもしれない。危険思想の類に入りかねないしな。そこら辺は、単に相互理解を深めるため、ぐらいにしておけば安全かな……。




 それから数日後、魔法学院の学院長が俺の屋敷を電撃訪問してきた。学院長の後ろに微妙な表情をしたクレアとティナがいることを考えると、学院長のフットワークが軽かったということだろうか。


「まさかこちらに直接おいでくださるとは……。本来は私の方から頭を下げて伺わなければならなかったのですが」

「いえいえ、お気になさらずに。王都の噂になっているグローパラスは一度この目で見てみたいと思っていましたから、渡りに船といったところです」


 学院長の名前はロバート・フォード。学院長ということで老人を想像していたのだが、見た感じ四十代といったところか。頭頂部が、うん、すっかり何もないのが特徴的だ。側頭部は黒々としているだけに、頭頂部が非常に目立つ。同じ男としてなんというか身につまされるものを感じる。

 印象的なのは優しい光をたたえた瞳だ。若干垂れ目な感じで、全体的に安心させるような雰囲気がある。


「このグローパラスは凄いですね。文献や話の中でしか見たことや聞いたことがないモンスターが普通に生活をしているのが驚きです。まさに感激としか言いようがありません」

「そう言っていただけると、私も園長として鼻が高いです」


 徒歩で来たようなので、俺は屋敷の客間へ学院長を案内した。紅茶と菓子をクレアとティナに出してもらい、俺は学院長と話をする。

 最初は当たり障りなく園の評判についての話や、クレアとティナの話題だ。どうやら二人は学院の中でも優秀なようで、学院長も大いに期待しているらしい。やはり魔法使いとして優秀なんだな、あの二人は。


「では、本題に入りましょう。リューイチさんは転移魔法を使って、モンスターを探す旅の移動時間を短縮しようと考えているわけですね」

「はい」


 それができれば効率が段違いによくなる。


「転移魔法は非常に高度な魔法です。扱いが難しく、魔法を発現させるための構造は術者に大きく依存し、術者によってその効果は千差万別です。それ故に、転移魔法については情報が秘匿されることがほとんどです」


 まあ、転移魔法は悪用しようと思えばいくらでも悪用できるからなあ。もし大人数を転移させることができたら、暗殺も容易にできるだろう。


「そのため、転移魔法の研究は進んでいるとは言えません。どのような効果を持っているか判明している転移魔法もいくつかありますが、その構造は不明です」

「聞いた話では、構造が分かっても必要となる魔力が膨大で、実際に使うことができる魔法使いは少ないという話ですが……」

「その通りです。構造を理解しても、発動させることができる魔法使いは少ないでしょう。しかし、構造を知る者が増えれば、それだけ外部に流出する危険性が増します」


 ああ、そうか。よからぬ者に転移魔法の構造が知られたらまずいか。とはいえ、転移魔法を共通財産にしている国や組織もあるだろうな。


「本来は、誰が使い手かも秘匿することが望ましいのですが、僕の場合は災害時に使ったことがありましてね」


 災害時? 人を避難させるために使ったのかな。


「先に結論から言いますと、僕の転移魔法は、リューイチさんの望む転移魔法とは異なります。なぜなら、生物は昆虫ぐらい小さなものでないと転移させることができません」


 ……! 確かに、それは俺が求める転移魔法とは違う。


「そのかわり、生物でないものはある程度大きなものでも転移させることができます。災害復興の時に役立ちました」


 なるほど、災害は災害でも復興時か。


「具体的な効果や魔法の構造についてはお話することはできませんが、これで十分でしょう」

「……はい」


 さすがに簡単にはいかないか。次はどうする。確か宮廷魔術師が使える可能性があるとかなんとか……。


「他の魔法使いに聞いても、答えてくれないと思いますよ」

「やっぱりそうですよね……」

「それに、リューイチさんが求めているような規模の転移魔法は、人間が扱える魔法の規模を超えています」

「それは……つまり、私が望む複数人を長距離転移させる転移魔法は、人間には使うことができないということでしょうか?」

「断言はしません。もしかしたら使える人間もいるかもしれません。しかし、これまで確認されてきた転移魔法でリューイチさんが求めるものに近いものは、一人を転移させるのが精一杯です。しかも、魔法の発動のために必要な準備だけで相当時間がかかります」


 ……なんてこった。転移魔法を使いこなせれば移動が楽になると安易に考えていたが、現実は甘くなかったか。


「ただし、人間以外なら可能かもしれません」

「人間以外……」

「リューイチさんにとっては専門かもしれません。人間よりも魔法の扱いに優れた古代種やモンスターならあるいは」


 なるほど、確かにそうだ。


「モンスターなら妖精が種族的に魔法の扱いに長けていると話に聞きます。古代種ならば、魔法の制御に長けた天使や、魔力を多く身に宿すことから名がつけられた魔族なら、より高度な転移魔法を使えるかもしれません」




 その後、俺は学院長に深く礼を言って、園を丁寧に案内した。学院長は様々なモンスター娘を見ることができてとても喜んでいたようだ。

 転移魔法を得ることはできなかったが、貴重な情報を入手することができた。

 妖精、天使、そして魔族か。

 これから忙しくなりそうだな。

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