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モン娘えぼりゅーしょん!  作者: 氷雨☆ひで
ストーリーその1 一章 本物のモンスター娘
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003 最初の進化

 さて、どうしよう。要は、他のモンスターなどに怯えなくてもいいようになりたいってことだよなあ。

 普通に考えたら強くなるように進化させればいいんだろうけど、進化ってそういうものだっけ?

 ゲームとかだと進化=パワーアップだけど、一般的に進化っていえば適者生存だよなあ。より生存に適した性質を有した生物が生き残るってやつ。自然選択の方が正確だったっけ?

 とはいえ、モンスターなんだから、単純にパワーアップというのもありか?

 ただ、確か神は言っていた。

 俺が与えられた能力。それは、進化の可能性の具現化だと。

 だから、たぶん、元の姿からあまりにかけ離れたものに進化させることはできない。

 うーん、スライム、スライム、スライム……。


「あ……」


 ふと思いついたことに思わず声が出た。

 スライムといえば、あれだ、メタル!

 あの圧倒的な防御力と敏捷さがあれば、こと生存に関してはスペシャリストになるのではなかろうか。


「ニュン、あのさ、メタルスライムって仲間にいる? 身体が金属のスライム」

「ううん、聞いたことないよ」


 よし、他に同じ種がいたら進化とはちょっと違うのではと危惧したが、少なくともニュンの知識ではいないらしい。

 ニュンが仲間のスライムの全部を知っていると考えるのは無理があるけど。

 決めた、メタルスライムだ。

 えーっと、つまり、ニュンの身体をメタルに変えればいいってことか?

 あれ? メタルスライムのメタルって金属だろうけど、何の金属だろう。鉄? いや、てつのよろいよりも、やはりはがねのよろいだろ。

 はがね。鋼。

 鋼って何だろ。鉄じゃないよな。合金。そうだよ、合金だ、たぶん。でも、何と何の合金?

 たぶん鉄はある。鉄と……ええっと、うんと、何だろ、ニッケル? スズ? コバルト? 銀?

 いやいや待てよ。製錬された鉄が鋼? いや、それは純粋な鉄ってことか?


 やばい、わけがわからない。

 くそ、ネットさえあればググって調べられるんだが、そんなものないし。

 そもそもメタルって金属だよな。金属っぽいものなら何でもいいような気がしてきた。てか、どうやって生まれたんだよ、メタルスライム。錬金術で壷の中に入れるとか、悪魔合体とかそんな感じだろ。

 とにかく、金属だ。

 何でもいいから、それっぽいものにすればいい気がしてきた。

 うん、いけるいける。


「あの、リューイチ、おなか痛いの? 大丈夫?」


 考え込んでいる俺を見てニュンが心配そうに声をかけてきた。

 なんていい子だ。

 任せろ、俺が立派なメタルスライムにしてやる。


「よし、いくぞ、ニュン!」

「え?」


 金属~、金属~、固くて丈夫な身体になれ~。

 お、なんか自分から大きな力が出てきているのが分かる。これは、いける!


「これでどうだ!」


 掛け声と共にニュンの方へ右腕を突き出す。

 すると、ニュンがきらきらと輝き始めた。


「これは……!」

「はわわ、なんか身体が変な感じかもー!」


 そこにいたのは、外見は先ほどと同じニュンだが、メタリックシルバーになり光沢を放っているニュンだった。

 近づいて拳で軽く叩くと、カンカン、と音が出る。金属の正体は分からないが、これは硬そうだ。


「守備力最大値って感じがするな。これは成功したか?」

「ねえ……」


 ニュンが泣きそうな顔でこちらを見る。


「重くて動けない~!」

「……あ」


 しまった、それは考えてなかった。ゲームや漫画とかでは軽快に飛び跳ねていた気がするし、メタルといえば素早いというのが常識……!

 しかし、ニュンは必死で身体を動かそうとしているようだが、ぴくりとも動かない。

 ……まずい、これは非常にまずい。


「い、今のなし! キャンセル!」


 その瞬間、ボンとニュンから煙のようなものが出て元に戻る。


「戻ったー!」


 ……何だこれ、我ながら適当な力すぎる。まあ、適当だからこそ何となくしか使い方の分からない状況でも進化させることに成功したわけだし、やり直しができないと今みたいによろしくない事態になるから、ありがたいか。

 たぶん、今のイメージだと身体全体が金属になって重さがえらいことになったんだろうな。そもそもニュンは半分液体みたいな身体だったから、それを前提で考えないといけないのかもしれない。


 液体……となると、あれか、未来から送り込まれてきた殺人ロボット的な発想にならないといけないか。

 しかし、常温で液体の金属なんて水銀ぐらいしか思いつかない。でも、水銀はさすがにまずい気がする。

 いや、確実にまずいだろうな。でも、さっき特に金属を指定しなくても何とかなったから、毒性のない液体金属も何とかなるような気がする。いや、何とかなるって強い気持ちを持つことが大切なのかもしれない。

 スライムはやっぱあの弾力性があってなんぼだよな。それを維持しつつ、身体があまり重くならないように外からの攻撃に対しての防御力を発揮するようにとなると……。


「これでどうだ!」

「こ、今度は何~!?」


 ニュンの身体の表層部分を無害な液体金属に置き換える。液体金属は刃による攻撃をはじき返すぐらいの硬度と、手でおさえたら弾力を感じる程度のやわらかさを兼ね備えたものがいい。

 そして、その試みは成功した。

 液体金属は想定よりも元のスライムのようなゲルっぽい流動性を持ち、外見がメタリックシルバーに変化した以外は、ほとんど変化がないように見える。


「まだ重いけど、今度は歩けるよー」

「よし、問題点はクリアしたな」

「でも、身体の色は前の青の方がよかったかも……」


 ショボーンとなるニュンを見て、俺は液体金属に力を放ち、その色を青色にした。金属の光沢を放つが、それが透明感を感じさせて前の姿を思い起こさせる。


「これならいいかも♪」


 ただ、何か問題が起こるかもしれない。一日は様子を見た方がいいだろう。そのぐらい付き合うのが責任ってものだ。

 それを言ったら、スライムたちが集まる場所へ招待されることになった。

 他のスライムたちにどんなのがいるのか興味があるし、そのスライムたちの反応も気になるので、俺は二つ返事でその場所へ向かうこととなった。




 その場所は、ニュンと出会った場所からさして離れていない場所にあった。

 案内された場所は森の中にある崖で、その崖にはいくつか洞窟があり、そこにスライムたちが住んでいるらしい。

 また、崖のあたりには、グラウンドぐらいの広さの草地がある。

 そこにニュンの仲間とおぼしきスライムたちがいたのだが、人間の俺が現れたことと、ニュンの姿が変わっていることから、さすがに警戒心がはたらいて洞窟の中に隠れて、そこから出てこようとしない。


「みんなぁ! 大丈夫だよ! この人間さんはとっても不思議な力を持っていて、私を強くしてくれたの!」


 ニュンが一生懸命俺のことを説明する。

 そのぽわぽわした声は元のままなので、隠れていたスライムたちは、やがてひとりずつ出てくるのであった。

 それはもうカラフルな光景だ。

 青が一番多いが、赤、黄色、緑あたりを基本として、個体ごとに微妙に色の濃淡の差があったり、その濃淡が描く模様がまた個体ごとの差を顕著としているように見える。

 にしても、ざっと見て二十人ぐらいか。

 そうそう、外見が人間っぽいから、数え方は「人」にしておくことにする。


「ほとんどがわたしと同じ普通のスライムだよー。あとは、バブルスライムが二人と、ハイ・スライムが一人だね」


 あ、「人」って数えてる。やっぱそうなのか。

 ニュンが俺に普通に話しかけているのを見て安心したのか、普通のスライムと思われるカラフルなスライムたちが寄ってきて、興味津々と言った感じで俺を見ている。

 とりあえず、笑いかけて安心させるようにしておく。

 おお、なんかコミュニケーションを普通に取れるな。人間の子供たちと同じような感じだ。


「ところで、リューイチ……」

「どうした? かなりぷるぷるしているけど」

「やっぱり、金属重い……もう、限界……」


 その場にパタリと倒れるニュンを見て、慌てて元のスライムに戻す。

 最初のメタル化よりだいぶ軽くなったとはいえ、どうやら普通のスライムでは液体金属の身体を支えることも難しいようだ。

 そして、ニュンの姿を一瞬で変化させたことで、スライムたちの好奇心の視線がますます痛くなってきた。

 うーん、これからどうしよう。

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