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太陽が登り始めている。
東のほうの山の稜線から、光が染み出している。
そんな中、女性と男の子が屋上で向き合っている。
いや、どちらかというと、じーっと男の子が女性を見つめているの対して、女性が微妙に目をそらしている。
男の子がふいと目線をずらして、わざとらしく、「……………………プフッ」と笑った。
半刻経ったかと思うほどの時間が経ってから、女性が、
「アアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーー!!!」
うめいた。
鬼気迫るようすで、血走った目をしながら、男の子の服を掴んで揺さぶる。
「『なんとかさんじゅうななさい』みたいな私があんなピッチピチの女子高生の前でこーんなひらひらな服着てあーんな大立ち回りしてしかもあの子なんかほっておけないんだもん危なっかしくてだってだってだってあの子敵の人形の方向いてないんだもん視野狭すぎもー困るーけどあ~~~もうやだ~~~この歳でこの服って今までもやばいって思ってたけど実際やば過ぎないっていうか私37じゃないもん27だもん!!!!」
「あばばばばばばば」
「やばいよねやばいよねやばいよね!? ムリムリムリムリムリムリほんとムリ!! けどあの子に逢うって約束しちゃったようなもんだしもう一度くらい逢わなきゃいけないってことじゃんそしたら絶対ぜったいぜ~~~~~~ったい年齢ばれるって! この歳でこんな副着てるような変態に思われる~~~~~~~~~!!!」
「あばばばばばばば」
「も~~~やだ~~~~~~!!!!」
その日、朝日のもとで泣き叫ぶ声が、道路にまで響き渡り、後日、少女との再会に一役買ってしまったのは、不幸としか言い用がない事実である。