完璧な幼馴染をもつわたしの見解
わたしの幼馴染は女の子の夢と妄想が具現したかのような存在だ。
すっきりとした鼻筋、切れ長の瞳、女よりも赤く色づく唇。すらりと長い手足、シミなんて絶対にない白い肌、国家機関からスカウトが来るぐらい優秀な頭脳、それを無駄にしない知識欲と知性。スポーツ・格闘技なんでもこなす優れた運動神経。大会社の一人息子であり家柄は超一流。だけど性格は温和で驕ったところはない。
浮かべる笑顔はどことなく色気が漂うが人を惹きつけて止まない。
指導力もバッチリ、いいところを上げれば切りがない悪い所なんて思いつかない完璧と言う言葉が似合う幼馴染のあだ名はずばり「王子」。
そんな幼馴染と十六年間幼馴染をしているわたしはというと………。
高校生になった未だに中学生………下手をしたら小学校高学年に間違われる童顔低身長。お子様のような手に短い寸胴体型。薄っすらそばかすの浮いた肌に可もなく不可もない成績(数学のみ底辺)に走り出して三分で激しい息切れを起こし、足をもつれさせこける運動神経のなさ。家は先祖代々農家。性格は能天気で鈍い……らしい。リーダーシップなんて欠片もなく人をひきつける要素は何一つ見当たらない。
いいところはなかなか見つからず、悪いところもそう出てこないそんなわたしを一言で現すなら「平凡」。
この言葉以外にない。
「あ!ナツ!」
ない、のに………。
「どこ行くの?今帰り?ちょっと待っててオレ、すぐに仕事を終わらせるから!一緒に帰ろう!」
ご主人様を見つけた犬のように走りよってきた幼馴染に血統書付きの犬の尻尾と耳が見えた気がした。
「いい?いいよね?すぐ終わらせるから!!待ってて!!」
こっちの言い分は一切聞かずに一方的にそう決めた幼馴染は風のように走り去っていく。残されたのは重い重いため息をつくわたしと嫉妬混じりの棘棘しい周囲の女子生徒からの視線。
「はぁ~~~」
平凡なわたしは完璧な幼馴染を持ったことと彼に隠すことなく懐かれているためこの界隈では知らない人がいないぐらい有名だ。平凡なのに。平々凡々なのに。ものすご~~~~~~~~~く平凡で地味な人間なのに。
どうして、こう、なった?
夕暮れに染まる廊下で棘棘しい視線を感じながらわたしは何百回と繰り返した自問を今日もまた繰り返した。
そんなわたしは「身の程知らず」と影で言われている。
………理不尽じゃね?