表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/36

第三十五話

書き上げで即効投稿してますので、誤字脱字、おかしな文章が多いかと思われます。





「午後からは魂術の講義。それと、実技を行うのよさ」

「はい! はい!」


 里を案内してもらった次の日の午後、ヴラド達は河川近くの広場に集まっていた。

 午前中はなぜかセルンではなく、忙しい筈の若き長であるエルフィルから現在の情勢を学んでいた。

 これからの時間はロザリーによる魂術の勉強という訳である。

 因みにリアンは屋敷の居間で日向ぼっこに明け暮れている。猫の本能には逆らえないらしい。


「エルは本当元気なのよさ。それで、何か質問でもあるのだわ?」

「えっと。ジツギってなんですか?」

「実技は勉強で学んだことを、実際に行ってみることなのだわさ」


 やはりヴラド一人が育てた影響か、どうしても語彙の面などを含め、色々エルには足りない部分が出てくる。

 父親としては少々情けなくなるところだが、嫌がりもせずお姉さん風を吹かすロザリーにも感謝がたえない。


「エルにもちゃんとわかるかなぁ……」

「そこはエルの頑張り次第なのだわ!」

「うん。エルがんばるよ!!」


 拳をぎゅっと握り、里で分けてもらったのであろう黒い貫頭衣をふりふりと躍らせながら元気よく返事をする。

 ワンピースは流石にリィーン山脈の道程で、ボロボロとなってしまったらしい。

 黒なのは汚れが目立たないようにするためだろうか。

 ロザリーは毎度の如くゴシック調のドレスであり、天気のよい今日、暑くないのかとヴラドとしては疑問に思う。


「さて、それじゃあロザリー先生の魂術授業の始まりなのよさ!」


 いつぞやの如く魂術で幻の眼鏡、それにタクトのような物を作り出す。

 

「魂術とは字で書くと……こう、なのだわさ」


 教え棒が宙を踊るたび、日本語で“魂術”と書かれていく。

 エルには流石に漢字は読めないだろうが、とりあえずそう書くのだとは理解しているようだ。


「たましいによるすべと書いて魂術こんじゅつなのだわ。名前の通り、魂術は魂と密接に関わってくるもので、その動力を魂力と呼ぶのよさ」

「こんりき?」


 大雑把であれば、本能的に、そしておぼろげにヴラドも知るものだが、詳しくとなれば別だ。


「魂ってのは、肉体と結びつくことでその魂の規模、質に見合ったエネルギーを生み出すのだわ。魂術はそれを用いて行われるのよさ」

『まて、それはつまり生命力と同義ではないのか?』

「相違ないのだわ。体力とは勿論違うけど、魂力は生命力とも呼べるのだわさ。だから、過剰に消費すれば下手すれば自滅するから注意なのだわ」


 まさかそんな危険なものだとはヴラドも知らなかった。

 エルも言葉全部は理解出来ずとも、どうやら使いすぎが危ないことは理解したらしく不安そうな顔をしている。

 そんな二人を笑うようにしかしロザリーは続ける。


「実際のところ、一定以上消費すると倦怠感、目眩、頭痛、吐き気、その他不調が発生するから、よほど無茶しない限りは問題ないのよさ」


 稀にその限界を気づかず突破しちゃう困った者も入るけれど、と、不吉な言葉も付け足してくる。

 何事にも例外、イレギュラーはついて回るものだ。

 ロザリーの口にしたソレも、言わばそんな一例だろう。


「さて、次だけれど、魂術を扱うには三つのあるモノが必要といわれているのだけど。なにか分かるのだわ?」


 急遽振られた問題にエルもヴラドも悩む。


「こんりき!!」

「正解のだわさ! どこかの思考が固まった獣とは大違いのよさ」


 確かに動力は重要なひとつだろう。事前に説明されながら、深読みしてしまったのは否定できない。

 だが、とヴラドは思う。

 いくらなんでも少々酷い言い草ではないか、と。


「残りは二つなのよさ。お兄様には是非頑張ってもらいたとろこなのだわ」


 ヴラドとしても悔しいことではあるので、真剣に考える。

 幸いエルは一つ正解して満足したのか、にこやかな笑みを浮かべるのみだ。

 実に可愛らしいものである。


(さて。ここはセオリー通りに考えよう。そもそも答えの幾つかは既に与えられているんだ。まず、ロザリーが魂術を扱うさい、何を必要としていた?)


 記憶を呼び起こし、場面を思い出す。

 すると呆気なく一つの回答が導き出された。


『“詠唱”ではないか?』

「その通りなのよさ。行いたい事象を結び、より強固なものとする楔、それが“詠唱文”なのだわ」

「えいしょう、ぶん?」

『詠唱とは違うのか、それは?』


 エルも同じ部分に疑問をもったらしい。

 と言っても、あくまで似た単語に反応した可能性も高いが。

 譜面通りであるならば、詠唱文とはつまり、詠唱する際に使う文。

 ようは詠唱の本体であるが。詠唱とはそもそも文を口にして行うものだ、わけて扱うからには意味があるのだろう。


「簡単に言えば、詠唱文こそが重要であって。詠唱はその派生に過ぎないのよさ」

「……?」

「エルにはちょっと難しい話かもしれないのだわ。必要なのは厳密には詠唱ではなくて、詠唱する文そのもの。文に力があって、口ずさむことでその力を起動させるのよさ。だから文を刻んだ魔道具マジックアイテムなんてものもあるのだわさ」

『なるほどな』


 声、言霊に力ある訳ではなく、あくまで文そのものに力が宿るらしい。

 ロザリーの言い方からすれば、詠唱文を刻み、詠唱の代わりとなる機構を施せば魔道具が作れるのかもしれない。

 現在、これといった物はお目にかかっていないが、手に入れば観察してみると面白そうだ。


『それじゃあ、最後の一つはイメージか?』

「あら、よく分かったのだわね」

『この会話だけでも幾つかヒントがあった。それに、生前はゲームも多少は嗜んでいてな。この手のセオリーと言えば、想像、イメージだろう』


 ヴラドの言葉に「まぁ、間違ってはいないのだけど、釈然としないのよさ……」と、ロザリーがげんなりした顔で返す。

 長く生きればゲームに触れる機会だってあるし、ファンタジー物の書物だって目にしている。

 それに会話の中でも、事象を強固にする、だとか、今までの中でも多少のヒントは紛れていた。

 決して切れ者とは自負してないが、ヒントを与えられてたどり着けない程でもない。


「とにかく、これで必要な三つが出たのだわ。一つ、魂力。二つ、詠唱文。三つ、想像力。魂術はこの三つをもって基本行使されるのよさ」

『基本、ということは例外もやはりあるのか』

「……世の中イレギュラーには事欠かないってことなのだわ」


 小さく、「天才とか天才とか鬼才とか」などと聞こえた気がしたが、気にしないでおくことにする。

 何かトラウマでもあるのかもしれない。

 こほん! と、咳払いをし、教え棒で宙にこれまでの纏めを書き出す。

 平行するように三つの要素が書かれ、それらを線で結び、先に魂術と書く。


「この中でも想像力と詠唱文は重要な役割を持つのよさ」


 二つの要素を青色で囲み、「大切!」と書き出す。

 懇切丁寧に漢字にはルビが振られており、エルも理解しようと必死だ。


「更に重要なのがこの二つの中でも詠唱文なのだわ。合計値を十の間で表すと、魂力が二、想像力が三、残りの五が詠唱文なのだわさ」


 今度は魂力に「そこまで大切じゃない」、想像力に「そこそこ大切」、そして詠唱文に「とっても大切」と矢印で書き足す。


「魂術の詠唱文に定型はないのだわ。同じような結果を持つものでも、詠唱文はそれぞれで異なるのよさ。理由はそもそも魂術を作り出す過程にあるのだわ」


 そう口にすると、空いたスペースに「魂術の発動プロセス」と書き込む。

 そこから真下に矢印が伸び、ステップ一! と小さく書かれ、横に「イメージを膨らませる」と書き出す。

 そこからまた線が下に引かれ、ステップ二! と書かれ、横に「イメージに見合った詠唱文を考え口に出す」と書き込んでいく。

 最後にはステップ三で、魂力が消費されると書かれ完了となっている。


「曲者なのが、このイメージに合った詠唱文を考え口にする、なのだわさ」

『普通にそれっぽいものでは駄目なのか?』

「前に説明したけれど、この世界には意思があるのだわ」

『ああ。そもそも進化の最終形態の一つが星だと言っていたな』


 ヴラドがそう補足を入れれば、ロザリーが少し恥ずかしそうに「自論に過ぎないのだわ」と小さく返す。

 そしてそこまで聞き、まさかと思考が飛躍する。

 そもそも一エネルギーがどうして物理的法則を超越したかのような、摩訶不思議な現象を引き起こせるのか。

 その理由が、答えがおぼろげに理解出来てくる。

 ロザリーもヴラドの見せる驚愕の表情に、にんまりと笑みを浮かべて見せる。


「多分想像とそう変わらないのよさ。つまり、詠唱文は“世界”に認められて初めて力を持つのだわ。そしてこれはまた私の自論だけれど、世界とは一種の超越者で、今入るここは言わばその体内……」

『つまり、なんだ。私達は宇宙法則が敷かれた星の中に居ると思っていたが。その実、一種の特異点の中で生活をしている、と? そうロザリーは言いたいのか?』

「そこまで飛躍していいのかは分からないのだわ。ただ、現実に物理法則は超越されているのだから、不思議ではないのよさ」


 そう言って肩を竦めて見せるロザリーだが、ヴラドはなんとも言えない表情を浮かべている。

 このような説明をされると、自身がなにか得体の知れない生物の体内に居るようで、少々気味が悪くなってくるのだ。

 実際のところ、その自論が正しい証拠はないのだから、間違っている可能性は十分にある。

 だが、逆に言えば正しい可能性もまたあるのだ。


『あー。で、だ。つまり、その世界に認められるのがつまり曲者だと?』

「そういう事なのだわ。はっきりいって、基準も何もわかってないのよさ。正直、世界のきまぐれで承認されているってのが一番の有効説なのだわさ」

『……それは』


 エルは最早話しについていけないのか、ぼーと空を眺めている。

 よく見れば瞳は虚ろであるところから、少々頭を使いすぎたのかもしれない。

 

「因みに、その認証のされ易さとイメージの豊富さの総合が才能の有無とされているのだわ。正直、魂力だけなら自己生成に頼らなくても構わないのよさ」

『何とも微妙な才能の線引きだな』

「全くなのだわ……イメージはともかく、承認ばかりは他人任せ。なのに一番重要だなんて、あんまり笑えないのよさ」


 自己の努力ではどうにもならない。完全に他者に委ねられた才能。

 これほど不安定なものもそうはないだろう。

 自身に才能がないのならまだしも、他人がそれを決定付けると言うのだから。


「まっ、後は実践あるのみだわさ。魂力は詠唱の完成と同時、自動で差し引きされるから、実際に詠唱文をこれから作ってみるのだわ!」


 気分を変えるように手を叩き、大声で伝えるロザリー。

 エルもようやく講義が終わり、実技に入るとわかったのか、現金にも目を輝かせはじめる。

 かくいうヴラドも、重要な点が世界任せとはいえ、やはり魂術、魔法には並々ならぬ興味があった。


「それじゃあ、思う存分好きに想像し、詠唱するのよさ!!」


 





後書き


厨二病患者なら、結構嬉しい設定かもしれない。

この設定なので、本作では基本的に詠唱は描写されます。

痛いのとかも出ると思います。

背中がむず痒くなったら申し訳ない……


それと、ヴラド達が使うもの以外でも、何かよさげな詠唱文とか、効果とかあったら感想やメッセで案をくれると助かります。

両方セットでも構いません。

基本はずら~と詠唱し、最後に起動文、ようは魂術名がくる感じです。


最後の起動文はカナでルビがいるのですが、そこはこっちで適当に用意します。


それでは、誤字脱字の報告や、感想などお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ