表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら大嫌いで大好きな悪魔  作者: ひょく
1章 夜明けを待つ鳥へ、祝福のフィナーレを
8/16

3 空を知らない鳥

「ルルたいちょー。あいつらがターゲットです?」


ルルは無言で頷く。


「おい!お前、隊長様は200年以上生き抜いたADSのベテランなんだぞ。もっと敬語使えよ。」


「えーだってせっかく同じ隊になったんですから仲良くしませんとー。」


ルルが二人の会話を遮るように言う。

「メイナ、読唇術でターゲットの発言を報告しろ。」


「りょです!たいちょー。んんん?どれどれ。」

しゃがんで目を丸くする。


「『レイは昼より夜の方が生き生きとしてる。

青空より夜空の方が安心する。

それより寝たらどうだ?

そうだね。月も高いし。

レイは?

俺はまだ夜風にあたっとく。』

おっ二人とも分散したぽいですね。今がチャンスですよ!」


ルルが建物を軽々と飛び越える。

「お前達はターゲットの背後に回れ。私は前から行く。油断するなよ。あいつらは赤目、能力持ちだ。」

振り返ったルルの目は赤く光っていた。


「んじゃっ久しぶりにやりますかー。よろしくね。」


「チッ。俺は隊長様と行動したかったのに。」


「まあまあ、そんな事言わずにっ!一緒になったのも何か縁何だしさ。」

彼の足首を掴む。そのまま建物を飛び移った。

「おい!」




宿の屋上からの星空は綺麗だった。

ヒュオーッと風が吹き抜けた。その風は俺の心を落ち着かせた。

もうそろそろ部屋に戻ろう。とした時だった。


ヒュオーッ風と共に現れたように一瞬の出来事だった。

赤く冷徹な瞳。

月明かりに照らされて首元がキラリと光る。

首輪、赤い目、ADSの連中だ。


瞬き一つほどの刻で刃が瞳の前まで来ていた。

シールドを展開してどうにか防いだ。

かなり早い。ずいぶんと手練れのようだ。


「魔法...お前、悪魔か。」

殺気のこもった瞳で俺を見つめる。


(俺はADSの連中を殺したくはないんだよな。)

屋上から他の建物に飛び移って走る。


「おっとーおまち!」

後ろから軽い声が飛ぶと同時に、低い銃声音。


夜風に火薬の匂いが混ざる。

当てるのが難しいのだろう。走ってれば避けれる。


(一人だけじゃないのか。一人、二人、三人。)

左後方の屋根から銃声が鳴る。

右からはルルが迫る。


右側から重い一撃。

シールドを展開したが遠くに飛ばされた。


(建物を飛び移るだけじゃ逃げ切れないようだな。それなら。)


目の前に時計塔がそびえ立つ。その方向へ空中に飛び込んだ。

浮遊魔法で浮く。

そのまま加速。

風を切り裂き、月へ向かうように駆け上がった。

時計塔の頂上。


(ここなら流石に追ってこれない。)


カツコツ。金属のような足音があたりに響く。


(まじかよ。こんな短時間で登りきったのか。)

金属のようなものがチラリと見えた。

他の二人も遅れて到着したようだ。


「へい。お兄さん。もう勝ち目はないよー。大人しく殺されて...」

俺は時計塔から飛び降りた。

「えっ、?...

ちょっルル隊長!?」


迷いのない動きだった。

ルルも躊躇なく時計塔から飛び降りた。


「何してる!?死ぬぞ。」


重力に引っ張られてどんどん加速していく。

機械的な赤い瞳。この子はもう政府のペットとして躾けられきってしまってるんだ。


シュンっと風を切り裂くように刃が飛んでくる。


首を曲げて避けた。

はずだが頬から僅かに血が出ていた。

赤い血だ。

ルルは目を見開く。


(このままだとこの子は死ぬ。浮遊魔法で俺は生き残れるが...

この子を担いで浮遊できるか?それともこの子の能力は飛行系...?

いや、それはない。それならとっくに浮いてる。)


ルルはもう武器を持ってないようだ。何も投げつけて来ない。


(あーもうっ)


空中に駆け上がる。

それと同時に彼女の手を掴んだ。

腕に重い衝撃が走る。彼女の手首は驚くほど細い。


砂埃が舞う。

地面ギリギリで彼女を引き上げた。


心臓の音がうるさい。

彼女の手首からは脈が聞こえてくる。

...よかった生きてる。


ゆっくりと地面に着地した。

地面に降り立った瞬間、

カチリと、石を叩くような硬い音がした。


「怪我は?...」


ドンッ。一瞬で馬乗りにされる。

彼女の手が俺の首に添えられる。爪が少し食い込んだ。


「なんで...助けた。」

手が震えてる。力も入ってない。

さっきまでの機械的な瞳が酷く揺れている。


「...赤い目の者

...子供じゃない。

....殺さないといけない。....殺さないと...」


首輪がカチャリと音を立てる。

彼女の手は先程よりも更に震えていた。

彼女の手から鼓動が痛いほど聞こえてくる。

ヒューヒューと喉を鳴らし、

肩を激しく上下させる。


(震え、動悸、過呼吸...トラウマか!?)


苦しそうに息をしている。

俺は無理やり起き上がった。

声をかけようとしたその時。


「隊長様に何してる!?」

時計塔の方から叫び声が聞こえた。

先程の二人のようだ。


(この子の事はあの二人に任せるか...)


フードを深く被ってその場から立ち去った。


「大丈夫?たいちょー。」

「あいつに何されたんですか?」

ちゃんと心配してる。

任務をやりきらなかったことを責めてるわけじゃなさそうだ。


俺は一度も振り返らなかった。

あんな子まで利用する政府に吐き気がする。

彼女の足、義足だった。どんな過去があったんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ