1 血塗られた追憶
「なんだこのわんこ。」
犬の首根っこを掴みながらリツが俺に言う。
「あーそいつ。昨日、雨の中で倒れ込んでたから拾ったんだよ。」
「名前は?」
「クロコダイルメギメギスペシウム。」
親友のリツは冷ややかな視線で俺を見つめる。
「ネーミングセンス絶望的だな。」
「あ?かっこいいだろ?」
「絶対にサンダースの方がかっこいいだろ。」
「お前の方が絶望的じゃねえか。それよりクロ返せよ。」
犬に手を伸ばすが、手の動きが早すぎてとれない。
「もう少しくらいモフモフさせてくれてもいいじゃんねえか。」
そう言ったリツの手に犬はかぶりついた。
「何ぼーっとしてんだ。早く逃げねえと魔物に捕まるぞ。」
後方で木が割れる音が聞こえる。
「逃げなくてもいいじゃねえか。殺ってやろうぜ。」
「そうだな。レイならそういうと思った。」
リツは腰から双剣を取り出し、俺は浮遊する。
魔物は3本の指で木を掴み投げつけてくる。
ゴオっ!と風が吹き抜ける
りつは体制を低くして魔物の間合いに滑り込んだ。
「鬼さんこーちらー。」
魔物が上を見上げる。
俺は魔物の頭上から剣を突き刺した。目を貫いた。
グルァァァ。
苦しそうな悲鳴が響く。
リツはその隙に魔物の足を切り刻んだ。
(相変わらずすごい手数だな。)
魔物が倒れ込む。
俺は目に刺さった剣を爆発させた。
顔は爆ぜ、破片が飛び散る。
リツのそばに着地した。
グルルル
勝ったと思ったが魔物がまた立ち上がった。
ぐちゃぐちゃの顔。立っているのも辛そうだ。
「レイ!」
りつが俺をかばうように前にでた。
リツは剣で攻撃を抑えてる。
だが攻撃が重いようだ。どんどん押されてる。
リツの腰にある剣を借り、魔物の周りを舞うように切る。
だが、その威力は魔物の注意を引くだけしかなかった。
(剣は苦手なんだよな。)
魔物の長い爪が目の前まで迫る。魔物は寸前で倒れた。
リツがとどめを指してくれたようだ。
パンッとハイタッチ。
血で赤く染まった顔でりつは無邪気に笑った。
暗闇の中で月明かりに照らされて赤い色だけが反射していた。
「レ、イ...」
りつが俺に手を伸ばしてくる。
「何で俺を殺した?」
「ちがう!あれしか方法が...」
そこで目を覚ました。
動悸がする。心臓が苦しいくらい鳴っていた。
夢だったんだ。
(大丈夫。りつはあんな事言ってなかった。全部俺の妄想だ。
りつは笑って...いや違う。りつの顔は血で汚れて見えなかったんだ。)
モヤモヤとした感情が胸の中を覆った。
外の空気でも吸えば落ち着くだろう。
外はまだ暗い。
地平線の下で太陽が隠れている。
すぅーーーはぁーーー。
(大丈夫。大丈夫だ。)
冷たい風が吹き俺の頬を優しく撫でる。
慰めてくれてる。そんなふうに感じた。
次は俺の横を切り裂くような風が通り抜けた。
少し見上げてみると暗い空を切り裂くように二つの影がぶつかりあっていた。
片方は逃げてるが片方は追いかけているような感じだ。
空中を飛んでる。魔法が使える、しかも見たことない形の生物...。
猫のような形だが、背中にコウモリのような翼が生えてる。
翼さえなければそこまで猫と変わらないような見た目だ。
俺は浮遊して、その生物に近づいた。
追いかけていた方はそれに気づいたようで俺から逃げていった。
追いかけられてた方が重力に従って地面へ真っ逆さま。
地面ギリギリでどうにか受け止めた。
「大丈夫か?」
目の前の生き物はぐったりと倒れて動けそうになかった。
自分の服の袖を噛みちぎる。
それを巻き付けて応急処置をした。
目の前の生き物は不気味なくらいの笑顔で笑った。
「ありがとう。」そういった。
(知性があって、見たことない姿で、魔法が使える。何者だ?こいつ。さっきの追いかけていた奴も同じような姿だった。そういう種族なのだろうか。この千年一度も見たことがない。)
「お前何者だ?」
「僕は君たち人間の言う、ニーストラという種族だよ。」
(ニーストラ!?幻の種族と言われててほとんど人に姿を見せない種族らしいが。俺は噂で一回聞いただけで、本当にいるかどうかも怪しいと聞いてる。)
「名前は?」
「僕に名前はないよ。僕は集落で差別を受けててね。名前をくれてないんだ。」
不気味なくらい俺の目を見つめてくる。
諦めの感情が混ざってるのだろうか...?
「ないなら、クロコダイルメギメギスペシウム2とかはどうだ?」
ニーストラはぐるぐる俺の周りを浮遊しながら回った。
「それがいい!それにする!」
嬉しそうだ。
(りつ。やっぱ俺の方がネーミングセンスあったじゃねえか。)
「僕の名前はクロコダイルメギメギスペシウム!君の名前は?」
「俺はレイ。やっぱ長いからクロって呼ぶよ。」
(小さい頃もクロコダイルメギメギスペシウムが長すぎて途中で呼び方がクロに変わったからな。)
「レイは旅の者だよね?僕もその旅に入れてくらないかな?行くとこがないんだ。」
「分かった。」
「これからよろしくね。レイ。」
(その笑顔にどこか救われた気がした)、
りつ:レイの親友 金髪、赤目の目つき悪男 センター分け




