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さよなら大嫌いで大好きな悪魔  作者: ひょく
序章 お世辞で綴られた千年に、さよなら
5/16

5  さよなら大嫌いで大好きな悪魔

.....悪魔は沈黙を貫いた。


「あなたはもう負けてるのよ!!さっさと口を割りなさい!」


シルヴァードの口に指を突っ込みどうにか口を開かそうとする。口は開くが彼はなにも発さない。


「私は早く青空をみたいの!海だって山だって..私が千年どれだけ待ち望んだかわからないでしょ?」


悪魔は苦悶の表情を浮かべた。


「早く答えなさいよ!!レイも何か言って!私を外に連れ出してくれるんでしょ?」


....玄関までに行く道の時間が巻き戻ってるから玄関に辿り着けない。

もし、そうだとしたら

「推測なんだが、悪魔の能力はもう縛られてる。なら、玄関へ普通に行けるんじゃないか?」


シルヴァードのネクタイから手を離す。

「確かにそうね。行きましょ。」

シルヴァードを背にリーリアはレイの手を握る。


「お待ちください!お嬢様!!外に出てしまったら、あなたは死んでしまいます!」


シルヴァードの方を振り返る。

リーリアの瞳から光が消えた。




___千年前のあの時リーリアは首を噛みちぎられ瀕死の状態だった。

リーリアに生きてほしい。その思いで屋敷とリーリアの時間を1日前に固定した。


魔力の使いすぎで全身に激痛が走る。体を切り刻まれているような痛みだ。


「お嬢様生きてください。」

震える手で彼女の小さな手を握りしめた。




「屋敷を核にお嬢様の時間を固定してるのです。外に出ればお嬢様と屋敷に千年の時が流れ、崩れてしまいます。お嬢様...生きてください。」

千年前と全く同じ、

必死で切望するような目で語っていた。


ははは..最悪の仮説が当たってしまった。

縄の実験の時(3話)彼女の呪いが解ければ、彼女は死んでしまう。それは確信した。

が、何を核に呪いが掛かっているのかが分からなかった。

彼女自身もしくはシルヴァード、

もしくはこの屋敷...


「リーリ、」俺が呼びかけるより早くリーリアは動いた。


「理由はよーくわかったわ。だけどあなたは私がどれだけ青空の下に立ちたいかが分からなかったようね。」リーリアが手を振り上げる。

パァンッッその音だけが廊下に響く。


「私の人生は私が選ぶわ。誰かのお世辞で何千年も生きたくなんかない。」


リーリアは再びシルヴァードを背に向けて玄関を目指した。


「おい悪魔、立て。リーリアの最後くらい見届けてやれ。」

シルヴァードとレイ二人はリーリアの後ろをついて歩いた。


玄関の扉を開けた。

世界に色が戻った。


太陽の光で埃が反射する。

思わず目を細める。

それは強烈なほどの白銀の光だった。


外に向かって駆け出す。


ツインテールが風に吹かれて揺れる。

風の囁きがリーリアを通り抜けていく。

冷たいだけど心地いい。


深く息を吸う。

むせるほどの深く青い草の香り

少し湿った土の香り

爽やかなで華やかな花の香り

そのすべてが私を歓迎しているようだった。


遠くからの鳥の囀り


青空はどこまでも青く、手を延ばしても全く届かない。 

届かないと分かっていても手を延ばす。

あの美しい青に触れてみたかった。


ふと、視線を落とすと薔薇が1輪だけ咲いていた。

シルヴァードが千年前に植えたものが、

ずっとここに咲いていた。

まるでリーリアを待っていたように


彼女の体は砂のように崩れて落ちていた。

屋敷も音を立てずに消えていく。

レイは屋敷の日陰で見守る。


「リーリア!」シルヴァードはリーリアに向かって叫んだ。


リーリアは振り返った。

泣いている。でも笑っていた。

千年の中で一番の最高の笑顔だった。


シルヴァードは縄を無理やりちぎりリーリアに手を延ばす。

あと一歩、あと数センチ届かなかった。


「_____」

リーリアの口元が、かすかに動いた。



リーリアと屋敷は既に消えていた。


シルヴァードはリーリアがさっきまで立っていた場所を見つめる。

膝から崩れ落ちた。


「私は....間違っていたのでしょうか。」

千年ぶりの笑顔。それがシルヴァードの心に深く染み込んだ。



私の人生は私が選ぶわ。誰かのお世辞で何千年も生きたくなんかない.....


彼女の言った言葉が頭の中を巡る。

彼女は幸せだった。自分で選んだのだ。自分の人生を。




シルヴァードに刀を向ける。

彼は刀を避けようともしない。ただ彼女がいた虚空を見つめていた。


刀の先が震える。


...チッ


刀を下ろした。

「勘違いするなよ。リーリアの終わりを汚す趣味はないだけだ。」


一度も振り返らずにその場を後にした。

悪魔の嗚咽だけが響いていた。


序章完結です。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

こちらの序章は、言うなれば私の名刺です。

この物語の地獄に、最後まで付き合う価値があると感じてもらえるよう、執筆しました。

もし、この序章に心を殴られたなら。


では、本番の第1章でお待ちしてます。


設定

シルヴァードからリーリアへの愛は、親から子へ向けるようなものです。

戦闘後にリーリアが咳き込むのは、彼女の体が元々病弱だから。

最初の戦闘では、彼女はまだ斧を持っていません。

「どうして監禁するの」と感情のままに起こした戦いです。

二度目。

彼女はADSの遺品である斧を手に入れます。

使い手の意思に応じて重さが変わるその武器が、彼女に力を与えました。


最後にリーリアが口にした言葉は、ご想像にお任せします。


■制作秘話

薄暗い部屋で、少女がお茶を飲み、執事が隣に立つ

そんな構図を描きたい!と思ったのが始まりでした。

そこから一気に広がって、この物語になりました。

自分の好きなものを、全部詰め込んでいます。

ダークファンタジーが大好きです。

この“引きずる感じ”が、たまらなく好きなんです。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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