2 千年前の災厄
千年前の出来事
リーリア:体が弱い。屋敷の主の娘
シルヴァード:リーリア専属の世話係
_________千年前、リーリア
外で遊ぶ子供の声は私の孤独感を加速させた。カーテンを開けなくてもわかる。あの子達は笑顔で走り回っているのだろう。
私は生まれた頃から体が悪く、ほとんど外に出たことがない。
母はわたしが生まれた時に出血多量で亡くなった。父は母を愛していたため酷く傷心して仕事に没頭していた。
唯一の話相手はシルヴァードだった。
「リーリア嬢様、お食事の時間でございます。」
「今行く」
椅子から飛び降りてシルヴァードについて行った。
「ねえねえシルヴァード今日の本でねバラっていう花が出てきたんだよ。とっても綺麗で感動したらしいの。いつか見てみたいな。」
「そうですね。明日にでも取り寄せてみましょう。」
私は目を輝かせた。
「え、ほんと!」
その次の日には本当に薔薇を渡してくれた。でも、太陽に当てなかったから数ヶ月で枯れてしまった。
「バラ、かれちゃっ、、た。」
目に涙をためて言った。
「......っ、わたし、ちゃんと..ひっ、いわれたとおり、ひっく....まいにち、おみずあげた。」
シルヴァードは私の頭をポンポンと撫でてきた。
「お嬢様、目を閉じて見てください。」
戸惑ってる私にシルヴァードの手で目を隠してきた。
「今から魔法をかけます。今から3秒後に薔薇は元気な姿に戻ります。3、2、1、」
1という声と同時に数ヶ月前の薔薇が目の前に現れた。
「え、すごい!どうやってやったの?シルヴァード」
「それは秘密です。言ってしまったらこの魔法が溶けてしまいます。それと、このことは私とリーリア嬢様だけの秘密ですよ。いいですか?」
その時シルヴァードの目が怪しく光った気がした。
「わかった。だれにも言わない。」
「偉いですねリーリア嬢様」
そう言いながら私の頭を撫でてくれた。
その夜も私が寝る前に朗読をしてくれた。
「生まれかわりって本当にあるのかなぁ。あるならもう一度シルヴァードに会いたいな。」
「そうですね。リーリア嬢様。」
幸せが崩れるのは一瞬だ。
夜の静寂を遮るように人々の悲鳴が聞こえてきた。
シルヴァードがカーテンを開いて窓の外を覗いた。険しい表情で硬直した。
「なにがあったの?」
「火事です。逃げますよお嬢様。」
私が返事をする間もなくシルヴァードに抱きかかえられて屋敷の外へ連れ出された。
外には数人の使用人がいた。
「お父さまは?どこ行ったの?」
シルヴァードから降りて、使用人の元へ駆け寄った。
みんな険しい表情で口を噤んでいる。
「お父さまのこと本当に知らないの?ねえ答えてよ。」
使用人の一人が震える声で言った。
「旦那様は、、奥様の形見を、、取りに、」
血の気が引いた。後ろで炎の音が響いてくる。
きっとそんなわけない。心臓の鼓動が激しくなってきた。振り返ると屋敷は既に炎に飲み込まれていた。
ゴォォォという音があがるたび火は勢いよく燃え上がった。その音は私の期待を引き裂いた。
体の熱が目に集まってくるのを感じた。きっとそんなわけない。きっと、、
私は屋敷に向かって駆け出した。が、シルヴァードに止められてしまった。
「おとうさま、おとう...さまっ、やだ、いやだ...ッわたしをわたしを、おいていがないでっ....!!」
喉が潰れるほどの悲鳴を叫んでもその声は届かなかった。
おとうさまは仕事でいそがしくても、すきまをみつけて私に会いにきてくれた。私が運動できなくてもそれをせめたりしなかった。
いつも、優しくて気遣いができるいい子だと褒めてくれた。それに私の、世界でたった一人の家族だった。
感傷に浸る時間なんてくれなかった。
使用人の一人が悲鳴をあげた。魔物に足を食いちぎられて動けなくなっていた。
シルヴァードが私の視界を遮るように前に出た。
バリッという何かが砕ける音、咀嚼音が聞こえてきた。足元は血の海。恐怖で動けなくなった。
「リーリア!」
シルヴァードの呼ぶ声で我に返った。
シルヴァードの脇に抱えられた。視界が激しく揺れる。
「さっきの使用人...は?」
「魔物はたおしました。あの人のことは......他の人に任せてあります。」
後ろから魔物の声が聞こえる。景色が凄まじい早さで変わっていくが、魔物の声は少しずつ近づいて来ていた。
シルヴァードは私を突き放すように放り投げた。後ろを振り返るとシルヴァードが魔物と戦っていた。
「お嬢様!お逃げください。ここは私が食い止めます。」
魔物は次々と増えてきた。
シルヴァードが倒しきれるわけがない。
嫌だ嫌だ嫌だ
シルヴァードまで死んでしまったら...
周りを見回した。どこを見ても炎が舞い上がり、道では魔物がうじゃうじゃといた。まさに地獄絵図。
そんな中、町から少し離れた家に明かりが灯ってるのが見えた。
あそこならまだ人がいるかもしれない。
震える足で無理やり立って家にむかって走った。必死に、とにかく走った。体が悲鳴をあげても走り続けた。肺が焼けるようだ。耳鳴りもする。
やっとのことで家の前までたどり着いた。
ひゅーはーひゅーはーっ大丈夫。まだ動ける。家の中から音が聞こえてきた。よかった誰かいる。
玄関のドアが開いていた。何人かの人は既に避難したのだろうか。
「だれかーだれかいませんか?」
そう言って家の中を覗いた。
そこには____
魔物がいた。
咄嗟に悲鳴をあげた。足の感覚がきえて地面に座り込んでしまった。
一瞬にして視界は赤く染まった。
悪魔の災厄:人口の三分の一が死んだ災厄




