10 残念だったね
ウーウーウー――
警報が建物全体に鳴り響く。
フェニーの指先は赤いボタンに届いていた。
時間がない。
部屋の資料を片っ端から集めた。
大勢の足音が階段を駆け上がる音がする。
窓から飛び降りて屋根へと駆け昇った。
2階メイナ。
「あーもうっ最悪。レイの方で何かあったのかな?
...そういや合流する場所決めてなかったじゃん。
...五階までいってみるか、、」
持っていた資料を机の上に置いた。
屋根まで来た。日差しが強く照りつけてくる。
下の方は騒がしい。フェニーの遺体をみつけたのだろう。
そんな事考えながら資料に目を通す。
殆どが武器の設計図だ。
(腕を切断して金属をつけてるのか。257番、大量失血により死亡...)
資料をぐしゃりと握り潰した。
死んだのなんて気にしていないように、淡々と実験記録が綴られている。
能力が弱くて手術を拒否したから殺した例まで載っている。
(政府は赤い目の者を道具としてしか見てないのか。)
見ていられない。政府に対して吐き気が込み上げてくる。
資料を乱暴に屋根に叩き付けた。
(そういやルルも義足だったな。実験の産物か...?
あっそういや合流する場所決めるの忘れてた。)
「クロ。メイナならどこでいると思う?」
「......五階まで登って来てるんじゃない。」
その声色は少し不機嫌だった。
(やっぱ五階のドアが空いてる。五階で何かあったんだ。)
気配を消して歩く。
奥から何かが運ばれて来ているのが見えた。
横を通りすぎる。顔は人に遮られてよく見えなかった。
(誰か人が死んだんだ。
レイ達が
殺したのかな...)
ドアが空いてる部屋が一つある。
その部屋を覗いてみた。
辺りに血が飛び散っている。
窓が割られて風が強く吹き込む。カーテンが激しく揺れる。
資料も辺りに飛び散っている。
その中に、一つだけ見覚えのあるものがあった。
ちぎれているが、首輪についての資料だ。
それも、私がつけていたやつと全く同じもの...
深く深呼吸をして、首を触る。手が震えていた。
「なんでこんなこともできないんだ!」
「政府に反抗するつもり?」
ビリッとした感覚を感じた。
手が首に爪を立ててしまう。
そこに首輪はないなのに、爪が首に食い込む。
(ただの資料なのに、ずいぶんと怖がってるな私...
もう大丈夫だよ。大丈夫。)
手の力を緩める。資料を手に取った。
細かく首輪の設計が書かれている。
やはり鍵でしか外せないらしい。資料に一通り目を通す。
その鍵の設計は...ここより下は資料が破れていて、見えなかった。
資料を下に落として前を向く。
窓の外で、黒い影が横切った気がした。
ありえなくはない、殺人犯の可能性...
窓の外を覗いてみる。
さっきの影は既に消えていた。
……今の、気のせい?
いや、違う気がする。
……今はいい。レイ達を見つけないと。
フードを深く被る。屋根から降りる。
間違えて先程の部屋の窓の前を通ってしまった。
中にいる人にバレなければいいが...
少し緊張しながら、加速して少し遠めの部屋にいく。
ここもクロが鉄格子を切断してくれた。
ベッドが何個も置かれている。
埃はそこまで舞ってない。普段から使われている部屋なのだろう。
ドンッ。
クロが扉を突き破った。
「ちょっ、クロ!そんな大きな音だしたらバレるだろ。」
「この階に殆ど人はいないよ。みんな遺体もって下行っちゃったらしいし。
それに...」
廊下に出た瞬間、足音がした。
姿が見えない誰かが、
こっちに来ている。
フードを少しあげる。
(ADSのやつか...?殺意は感じないが..)
思わず、一歩下がった。
足音が目の前まで来る。
バッと誰かに抱きつかれた。
「もうっほんとにもうっ!心配したんだから!」
足音の正体はメイナだった。
クロがメイナを俺から引き剥がす。
「ほら、来たでしょ。」
「なんのことか、分かんないけど...
そーれーよーりー。
そっちは何か事件があったぽいけど。何があったの?」
「それはここを出てからにしよう。」
メイナとクロの手を取る。
その瞬間、
兵士達がまた戻ってきた。
この部屋の扉が壊れてることに気づいたぽいな。
こっちに近づいてくる。
慎重に兵士の横を通ってフェニーのいた部屋に向かう。
もう人はいないようだ。
メイナの手を離して窓から飛び降りる。
レイが窓から飛び降りた。
続くようにクロも飛び降りる。
分かって入るが、窓まで下を確認する。
よかった生きてる。
「メイナも飛び降りてこい。」
「え、無理無理無理無理。」
「大丈夫。受け止める。」
「ぇえ....」
階段をあがる音が聞こえた。
もう時間はないらしい
...窓から足を出した。
窓の縁を持ったままゆっくり体を下げる。
深く深呼吸する。
(受け止めてくれるから大丈夫、大丈夫、大丈夫。)
目をつぶる。
手を離した。
足場がない。
ヒュッと風に逆らう感覚を感じた。
不安を掻き消すように、ちゃんと受け止めてくれた。
恐る恐る目を開ける。
「……え?」
視界に映ったのは、レイじゃない。
「クロ!?」
クロがこっちを見て不敵に微笑む。
「レイじゃなくて残念だったね。」
やけに近い...
そのまま屋根まで登ったのは覚えてる。
衝撃、で色々よく覚えてない。
何だっけ、
印象悪い人が良いことしたら他の事がチャラになるみたいな現象。
トクン、心臓が高鳴る。
.....なんでだろう。クロのあの不敵な笑顔が、頭から離れない。




