5 壊れた忠誠
昨日の出来事からずっと考えてる。
ADS。
千年前の悪魔の災厄をきっかけに政府が作った組織だ。
あの時、赤い目の者が災厄を起こした。
それ以来、赤目は能力持ちだと恐れられ、差別されるようになった。
政府はその差別心を利用して赤い目の子供を預かって浄化する。
浄化という名目の拷問だろうがな。それじゃないとトラウマなんてできないだろう。
あの子達を政府から救う。
と同時に復讐相手の情報を手に入れる
...千年以上、全く情報がなかったんだ。
それに頼るのもありかもしれない。
だが、今彼女達とは敵対中だ。
救うには信頼を得ないと無理だろう。
こじんまりとした本屋。
椅子にもたれかかりながら考えを巡らす
...本棚の隙間からクロと目があった。
クロの口元が動く。
「き た よ」
その言葉に直感的に窓の外を見る。
ADSの人が歩いているではないか。人々はADSの人から離れるようにして歩く。
(そういえば俺達のこと狙ってたな。探してるのか?...昼は目立ちすぎる。夜まで隠れるか。)
悪魔についての本を再度読み出した。
時計塔の頂上。
街を眺める。街は地上の夜空みたいで綺麗だ。
「クロ。そっちも何も見つけれないか?」
「んーーー?見た感じいないね。でも、案外近くにいたりして。」
時計塔近くの屋根裏。
「キャーなんですけど。ヒッなんですけどー。金髪のやつがこっち見てるよ!!」
「お前の能力で気配消してるんだろ?ならそれは気の所為だろ。頭いかれてんのか?」
「気づかれてる。....お前はここにいろ。怪我がまだ残ってるだろ。メイナ。お前は来い。」
そう言ってルルは一足先に時計塔へ向かった。
「んじゃっ。」
続いてルルを追いかける。
ヒリッとする感覚が体を走る。
反射的に振り返った。ガキンッ剣がシールドに突き刺さる。
切れないのを感じとったようだ。すぐに後ろに下がった。
ADSの人達が来たようだ。
隣から殺気を感じた。
「クロ。」
目配せをする。クロと目があった。
殺気を収めてくれたようだ。
ADSの者の方向に目を向ける。
「俺はお前達を殺すつもりはない。話がしたい。」
「対話?何それ。そんなに死にたくないのー?」
ルルといたもう一人。
有無を言わずに俺に向かって踏み込んで来た。
腕から長いロボットアームのようなものが生える。
先端の形状が変化して銃が現れた。
「バンッ。」
爆風で空中に飛ばされた。
時計塔から落ちる。
もう片方の腕からもアームを出し、時計塔の壁に自らを固定した。
そこから連射を仕掛けてくる。
浮遊してどうにか攻撃をかわした。
「おお!すごいね。それでこの前も生き残ったんだ。」
(あの腕を切り落とせば)
攻撃をかわして懐へ潜り込んだ。
ナイフを剣に変えながら腕に斬りかかった。
銃の音が鳴り止み。
一瞬で彼女が消えた。
バンッと爆風が後方から飛んできた。
時計塔の壁を突き破り、
その中に飛ばされた。
カハッ。
(油断していた。彼女達も赤い目。俺と同じ能力者だった。)
アームを使い彼女も中に入ってくる。
月光に照らされて首輪が光っていた。
近くまで来る。頭に銃を突きつけられた。
「あっけないね。私がこれを引けば終わりだよ。」
「...何その目。」
ガキンッという音とともに銃が地面に叩きつけられる。
その隙に彼女を抑え込んだ。
「そうだったね。
シールドは魔法で、君の能力は不明なんだった。
さっき銃を剣で叩きつけたよね。剣が一人でに動いてた。
剣を操る能力ってとこ?」
「正しくは。剣に命令してるってとこかな。」
「....殺さないの?」
「言っただろう。俺は対話を望んでる。
君たちを政府から救ってやる。
だから悪魔の情報を俺にくれないか?」
「...無理。政府に反抗はできない。」
「その首輪が理由だったりする?」
「.....」
首輪に赤い点滅が出る。
この子の体がブルっと震えた。
「私はあんたに手を貸さない。情報なら自分で集めて。」
そう言いながら首輪に手を伸ばす。
カチ、カチ、と音が響く。
バチッと電気が流れた。
ヴッ
低いうめき声をあげた。体が震えている。
「私は政府に忠誠を誓います。政府の為に生きて政府の為に死にます。」
声が震えていた。
「私は政府に忠誠を誓います。私は政府に忠誠を誓います。」
その言葉だけをずっと繰り返していた。
刀で首輪を切ろうとする。
固くて切れない。それどころか電気は更に強くなっていった。
彼女は低く重いうめき声をあげていた。
刀を首輪から遠ざけた。
電気が弱くなる。
(壊そうとすると電気が強くなるのか。)
首輪に触れる。
俺にもバチッと電気が来た。
彼女の目は死んでいた。
ずっと同じ言葉、壊れた機械のようだった。
首輪の後ろに鍵穴のようなものがあるのに気づいた。
剣を小さな形状に変える。
鍵穴をどうにかいじった。
俺の手に走る痛みもだんだん強くなっていってく。
ガチャっ。
首輪が開いた。
電気の音もしなくなった。
彼女の瞳から大粒の涙がいくつもこぼれ落ちた。
次の瞬間
俺に抱きつく。
「……っ、う……」
押し殺すような声。
彼女は俺の服を強く掴み、子供のように声をあげて泣き出した。




