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消しゴムの重さ

作者: 白水
掲載日:2026/02/04

罪悪感をテーマに小説を書きました。


それは、教室の一番後ろの席で起きた、小さな事件だった。


 給食の前、机の上に置かれていた新品の消しゴム。透明で、角がきれいに立っている。ぼくはそれを見つめていた。自分の消しゴムは、もう黒く汚れて、名前も消えかけている。


 ほんの出来心だった。

 チャイムが鳴り、みんなが一斉に立ち上がった瞬間、ぼくは消しゴムを手のひらに隠した。胸がドクンと鳴った。誰にも見られていない。たぶん。


 給食の時間、カレーの味がしなかった。ポケットの中で、消しゴムがやけに重い。スプーンを持つ手が震えて、友だちに「どうしたの?」と聞かれて、首を横に振った。


 午後の授業で、先生が言った。

 「消しゴムがなくなった人がいます」


 教室がざわつく。泣きそうな顔の女の子が、下を向いていた。ぼくの胸は、ぎゅっと縮んだ。消しゴムは、ぼくの筆箱の中にある。角はまだ、きれいなままだ。


 放課後、誰もいなくなった教室で、ぼくは消しゴムを机の上にそっと戻した。何も言わずに帰った。先生にも、女の子にも、何も。


 家に帰って、手を洗っても、胸の奥のざらざらは消えなかった。

 消しゴムは返した。でも、盗んだ時間と気持ちは、どこにも返せない。


 その夜、布団の中で、ぼくは消しゴムの重さを思い出していた。あれは、きっと重さじゃない。罪悪感という名前の、目に見えないものだった。

これからも色々小説を書いていきます。

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