消しゴムの重さ
罪悪感をテーマに小説を書きました。
それは、教室の一番後ろの席で起きた、小さな事件だった。
給食の前、机の上に置かれていた新品の消しゴム。透明で、角がきれいに立っている。ぼくはそれを見つめていた。自分の消しゴムは、もう黒く汚れて、名前も消えかけている。
ほんの出来心だった。
チャイムが鳴り、みんなが一斉に立ち上がった瞬間、ぼくは消しゴムを手のひらに隠した。胸がドクンと鳴った。誰にも見られていない。たぶん。
給食の時間、カレーの味がしなかった。ポケットの中で、消しゴムがやけに重い。スプーンを持つ手が震えて、友だちに「どうしたの?」と聞かれて、首を横に振った。
午後の授業で、先生が言った。
「消しゴムがなくなった人がいます」
教室がざわつく。泣きそうな顔の女の子が、下を向いていた。ぼくの胸は、ぎゅっと縮んだ。消しゴムは、ぼくの筆箱の中にある。角はまだ、きれいなままだ。
放課後、誰もいなくなった教室で、ぼくは消しゴムを机の上にそっと戻した。何も言わずに帰った。先生にも、女の子にも、何も。
家に帰って、手を洗っても、胸の奥のざらざらは消えなかった。
消しゴムは返した。でも、盗んだ時間と気持ちは、どこにも返せない。
その夜、布団の中で、ぼくは消しゴムの重さを思い出していた。あれは、きっと重さじゃない。罪悪感という名前の、目に見えないものだった。
これからも色々小説を書いていきます。




