4.宏斗の証言
「三人目の容疑者は、江口宏斗。JASHのドラム担当です」
「凶器のロープは、彼の鞄から発見されたということだったな」
「はい。その件についても、宏斗さんには個別に証言してもらいました。その内容が、こちらです」
◇
――遺体発見当時の現場の様子はどうだったか
「大声が聞こえたので控室に行ったら、倒れている淳と、そのそばに篤志がいましたね」
――遺体の様子は
「俺が警察に通報したので、ちゃんとは見てないです。慎也さんが確認してくれていたと思います」
――発見までどこにいたか
「スタジオにずっといました」
――遺体が発見されるまでの間に、スタジオを出入りした者は
「淳が『疲れた』とか言って控室に行きました。しばらくして、慎也さんが様子を見に行ったんですけど、なかなか戻ってこないから、マネージャーに様子を見に行かせて。俺が『すぐ戻って来いよ』って軽くどやしたら、すっ飛んで行きましたよ。あいつ、気弱だから扱いやすいんですよね。で、その後、二人ともすぐ戻ってきました。順番? 慎也さんが先だったと思います。そのあと、俺は電話をかける用事があってスタジオを出ました」
――電話の内容は?
「あ……すみません。電話っていうのは実は嘘で、本当は淳の様子を見に行ったんです。ちゃんとみんなに言ってから行こうと思ったんですけど、慎也さんが『あんな奴ほっとけ』って、行かせてくれなくて。仕方なく、黙って出ました。それで控室に行ったら、誰もいなかったんです。入れ違いになったのかな、と思ってスタジオに戻ったんですけど、どこにも淳はいませんでしたね」
――篤志さんが遺体を発見したときの状況は
「いやあ、俺がうっかり飲み物のペットボトルを倒しちゃって、床がびしゃびしゃになって。篤志に掃除用具を取りに行かせたら、まさか、あんなことになってるとは」
――怪しい動きをしていた者はいなかったか
「やっぱり、篤志じゃないですか? 第一発見者ってのが一番怪しいって言うじゃないですか。あいつ、いつもおどおどしてるから、いざ何かやってても誰も気づかないと思うんですよね」
――鞄の中にあったロープについて
「あんなロープ、見たことも触ったこともないです! 誰かが俺に罪を着せようとして、勝手に入れたんですよ。嵌められたんです、俺は!」
――淳についてどう思っているか
「女のトラブルや事故もどうかと思いますけど、俺、実はあいつに結構な額の金を貸してるんですよ。全然返してくれないし、一回どこかでぶん殴ってやろうとは思ってました。当然ですけど、それだけですよ」
◇
Kは、持っていた手帳をパタンと閉じた。
「三人の証言は以上です。この中の誰かが犯人だと思うのですが」
「他に、犯人の可能性がある人物の情報はないのか?」
「他に……そうですね、たとえば、スタジオの掃除のおばちゃん、とか?」
探偵は「はぁ……」と深いため息をつき、鋭い視線で Kを問いただした。
「だから言っただろう。君はすべてを説明すべきだと。外部犯の可能性があるなら、最初からそう言うべきだ」
「え、いやあ、思いつきで言ってみただけです。そうですね、外部犯の可能性は考えなくて大丈夫です」
「やけにきっぱりと断言するんだな。本当に考えなくていいのか?」
「はい。スタジオにいた者による犯行と考えてください」
怪訝な表情を浮かべる探偵に対し、Kは意外にも落ち着いていた。
「いいだろう。外部犯ではないとして……だが、私が言っている "他の可能性" とはそれとは別のことだ」
探偵はそう言うと、真剣な眼差しで Kの顔をじっと見つめた。
「マネージャーは?」
「え?」
「マネージャーの証言は、ないのか?」




