3【木村 暖】
今日も保健室の窓の下でお弁当を食べている。でも隣に詩織はいない。
詩織はタレントとして活動していて、今日はお仕事だそう。四時間目が終わったあと、お迎えが来て下校してしまった。仕方なく一人でお弁当を食べて、膝枕がないからそのまま背もたれに寄りかかって寝る。
背中が斜めになって行って、寝にくいわと思っていたら、いつの間にか熟睡していた。
あら、いつもみたいに腕をさすってくれている。なんだか大きい手でポカポカと温かいものが流れてくるいい感じ。頭も撫でてくれるのね。
それに今日の膝枕はすごい弾力だわ。
「う・・ん」
目を開けると、木村の顔があった。
「おはよ、そろそろ昼休みが終わるぜ」
「ん・・木村?」
言われて体を起こす。
そっか、詩織はいないんだっけね。
「なに?」
「私の寝顔を見たのね」
目をこすりながらとりあえず言うべき文句を言ってみる。
「ああ、涎も出てたぜ」
「!もう!はずかし」
「お前、弁当が小さすぎるんだよ。もっと食わないと回復しないぜ?」
と言いながら、私の弁当袋を渡してくれる。
「分かってるんだけど、咀嚼する元気もないんだよね」
「はあ、なんでそんなに頑張るんかね」
木村 暖、こいつはそうやって私を心配するセリフを言ってくるけど、私が週末に何をしているかは誰にも言えないし言って無い。
言った所できっと頭がおかしいと思われるだけだから。
木村は少し変わった男子で、体育を見ていたらオールマイティに何でもできる。野球やサッカー、果ては器械体操もできる。小学生の時は器械体操をやってたらしいけど、あの通り体が大きくなりすぎてやめちゃったんだって。体が大きくなると出来ないスポーツって何のために取り組んでいるのか素人には分からないわね。
そんなスポーツ万能なのに、部活はしていないし、外のスポーツクラブ的なのにも所属していない。昼休みにサッカーに誘われてもはぐらかして参加しない。顔も良いし、スタイルもいいから、そのうちこの学校に出入りしている芸能事務所の人がスカウトするのじゃないい?
まあ、そんな時が来る時まで、この距離感のおかしい男子に付き合っておこうかとは思ってたりして。彼は成績もいいからいざと言う時分からないことを聞けるのよ。
私は教室に向かう廊下で大きく伸びをしながらあくび。
ふああ、
窓越しの緑からたっぷり地球人には感じる事が出来ないエネルギーを取り込んで、手首の機械を使って別な世界へ送り出す。
私の一番大事な仕事。




