11【パトロール隊員の苦悩】
俺は、木村暖。中学三年生になりたてだが、銀河パトロールの特別単独活動隊員をしている。どちらが本業かと言われれば、後者だ。
故郷の星では、高度な睡眠学習システムにより十歳で高等教育まで習得済みとなる。その後は希望する職業に合わせて、見習いの形で専門の内容を学びながら任務に就く。
親兄弟がそうだったため、俺は何の疑いもなく銀河パトロールに入隊した。今は単独行動をして、多角的な視点を学んでいるところだ。
俺は親の勧めで、銀河連合に加盟できるほど文明が発達してはいないが、治安が良くて食べ物のうまい太陽系の地球のとある国で学生をしながら、夜は太陽系を中心としたパトロールを主な任務にしている。
普段は亜空間に置いてあるカプセルに俺用の凡庸ジャイアントアーマーを入れて、オートで整備をしながら活動している。
地球の生活では、新しく入学した中学校で、同じクラスの黒石茉桜を見かけてから、彼女が気になっていつも目で追っていた。色が白くて、髪はつややかな黒髪で、いかにもこの星の日本人に見えていた。
しかし、他の地球人には無い大量の魔力が彼女の中で渦巻いているのが分かっていた。なのに、いつも月曜日になるとそれがすっからかんになっていて、水曜日までは本当に辛そうなのだ。
俺も訓練の一環で体験したことがあるが、魔素の循環が生命維持に必要な人種には魔力枯渇はまじで辛いのだ。それが毎週明けにその状態でぐったりしている。
いつも、昼休みに中山と保健室の窓の下で過ごしていた。そして園庭の豊かな緑から静かに魔力を取り込んで回復に努める様子を見かけていた。
あるとき、俺は銀河パトロールの図書サーバーで古い文献を見つけた。
俺たちが利用している、亜空間や次元をゆがめて転移する仕組みなどを開発して、かなりの文明を誇る恒星系が、五千年前にその輝かしい文明に蓋をして、動力源である魔力の蓄積に勤めていたことを。そして、そのころから、その星を統べるものが、緑豊かな地球に赴き、自然の魔力を自分たちの環境に時々持ち込んでいたことを。
確かに黒石の手首には俺と同じような、転移するためのデバイスが取り付けられていて、彼女が取り込んだ自然の魔力はその手頸から消えて行っているのが分かった。
でも、まさか、たしかに俺と同じ中学生だけど、その小さな背に星の運命を背負っているなんて。でもそんな大変さはおくびにも出さず、ひたすら静かに寝ていたのだ。
中学三年生になったある日、また保健室の窓の下で昼寝をしている黒石を見つけた。今日は中山がいないのか。ああ、だんだん体が傾いていっている。
俺は思わず隣に座り、そのまま黒石を膝に寝かせた。
くうくうと無防備に寝るその顔が可愛くて、目が離せなかった。磁器のようなつややかなきめの整った肌、長いまつげ、そして唇。触ってみたかったのをぐっとこらえて、いつも中山がやっているように、上になっている腕の二の腕を少しさすってやる。ついでにじわじわと魔力も送って。
魔力を送ったのが少し効いたのか、彼女の目が開く。
「おはよ、そろそろ昼休みが終わるぜ」
「ん・・木村?」
体を起こした黒石はじっと俺を見つめてくる。
黒い瞳の奥にちらりと魔力の線が見えた。それが凄くきれいでドキドキした。
ずうっと見たくて俺も視線が外せないけど、もう時間切れだ。
「なに?」
「私の寝顔を見たのね」
うん、ごちそうさまです。
「ああ、涎も出てたぜ」嘘だけど。
「!もう!はずかし」
それからすぐのこと、俺は週末兄貴に頼まれて、オプシティア星のある恒星系のパトロールに行った。
オプシティア星は銀河連合には加入していないが、大事な星なので守る必要があるそうだ。俺も、例の古い文献に出てきた星だったから、一度は訪ねたいと思っていたのが、さっそくかなうと思って張り切って出かけたのに、あろうことか俺がその星に厄介なやつを呼んでしまったようだった。
「ダン、すまなかった。銀河連合の担当にあんな奴を手配されるなんて」
「本当だよ兄貴、おかげで魔王は大変なことになったんだから。いま、あの人が居ないと、オプシティア星の魔力が不足するんだからな」
「ああ、なんとか様子を見て、リベンジできたらいいのだが」
「もう少し時間をくれ。彼らはまた銀河連合への信頼を失くしているんだ」
俺はデートのつもりで誘った約束が、星を背負った彼女のための大事なミッションになってしまったことに改めて気合を入れる。
お弁当、楽しみだな。
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