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6 ここでは一番下の妹です①

 訓練所に到着。さっそく先輩の皆様にご挨拶。

聖女と見習い(神殿での初儀式を果たしていない言わばデビュー前の方々は見習いと呼ばれる)を含む先輩方、その数十人名。


「今日からお世話になります、エリカ十四歳です。聖女ではありませんが、よろしくお願いします。」


「え? 十四歳?」

「聖女じゃないってなんで?」

「早くない? 魔力測定は十五からでしょ?」

「入学後最初の夏休みの神殿参りに間に合うように、訓練所入りは十五の春って決まりじゃないの?」


「それが、お家騒動での……。本当はこの子の姉に聖女の資格があったんじゃが、厄介払いに追い出されてのう……」

 

 ざわつく皆さんに、司祭様が事情を説明。


「ちょっ、なにそれー!!」

「酷くない?」

「……分かった、エリカはわたしたちの妹だ。今日からは、お前もここんちの子だ」

「うん、聖女とか別に関係ないよ。エリカもココで、一緒に頑張ろう」


 そんな感じで、わたしは受け入れられました。

 

 貴族の御令嬢とは言え、恵まれた境遇とは言い難い方が多かったようで……。

 聖女って、国力の維持に関わる重要なお役目のはずが、古臭い花嫁修業と思われるようになってしまった弊害かね……。

 

 あまり裕福では無いおうちや、後継者が優遇されているご家庭など、他所でタダで教育が受けられるならそちらにいけというご家庭が多いようで、それぞれ事情をお持ちの様です。 

 行き場の無い皆様は、保有魔力量が低いわたしでも、仲間として歓迎してくれました。


「こっちは弟のマー君です、マー君ご挨拶は?」

「こんにちはー。僕もねぇ、お姉さんと一緒に来たの。よろしくねー」


 元気におててをフリフリご挨拶……ってよく出来ましたけど、貴族令息の挨拶じゃないよ。それ。


「待って、この子、いくらなんでもちっさ過ぎない?」

「男の子がなんでここに?」

「……しかも、まともな貴族教育も受けさせて貰えなかったタイプじゃん……」


「エリカ嬢の弟君もお家騒動で、ついででおいだされてのう」


 司祭様の、身の蓋もない簡潔な説明。


「ひっどー、終わってる。マジあり得んわー」

「男児だから、余計にかよ……。かぁー、これだから貴族って奴はっ!!」

「怖っ。まぁどこの家もそんなもんか……。世知辛いねぇ」


 訓練所生活に慣れた皆様方には、一体感がある。

 仲良しなあまりか、話言葉がすっかり平民並にフランクになっているので、元平民のわたしとしても親しみやすい。マー君も応援係として受け入れてくれて、本当に有り難いよ。よかったね。マー君。



◇◇◇◇



 竜脈で披露する踊りは、魔力と感情を乗せて舞う特別な演舞。

 微魔力のわたしでも、感情という力を乗せた舞ならば習得出来るので、皆様と一緒に訓練に励む。


 感情を乗せて踊るって、意外と難しいね。

 創作ダンスみたいな感じで自分を解放するって言うけど、どう表現していいのかよく分からない。

 まずは先輩たちの真似から始めてる。

 なるほど、日頃から素直な感情の発露に慣れるために、ここでは砕けた話し方をされているのか。

 意識してなるべく大げさに表情にも出しているらしい。

 聖女って、リアクション芸人の一種なのかな?

 外では感情丸出しにならないように、注意しなきゃだね。

 

 ヒトやモノに当たらない感情表現なら、わたしも、頑張ります!!

 

 指先や足の運びを意識して、全身を使うと、スッキリするね。

 前世の人を参考に、ヨガっぽいポーズをニワカで取り入れてみたりもする。


「みんなの応援をしてねって、司祭様がね」


 マー君は魔力はいっぱいあるけど、危ないから応援係が、やっぱりいいね。

 

 十四歳のわたしなら十代後半の皆さんと比べても、あまり身長も変わらないんだけど、九才のマー君では小さ過ぎて、埋もれちゃうからね。


音出す系の応援は、集中力を妨げるので、鳴り物は使わずに、静かに見守っててくれる。 


 訓練の合間に、おててをぱちぱち元気に拍手をしてもらえると、やる気が漲るよ!!


 せっかくだから、団扇にコメント書いて、見守ってもらおうかな……。


◇◇◇◇



「僕ねー、お姉さんのために神殿の魔法陣を解析したんだ。感情エネルギーと魔力のエネルギーを混ぜ混ぜして、龍脈の要石に注げば良いんだよね。それなら魔法陣をもっと大きくして、演舞するお姉さんたちだけじゃなくて、客席のみんなからも、貰うようにしたほうが効率的じゃないかな?魔力が少ない人たちでも、たくさんの人の力を合わせれば良いし、感情エネルギーは誰でも放つことが出来るからね」


 うん? 奉納の儀って、そういう仕組みなの?


 閉ざされた神殿で、奉納者だけが放つエネルギーよりも、一般にも舞台を公開して、客席からも貰えれば、そりゃ効率が、良さそうだけれども。


「でも未婚の乙女の純粋なエネルギーって奴じゃないと、駄目なんじゃなかった?」

「それは私的なエネルギー活用と、奉納者が権力を握るのを、防ぐための理由だよ」


 奉納の儀で、エネルギー全体の主導権を握る者を、舞台の上の奉納者に設定しておけば、それを観覧する客を支援者として、そこからもエネルギーを集めても、問題ないそうだ。


 神殿は各地の竜脈の要石、教会は分社、ならば、各地の神殿と教会にもっと定期的にエレルギーや魔力を集めたら? 

 流れが安定する上に、聖女の負担も減るのでは?


 客席には魔力持ちの貴族にこそ、座って欲しいものだが、感情エネルギーならば平民からも広く集められる。

 国力向上のため、見に来てくださいと言えば、全く人が集まらないことも、無さそうだよな……。


 これはイケるのでは?


 誰も知らないところで、ひっそりと儀式を続けていても、認知不足で重要性までもが意識されなくなって、今ではすっかり担い手不足。

 

 こんな流れは変えないといけないよ!


 司祭様と先輩たちにも話を共有した。

 やはりここ最近の人手不足から、いつエネルギー不足に陥って、結界の崩壊が生じても、おかしくはない状況らしいので、この提案は満場一致で受け入れられた。

 

 そうとなれば、いざ変革の時だ。レッツダンシングゥー!! 


 マー君も、頑張るお姉さんたちを、応援してね!



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一話完結、異世界あるあるブラック大喜利!!
「黄薔薇姫と悪魔執事 世界よ、もっとわたくしに嫉妬しなさいっ!!」
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