表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

10 お姉ちゃんを虐めるなんて許せません

 学園の新一年生となったキャサリン先輩は、学園では大変らしい。


 セイガ内での絶対的エースも、爵位重視の貴族社会縮図である学内では非力なのだ。


 子爵令嬢の先輩が、無理を迫られたりしないよう、聖女様親衛隊という名のキャサリン様公認ファンクラブの皆様が、お守りしていたのを、逆ハーレムと見なされてしまい、無茶苦茶叩かれているんだって。

 

 親衛隊には、ちゃんと女性の方も、いるんだけどね……。

 

 なんと、第三王子殿下までもが、キャサリン先輩の大ファンであったらしく、殿下は生キャサリン先輩との初遭遇の際、興奮のあまり、ついポロっとサインを強請ってしまったらしい……。


 それを、お断りしていた所(学内では活動していないのと、抽選でのみ入手可能な特別感を無くさないために、穏やかなお断りを徹底している)を目撃されてしまい、先輩は、周囲の女生徒たちからの顰蹙を買ってしまったんだ。

 

 セイガの方針を理解されている殿下は、即座に発言を撤回なされたのだけど、それも王族に頭を下げさせた不届き者と見なされて……。


 もうヤバヤバのヤバですよっ!!


 王族の威信VS聖女の名誉ですからね。

 絶対に触れちゃいけない特級呪物的なデリケートゾーンですよ。この問題は。

  

 当事者たちにとっては、全然大した出来事では無い、些細なこと。

 むしろ放っておいて欲しいぐらいのものなのに、後援者気取りの声デカさんたちによる、代理戦争が始まってしまったのだ。

 

 なんて、馬鹿げた聖戦なんだろうか……。


 現在は、学園上層部の大人が介入して、事態の鎮静化を図っているところらしい。


 殿下も軽率だったかもしれないが、自分の通ってる学園に推しが来たら、ついついはっちゃけてしまうのも、分かるんだよね……。

 

 権力を笠に着て、サイン寄こせってごり押ししたのなら、そりゃ最悪だけど、即座に訂正したにも関わらず、こんなに大事になってしまうとか、むしろ針の筵だろうに。


 王族の軽口は、全く軽く済まされなかったよ。

 お可哀想に……。

 

 殿下が謝れば謝るほど、キャサリン先輩は立場を悪くされてしまうから、距離を置くのが一番なんだけど、王族があえて無視しているってなると厄介だから、その塩梅も難しいらしい。


 推しの顔に泥塗った上、アンチが大量発生して、王族が国力向上の妨げになるとか「そんなつもりはなかったのぉ」が過ぎるよ……。


 もう本当に、オーバキルだから、やめてさし上げて。


 先輩も困っているんだけど、悪いのは外野だから、炎上が落ち着くまで、静かに待機することしか、出来ないんだ。


 ガチのキャサリン親衛隊は、なんとか統制できているんだけど、セイガファンの中から、おバカさんたちに煽られた、不敬発言が飛び出ては、炎上がますます拡大してしまうんだ。

 

 大人たち、頼むから、早く何とかしてあげてくれ……。



◇◇◇◇


 

 聖女は貴族家の子女が担う役割なので、昔から在校生が聖女になるなんて、当たり前のことだったのにね。


 セイガの活動が始まってからも、卒業された青騎士四人組と、現三年生の元神官三人組と二年生のカトリーナ先輩らは、現役の学園生だったんだよ。

 

 活動への認知が高まっていく中で、自然と信者さんたちが取り巻き化して、周囲との軋轢を生まないように、去年から協力してくれていたらしい。


 だけど、キャサリン先輩クラスともなると、人気が格別なので、やっかみも多くて、因縁をつけられることだって、多くなってしまったんだろうね。


 先輩たちは、わたしにとっては、皆お姉ちゃんで、その中でも同年度に訓練所入りしたキャサリン先輩は、一番年の近いお姉ちゃんなんだ。


 何でもできるようでいて、キャサリン先輩は天才ではない。

 演技における嗅覚のようなものには本当に優れているんだけど、あとは全部本人の努力の結晶なんだ。


 あの人が無茶苦茶努力してきたのを、わたしはずっと横で見てきたんだ。


 いつも先頭に立って、わたしたちを引っ張ってくれたキャサリン先輩は、声援も批判の声も、人一倍浴びてきた。


 叩かれ慣れてしまったからって、傷つかないわけではないんだよ。

 

 変わってあげることも出来ないし、出しゃばったからって、解決には、繋がらないことも分かってる。

 それでも、なんにも出来ないのは、やっぱり悔しいんだ。


 キャサリン先輩は、ぶっちぎりのアイドル聖女だからって、普通の女の子でもあるんだから。


 先輩の放つ輝きと、感情エネルギーとを汚す奴らなんて、みんなみんな滅びちまえばいいんだ!!



◇◇◇◇



 怒りのあまり、うっかり忘れていたが、魔術師チームのポンコツ担当クララ先輩も同じく一つ上だった。


 クララ先輩はさ。なんというか……、お姉ちゃん感が薄くてさ。

 

 いつもみんなから、餌付けされるように、オヤツ貰ってて。

 食欲ないって言う、キャサリン先輩の分まで受け取って、がっついてたから、さすがにスーザン先輩に、どつかれてたよ。


 クララ先輩の、どんな時でも変わらないマイペースさには安心するし、だからこそ、あれで、キャサリン先輩の親友なんだけどさ。

 

 クソガキメンタルで、自己投影からの勝手な共感をして、怒り狂っているわたしは問題外として、先輩たちの気遣いや、慰めの言葉よりも、ああして普段通りに、寄り添えるクララ先輩こそが、キャサリン先輩的には良いようなので、あれはあれで、アリなのだと思う。


 うーん。お姉ちゃんというより、珍獣枠だけど、クララ先輩こそが本日のMVPです。



◇◇◇◇



 来年からのわたしの学園生活は、一体どうなるのかな……。


 うちの保護者会の皆さんって、ちょっと特殊だけど、頼りになるのかな。


 「お兄様として、エリカ様の肉壁になりますからね」とか言って、マッチポンプ的に火種をつけて回る系の狂犬は、どうかおりませんように。


 本当に、本気でお願いします。

 そんなお兄様やお姉様なんて、エリカはガチで嫌いになりますからね。

 


「マー君、学園って、何だかいろいろ大変そうだね……。お姉さんやっていけるのか、不安になって来ちゃった」


 マー君に訓練所で独りでお留守番させるのも、心配だしなぁ……。


「お姉さん、そんなに寂しいのなら、僕もついていってあげようか?」


「え? そんなのできるの?」


 学園って、学童保育的なのあったっけ?

 いやマー君って、そもそも学童なの?

 この国、義務教育とかないんだけど。

 学園は、裕福な一部の平民と貴族籍のある者ならば、入学可みたいな学校だよ。


「うん、飛び級すればいいんだよ!」


 な、なんだってー!


 わたしは知らなかったけど、学園には飛び級制度もあったらしい。

 そんな訳で、学力的には何の問題もないマー君と、一緒に通うことにした。


「えへへ、嬉しいなぁ。マー君がいれば、お姉さんは百人力だよ!」


「よかったね、お姉さん。僕もお姉さん欲しがられて、嬉しいよ」


 マー君! 本当のことだけど、なんか穢れたお姉さんの耳には不謹慎な物言いはやめてっ―!!


『必要とされて嬉しい』ぐらいの言い回し、出来るでしょう。


 クラス分けテスト対策の、お勉強を教えてくれるマー君なら、全然余裕でしょ。

 

 お馬鹿なお姉さんのお仕置きだからって、お尻叩きはやめてー!

 持ち物に名前を書くのは良いことだけど、お姉さんのお顔に書くのはやめてー!

 お願いだから、もっと目立たない所にしてちょうだい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作コメディがあります!!

一話完結、異世界あるあるブラック大喜利!!
「黄薔薇姫と悪魔執事 世界よ、もっとわたくしに嫉妬しなさいっ!!」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ