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闇に染まった世界に光を灯す  作者: 夜宵 煌
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仕事の内容

 この世界は負の感情に飲まれ、色鮮やかさは失われてしまった。かつての世界の姿は見る影もない。


 命芽吹く大地は黒く染まり、青く輝く海は濁り、世界を照らす太陽が闇に飲まれ、月も赤く染まった。作物も育たぬこの地ではかつての姿を持つ生き物はほぼ消え失せた。


 今、この世界で生きる生き物は、負の感情に飲まれて姿を変えた生き物と、この世界でまだ色を残す、僅かな人間達だけだ。ほとんどの人間もまた、負の感情に飲まれてしまった。


 負の感情に飲まれた世界には、暫くして不思議な力が宿るようになった。その力の名は「プロセフィ」と「アティア」


「プロセフィ」は、全ての人間に宿り、強力な能力を扱う元となる。能力は多種多様で、ある者は風を起こし、またある者は作物を実らせることができる。そして、能力の中には「光」という浄化する能力もあった。そして「アティア」は、負の感情に飲まれた全ての生き物に宿る、「プロセフィ」と真逆の性質を持ちながら、似た強力な能力を扱う元となる。


 負の感情に飲まれた生き物は例外なく、心臓部を壊さなければ何度でも再生する。そのため、人間たちはそれぞれの都市で壁を築き、身を守るようになった。さらに、「プロセフィ」の扱いに優れた人々で軍を編成し、日々訓練や調査を行うようになった。マララスもその内の一つだ。




―ある日の昼間


 朝でも昼でも相変わらず暗い空の下。人口灯によって明るくなっている軍の訓練場に、Yシャツに黒いブレザー、スキニーパンツにレースアップ・ブーツ姿の一人の少女が入ってきた。年齢は18歳くらいだろうか。漆黒の髪を頭の高い位置に結び、吊り上がった目にロイヤルパープルの瞳をしている。


 彼女の名前はリリア・シホニー―軍の3番隊隊長を務めている人―だ。


 リリアは訓練場に入ってくるなり詠唱した。


 「世界を照らし炎よ、弓矢となりて我が手に収まれ」

 リリアが詠唱し終えた瞬間、周りに6つの火の玉が現れ、それが弓と5本の矢となると、リリアの手に収まった。そして、真直ぐに60m離れたところにある5個の的の中心にそれぞれ放たれた。速さは秒速70m。的は矢が貫く瞬間に炎が燃え上がって灰になった。


 因みにこの的は特殊なため、少しすると地面から新たに的ができる。


 「流石ですね」

 リリアの完璧に炎の矢を制御する能力に、周囲にいた人達が歓声を上げる。その中に居た、紺青の髪が毛先にいくにつれて紺藍(こんあい)になっている、シアン色の瞳をした少女も思わずといった様子でそう呟いた。


 「ミリスだな」

 そして、その呟きを拾ったリリアがその少女の方に目を向けた。


 彼女はまさか聞き取られるとは思っていなかったのか、ビックリしていた。(当然だが)


 彼女は2週間前に仮入団として3番隊に配属された訓練生のミリス・ヴィリートだ。


 訓練生:軍人育成学校の生徒のこと。


 軍人育成学校:軍人を目指す人々を育成する学校。入学試験で一定以上の成績を納めれば、年齢を問わずに入学可能。


 「今日はご指導お願いします」


 「そうだな。まずはどこまで出来るかを確認する。お前の能力で的を貫け」


 「はい!世界を潤す水流よ、槍となり敵を貫け」

 ミリスが詠唱すると、周りに水流が生まれ、それが槍の形になり、的に向かって放たれた。速さは秒速20m程。水の槍は的を貫いたが、僅かに中心から外れている。


 「すみません、中心を貫けませんでした」

 ミリスは中心を確実に貫けると思っていたのか、少し焦った様に謝った。


 「いや、見事だ。だが、少し槍を放つ瞬間乱れたな。遠距離攻撃の成績はトップだと聞いていたが?」

 しかし、リリアはほぼ中心を貫いた腕前を褒めた。そして、中心を外れた原因を言った。


 「その、ええっと、少し緊張しまして。リリア隊長にその、憧れてたので・・・」

 ミリスはそう乱れた原因を言った。それに、少し頬が紅潮している。


 「乱れは能力を持つ全ての生き物に起こり得る。だが、直情的な負の感情に飲まれた生き物達には無縁だ。その生き物達との戦闘時、不安や緊張、恐怖に己の感情に乱されずに能力を使う必要がある。乱れれば己の命や仲間の命にが失われる可能性が高まる」


 「えっ・・・・・と?」

 リリアは淡々とそう説明した。だが、イマイチミリスには理解できなかった様だ。


 「リリアは相変わらず端折り過ぎなんだよ。もっと分かりやすく言ったら?」

 リリアの直ぐ左隣から男の人の声がした。


 声がした方を見ると、Yシャツに鈍色のノーフォーク・ジャケット、チノ・パンツでハーネス・ブーツ姿の、黄檗(きはだ)色の髪に天色(あまいろ)の瞳のかなり整った顔立ちの青年がいた。リリアよりも背が高い。


「シルクスか。私は分かり易く言ったはずだ」

 彼はシルクス・ドミローグ―リリアの幼馴染で同期の1番隊隊長を務める青年―だ。余談だが、結構モテる。


 「シルクス隊長!珍しいですね、訓練場にいるのは」


 「まぁそうだね。リリアが珍しく的を燃やしてたから来たんだ」

 ミリスが言うように、シルクスが訓練場にいるのはかなり珍しいのだ。リリアが居ればかなり高確率で現れるが。


 「珍しく的を燃やして・・・?」


 「シルクス、貴様は邪魔でもしに来たのか?私が訓練場に来る度に邪魔するようならと軍法違反で殺してやろうか?」

 リリアはミリスの疑問は放置して、周りに複数の火の球を生み、それが弓矢の形を作ると至近距離でシルクスに狙いを定めた。


 「ちょっ、隊長!?えっ!」

 ミリスは慌てた。が、当の本人や周りの人達に、慌てた様子はない。というか、シルクスに至っては右手で口元を押さえて肩を震わせている。


 「ははっ」

 耐えきれなかったのかシルクスが吹き出した。


 「何が可笑しい?」

 それにリリアの声が低くなる。


 「いや、ミリスが慌てているのが面白くて。ククっ」

 余程ミリスが慌てているのが面白かったのか、シルクスはまだ笑っている。


 まぁ無理もないだろう。シルクスがリリアを怒らせ、というか機嫌を損ね、リリアが炎の弓矢を構えるのは、本隊に所属している彼らにとってはよくある見慣れた光景だが、仮入団状態のミリスは初めて見るのだから。それに、リリアがシルクスの至近距離に炎の弓矢を作った=放つ気はないと知っているのだから。


 「ミリス、慌てる必要はないよ。ミリスはまだ仮入団で知らないかもしれないが、これはいつものことだから」

 一頻り笑ったシルクスがミリスにそう説明した。


 「えっ!?これがいつものこと?そうなんですか、隊長?」

 シルクスの言葉に若干ミリスは呆れた。が、本当なのかをリリアに確認すると、少し溜めがあったが肯定された。


 「・・・そうだな。それに、私が自分の判断だけで処罰するわけがない。・・・まぁ、本当に殺してやろうと思ったことは1度や2度ではないが。―それにしても運が良いな、ミリス」

 リリアはそう言うと炎の弓矢を消した。


 「どういうことですか?」


 「其の儘の意味だ。今は訓練場に女の隊員は皆無だろう?此奴は無駄に女にモテるからな。女の隊員が居れば確実に邪魔になっただろう」

 リリアはミリスの疑問に答えたが、ミリスにはまたしてもリリアの言ってることが理解できなかった。


 「簡潔に言うと、俺が居ると能力訓練の邪魔だって言いたいんだよ。で、さっきのは、感情の乱れはよくある事だし気にしなくていい。でも、少しでも負の感情が表に出ても、能力に影響が出ないように訓練しろってこと」

 リリアのシルクス曰く端折り過ぎた説明を、シルクスが簡潔に説明した。


 リリア達がそんな会話をしていると、訓練場に道を挟んで真正面に位置する、軍人専用の病院に物凄いスピードで複数台の車が入って行った。車が止まると運転席から直ぐに人が出てきて病院に入って行った。しばらくすると、中に入って行った人は、大量の担架と医者と共に出て来た。どうやら重傷者が大量に出た様だ。


 「あれは・・・5番隊か?最近多いよな、大怪我する奴。なぁ、リリア」

 シルクスが同意を求めるようにリリアに言う。


 「あぁ。それに死者数も増加傾向にある」

 シルクスの言葉をリリアも肯定する。


 「そうですか?軍人である以上日常茶飯事だと思いますけど」


 「確かにそうだが、それは基本的に新入りやNo.の低い者達だ。だが、さっき病院に運ばれていった者達は違う。異常事態が起こっていると考えるべきだ」

 ミリスが言うように軍人である以上、重軽傷を負うことは日常茶飯事だ。だが、“最近の状況”を考えると怪我人が増加傾向にあることは不自然なのだ。


 「そうですか」

 3人はしばらく病院に運ばれて行った人達について話していたが、終えると其々の仕事に戻っていった。




―翌日


 再び訓練場でリリアはミリスに指導していた。

 リリアはある程度ミリスを指導し終えると、ミリスと別れて別の訓練場に向かって行った。しかし、シルクスが声を掛けて来たことで結局訓練場に行くことは出来なかった。


 「リリアー」


 「貴様、また私の邪魔をしに来たのか?」

 リリアはシルクスに声を掛けられたことで不機嫌になった。


 「いや違うよ、リリア」


 「じゃあ何の用だ?」

 リリアが低い声でそう返す。実際、リリアは用がないならさっさとどっか行けという雰囲気を出している。


 「ロイド団長が呼んでたよ。団長室に来てくれってさ」


 「そうか」


 「じゃあ、今日はそれだけ言いに来ただけだから」

 そう言うとシルクスも去っていった。


 リリアも直ぐに団長室に向かって行った。

 


―団長室


 リリアは、団長室に着くと直ぐにノックをすると、「入れ」とすぐに聞こえた。


 「失礼します」

 リリアが部屋に入って来ると、Yシャツにループ・タイの姿で、シャルトルーズイエローの髪にエメラルドグリーンの瞳をしている、精悍な顔立ちの男性が座っていた。


 彼が座っている机には紙が山積みになっていた。


 彼は読んでいた紙を脇に置くと、リリアに顔を向けた。


 彼はロイド・レイジス。マララスの軍の団長だ。


 「3番隊隊長、リリア・シホニーです」

 名を名乗り、会釈をする。


 「来たか。リリア、来てもらって早々にすまないが君の隊のNo.10以上にギャルルの討伐を頼みたい」

 ロイドはそう言ってリリアを読んだ理由を話した。


 ギャルル:犬が負の感情に飲まれたことで姿を変えた生き物を指す。大きさは個体差があり、大きいものでは2mを超す。世界中におり、常に五匹程度で行動していることが多い。また、縄張り意識が強く、よく縄張り争いをしている。しかし、負の感情に飲まれたことで再生力が上がったり、攻撃速度が秒速30mだったりと、かつてとは比べ物にならないほどの力を得ているため勝敗は滅多につかず、周辺の被害のみ甚大である。


 「ギャルルの討伐ですか?それは承知しましたが、何故No.10以上なのですか?No.20以下で十分だと思いますが」

 リリアはかなり不思議そうだ。それもそのはずである。隊員につけられたNo.はそれぞれの隊に所属する者の実力順であり、ギャルルの討伐程度にNo.10以上の者たちを使うのはまずありえないことだ。


 No:功績や戦闘能力を元に団長が決めている。ただし、隊長は1番隊から6番隊で実力順になっている。そして、それぞれの隊の隊員はその隊内での実力順である。


 「通常ならそれでいいが、今回は例外だ。リリアも最近怪我人や死者が増えているのは知っているだろう?今回送った5番隊が確認した様だが、ギャルルがアルフィアの森で100匹近くの群れを成しているらしい。それと、ギャルルの討伐と同時に原因の調査も行ってもらいたい」


 「承知しました。それでは、明日の早朝にアルフィアの森に向かいたいと思います」

 ロイドの言葉にリリアは納得し、早急に対処する必要があると思い、そう言った。


 「あぁ、気を付けて」


 「失礼しました」

 リリアはそう言うと会釈をして部屋から出て行った。



 リリアは団長室から出るとそのまま本部の放送室に向かって行った。


 放送室に向かっている途中、リリアがギャルルが群れた原因として考えられるものの候補を挙げていると、本部から出てきた誰かにぶつかりそうになった。


 「失礼、考え事をしていたもので」

 リリアはそう言うと相手の顔を見た。するとリリアは明らかに嫌な顔をした。


 「そんなに考え込んでどうした?団長に何か嫌なことでも言われたのか?」

 ぶつかりそうになったのはシルクスだったのだ。しかも開口一番にそんなことを言ってきたのだ。


 「黙れ。何故団長が私に嫌なことを言ったという発想になる?仕事の話をしたという発想にはならないのか?」

 リリアは怒気を込めてそう言う。


 「まぁまぁ。それで、仕事ってのはどういう内容?」

 リリアを宥めるようにシルクスがそう言うが、リリアの機嫌は治らない。が、質問には答えてくれた。


 「はぁ、群れたギャルルの討伐だが?」


 「群れたギャルルの討伐?わざわざリリアに?・・・・あっなるほど、それで考え込んでんのか。ギャルルごときの討伐に何故わt・・・・っ痛!」

 そう言っていると、シルクスの右の脛に突然痛みが走った。


 突然の痛みにシルクスは笑みを消し、苦悶の表情を浮かべて脛を抑えている。一方、リリアは脛を抑えているシルクスを見下ろし、それ以上喋ったら殺すという無言の圧力を与えている。シルクスの脛を襲う痛みの原因はリリアの蹴りなのだ。


 「リリア?すげぇ痛いんだけど?」


 「当然だ。強めに蹴ったからな」

 リリアはさも当然とばかりに言っているし、顔には青筋が浮かんでおり、明らかにキレているのがわかる。

 「じゃあな・・・・そこで痛がっていろ」

 それだけ言うとリリアはさっさと去っていった。


 「全くリリアは・・・・はぁ」

 そう呟くとまだ痛みが脛を襲っていたが、シルクスも立ち上がって本部から去っていった。



 リリアは放送室に着くと『3番隊のNo.10以上の者は会議室に集まるように』とだけ放送し、会議室に向かって行った。




―数分後


 リリアが会議室の扉を開き中に入ると既に全員が揃っていた。


 会議室は楕円形の机を中心に、それを囲むように椅子が16脚等間隔に置いてある。


 「隊長、何で急に呼び出したんですか?」

 リリアが入って来るなり質問してきたのは、扉の近くに座っていた、Yシャツに濃紺のトレンチ・コート、漆黒のオックスフォードバックスにコンバット・ブーツ姿の、ノワールの髪で左側頭部の髪を撫でつけており、チャコールグレーの瞳をしている、No.5のクロル・ジェイスだ。


 「仕事の話だ。明日の早朝にこのメンバーでアルフィアの森に向かう」


 「明日ですか〜?随分と急ですね〜」

 そう言ってきたのは、クロルと席を一つ空けて座っている、Yシャツに薄墨うすずみ色のイートン・ジャケット、深川鼠ふかがわねずみ色と千歳緑で膝丈のハーフ・スカートにコンバット・ブーツ姿の、ライムグリーンの長髪が波打ち、フォレストグリーンの瞳をしている、No.10のヒメリア・ルクイアだ。


 「それになんでアルフィアの森なんだ?その森は最近殺る必要がある奴らが減ってきてるとこじゃねぇか。俺達が行く必要があるとは思えねぇ」

 そう言って不満を漏らすのは、一番奥に座って足を組んで机に乗せている、Yシャツに黒橡くろつるばみ色のロングコートに漆黒のスキニー・パンツにジャンプ・ブーツ姿の、ガーネットの髪を束ね、深紅の瞳をしているNo.1のリオル・ヴァライスだ。


 「リオルがそう言うのも無理はないが、今回の仕事はギャルル約100匹の討伐とそれだけの数が群れた原因の調査だ」

 リリアがそう言うと一気に会議室がざわついた。


 「はぁ?あり得ねぇだろ、そんだけの数のギャルルが争わずにまとまってるってのか?」

 リリアの言葉に一番に反応したのは、クロルの正面に座っている、Yシャツに漆黒のライダース・ジャケット、勝色かちいろのドレーンパイプ・パンツにトラックソール・ブーツ姿の、ミッドナイトブルーの髪に、サルビアブルーの瞳をした 、No.8のルイス・ロレットだ。


 「ルイス、うるさいぞ。とても耳障りだ。それに隊長がギャルル百匹ぐらいでNo.10まで揃える訳がないだろ。原因の調査と討伐の方が厄介だと少し考えれば分かるだろう。・・・・そうですよね、隊長?」

 そうルイスへの毒舌混じりにリリアに聞いてきたのは、ルイスの右隣に座っている、鉄黒のモーターサイクル・コート、墨色のチノ・パンツにサイドゴア・ブーツ姿の、漆黒の髪で顔の上半分を隠している、 小柄なNo.3のネロ・ルティカだ。


 前髪の隙間から覗いている茜色の瞳はルイスを睨んでおり、不愉快だということがよくわかる。


 「ネロの言う通りだ。ギャルルが100匹以上群れることが“珍しくなければ”No.10まで集める必要はないだろうな」


 「隊長は何故ギャルルが100匹以上の群れを作れたと思っているのですか?」

 そう聞いてきたのは、ネロの右後方で壁に寄りかかって腕を汲んでいる、Yシャツに濃紺のスペンサー・ジャケット、藍鼠あいねず色のチノ・パンツにキャバリエ・ブーツ姿の、竜胆(りんどう)色の髪に青藤(あおふじ)色の瞳をした、エリス・イレーナだ。


 「・・・・お前が考えているのと同じだ。それ以外の可能性は限りなく低いと思っている」

 エリスの問いにリリアは、エリスをチラッと見て微かに口角を上げてそう言うのみで、明確には答えなかった。


 しかし、リリアの返答を聞いてエリス等のNo.3以上の者たちは理解したようだ。が、それ以外の者たちは理解できなかったようだ。


 「あの、すみません、どういうことですか?」

 そう聞いてきたのは、リオルから右に2つ席を空けて座っている、Yシャツに鉄紺のメス・ジャケット、縹色はなだいろのフィッシュテール・スカートにタイツとサイハイ・ブーツ姿の、胡粉(ごふん)色の髪が毛先にいくにつれてフォゲットミーノット色になっている、オリエンタルブルーの瞳をした No.4のスノール・エフィルだ。


 「負の感情に飲まれた人間が関わっている可能性が高いってことだ」

 スノールの問いに答えたのはリオルだ。


 「なるほど〜。でも、負の感情に飲まれた人間が関わっていることなんてあるんですか〜?」

 リオルの答えに他の隊員たちも一応理解したが、それでも疑問があり、ヒメリアが誰にともなく疑問をぶつけた。


 「あるぞ。滅多にない事例だがな。だが、最近増加している。覚えておけ」

 ヒメリアの問いにはリリアが答え、ついでに忠告もした。


 「まぁ、理性が残ってなければ割と苦労せずに討伐できる。だが、今回は理性が残っていると見るべきだがな」

 リリアはそう補足した。


 「そうでしょうね。それに、負の感情に完全に飲まれるのに人間は時間がかかりますし、でなければギャルルが100匹以上群れるはずがありませんからね」


 「エリスの言う通りだ。・・・・他に質問とかがなければ解散にするが、良いな?」

 そう言ってリリアは全員を見回し、誰も何も言わないのを確認すると会議室から出ていった。

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