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温泉ツーリング同好会へようこそ 2nd  作者: 秋山如雪
第6章 美人の湯
30/43

30湯目 紀州の屋根

 そこから先は、一気に山道になった。


 道の駅龍神を出て、日高川という川を見ながら、川沿いに国道371号を辿るが。途中からぐんぐん山道になり、どんどん登って行く。


 後で知ったことだが、先程行った龍神温泉から高野山までの約42.7キロのこの道を通称「高野龍神スカイライン」と呼ぶそうだ。


 山の中をひたすら駆け抜ける上に、信号機も交通量も少ない、おまけに路面状態もいい。


 つまり、バイクで走るには最高の道で、しかも真夏のこの時期、標高が高いこの辺りは、かなり涼しかった。


 いつの間にか、先頭を走っていたまどか先輩を追い抜いた、花音ちゃんが先頭を突っ切り、2番手には彼女に追随するようにフィオが続く。


 以下、まどか先輩、琴葉先輩、最後に私となっていたが。


 いくら快適な道で、スピードを出したいとはいえ、先輩をあっさりと追い抜いていく花音ちゃんには、呆れを通り越して感心する。


 だが、スピードを出したくなる気持ちもよくわかるような道だった。


 約400ccはあるこのバイクでは、大型ほどの余裕はないが、それでも坂道を上るのにさほど苦労はしないし、途中で遅い琴葉先輩自らが道を譲ってくれたお陰で、私は彼女に右手で礼の合図を送り、先に進んだ。


 そのまま同様に、坂道でスピードを殺されていたまどか先輩のSR400に並び、彼女もまた道を譲ってくれたので、同様に右手で礼の合図を送り、結局は私は3番手に上がっていた。


(すごい快適!)

 実際、普段なら考えられないくらいに飛ばせる道だった。


 こんな田舎、警察のパトカーも滅多に来ないし、ついつい法定速度以上のスピードが出ていたが、油断すると、カーブで曲がり切れなくなって、事故る可能性はある。


 そのため、慎重かつ力強く、私はアクセルを開け、ブレーキングで制御して進んだ。


 出発からおよそ30分。


 だいぶ涼しくなるくらい、標高が高いと思われる地点に来ていた。

 見ると、右手に、不思議な四角形の形をした、高い塔が建っていた。


 そこが「道の駅ごまさんスカイタワー」と呼ばれる目的地で、元々、先輩たちに指示された場所だった。


 そこの駐車場に進むと、もちろん花音ちゃんとフィオのバイクは停まっていたが、2人とも、駐車場の脇にある展望台のような場所から写真を撮っているところだった。


 実際、降りて、彼女たちの元に向かうと。

「すごいですね」

 眼下には、山、山、山。


 ひたすら山だけの一面の緑色が広がっていた。そこはまさに自然の楽園で、人工的な構造物が、この道の駅の売店と、先程のタワーしかなかった。


「だよネ! すごい快適な道に、この絶景! 来てよかった!」

 フィオは、持ち前の明るさを発揮して、大喜び。


 一方、花音ちゃんにも感想を聞くと。

「まあ、道が快適なのは間違いないですし、ここは涼しくていいです」

 いつものように、無表情でシニカルな態度ながらも、満更でもない様子だった。


 やがて、まどか先輩と琴葉先輩も到着し、2人とも同じように、この展望台から見える絶景に見入って、同じように感動の声を上げていた。


 その後は、先程から気になっていた、大きな塔に向かう。


「ごまさんスカイタワーってのが、これなのね」

 琴葉先輩が塔を見上げながら、呟いた。


 そのごまさんスカイタワーは、登るだけで有料だったが、エレベーターで昇ると、展望台とはまた別の、一切の視界を遮ることなく、360度に広がる大パノラマを眺めることが出来る。


 四方、すべてが山に囲まれたこの塔。


 道の駅の標高は1282m、塔の展望台の標高は1315mもあるらしい。つまり、塔の高さは約33m。


 ちなみに、この辺りで一番標高が高い山、和歌山県の最高峰でもあ護摩壇山の標高が約1372mだという。


 部員みんなが、ここで感嘆の声を上げる。

 まさに、そこは夏に来るのにふさわしい、「天空の道」でもあったのだ。


 タワーから降りた後は、ツーリングの定番とも言える、売店でソフトクリームを買って、ベンチで食べることにした。


 5人で並んで、それぞれのソフトクリームを食べたり、譲ったりしながら、感想を言い合う。


 これが「旅の醍醐味」でもあり、「青春の思い出」にもなるのだった。


 結局、私たちはその後、一旦山を下りて、奈良県に入り、そこから三重県を経由し、三重県でもう1泊をして、翌朝には再び伊勢湾フェリーを使い、新東名高速道路経由で山梨県に帰ったのだった。


 初めての関西ツーリングが終わる。

 だが、夏はまだまだ終わってはいなかった。

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