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温泉ツーリング同好会へようこそ 2nd  作者: 秋山如雪
第6章 美人の湯
29/43

29湯目 紀州の美人の湯

 その日は、温泉宿でぐっすりと眠れたため、翌朝の寝覚めも格別に良かった。

 やはり「旅」というのは、非日常を味わうだけでなく、人間にとっていい作用に働くことがある、と私は改めて思うのだった。


 その日は、平日だったが、通勤渋滞とは完全に無縁な「山の中」を走る旅になった。


 宿から一旦、国道168号に出て、北上。

 右手に雄大な熊野川を見ながら、交通量の少ない山道を走るのは、実に快適だった。その上、この辺りは標高が高いので、真夏でも涼しい。

 往路の途中で、熱中症になりかけたのが嘘のように、この辺りはマイナスイオンにあふれ、緑が覆う快適な道だった。


 途中、いくつかの道の駅に立ち寄り、国道311号に入り、さらに山に分け入り、やがて県道198号、国道425号、国道371号とたどり、出発から2時間くらいでたどり着いた場所。


 龍神温泉 元湯。


 そう、そこが目指す「美人の湯」だった。


 施設は、完全に山の中にあるホテルで、大きなビルのような立派な建物が川沿いに建っていた。

 しかも平日にも関わらず、近隣の関西圏のナンバープレートをつけた、多数のバイクが停まっていた。


 どうやら関西では有名らしい。


 早速、チケットを購入し、ホテルのフロントのようなカウンターで受付をして、階段を降りて、浴室に向かう。


 ここは、とにかく素晴らしいの一言に尽きた。


 内湯は広いし、綺麗で快適。露天風呂も大きく、眼下に川が見渡せる絶景。


 しかし、それよりも、すごいのは「美人の湯」の名に恥じないくらいのお湯だった。

 サラサラの天然水のような滑らかなお湯で、しっとり感があり、肌がツルツルしてくる感覚すら覚える。


「すげえな、ここ」

 まどか先輩が感動のあまり、顔の半分くらいまでお湯に浸かっていた。


「さすがに美人の湯と言われることはあるわね。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)か」

 琴葉先輩が口に出すが、もちろん壁に書いてある説明書きを読んでいた。


「いいお湯ですね。ずっと入っていたいです」

「ちょっと熱いけどネ」

「あまり長湯するとのぼせそうです」

 私、フィオ、そして花音ちゃんがそれぞれ感想を言う中。


 確かに、その日は暑い一日で、最高気温が35度近いという予報だった。

 ただ、この「山の中」にあっては、完全に「避暑」というくらいに涼しい上に、緑が多いと、気温というのは下がりやすい。

 コンクリートに囲まれた都会よりは、はるかに快適なのだ。


 結局、私たちはこの温泉に40分以上も浸かり、風呂上がりにさらに20分以上も休んで、1時間以上も時間を費やしていた。


「腹減ったな」

「このすぐ先に道の駅があるわ」


 まどか先輩と、琴葉先輩の先導によって、出発。

 すぐに道の駅に着いた。


 道の駅 龍神。


 外観が、まるで山小屋のようなロッジ風で、木の温かみが感じられるような建物が、どこか心地いい。


 そして、内装もまた山小屋風で、中ではうどんが売っていた。


 そこで、私たちが注文したものは。


「猪うどん」

「猪丼」

「猪肉カレー」


 そう。すべてが「猪」だった。


 最初こそ、

「猪なんて美味いのかよ」

 と半信半疑だった、まどか先輩が、


「うめえ!」

 子供のように喜んでいた。


 しかも、晴れていたその日、外のテラスのような部分で、木目調の椅子に座り、渓流とそこに架かる吊橋を見ながら食べる食事は最高に美味しいと思えるのだった。


 私は、猪うどんを注文したが、猪の肉が入った、不思議なうどんは、初めて食べるにしては、クセのない味わいで、麺もコシがあり、十分美味だった。


 そして、食後には、さらにそこから北を目指すことになるのだった。


 そこは、関西のライダーにとっては、心地よいツーリングコースであり、山梨県という、どちらかというと関東在住の私たちには馴染みのない、しかし快適な、文字通り「空の道」だった。

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