自称世界最強おじさんは仲間の性格が悪すぎて嫌気がさしたので全員追放する事にしました。ピュアな新人育てながら余生を過ごします。魔王討伐? どこか遠い所で勝手にやって下さい。
自称世界最強のおじさんが仲間の性格の悪さに辟易して世捨ておじさんになる話。
辺境でへっぽこ冒険者の育成しながらまったり過ごそうとするけどそうもいかなくて……。
というほぼタイトルが全てのお話です。
「そこで俺が言ってやったワケよ。これだけ働かせといて報酬がアレっぽっちってこたぁねーよなぁ? ってな!」
「お前も悪い奴だなぁガハハ!」
「いいじゃない。そのおかげで私達また当分遊んで暮らせるんだしね♪」
一時的にパーティを離れ王都への招集に応じた俺は、王直々に魔王討伐の依頼を受けた。
今はまだ魔物達の動きも活発では無いが、ちらほらと国境付近での小競り合いが増えてきているらしい。
正直気乗りはしなかった。でもこの国で暮らしていく以上王の命令は絶対で、結果俺はその依頼を引き受ける事になった。
俺のパーティは、まだ若いが実力十分の剣士ファラン。そして防御を担うタンク役のガランド、補助系魔法は一通り高水準で使える神官のミーリル。
ミーリルが攻撃上昇、防御上昇、俊敏上昇等々のバフをかけ、ガランドが最前線で敵の攻撃を防ぎつつカウンタースキルで反撃。ファランは縦横無尽に駆け回って敵を殲滅する遊撃手。
戦力的には申し分ないパーティであり、個の力も冒険者全てひっくるめても上位ランクだろう。
このパーティならば道中鍛えてやれば魔王討伐も可能だと、そう思ったから引き受けた。
だが。
帰って来た俺が耳にしたのが先程のやり取りである。ろくでもない話なのはドア越しでも理解出来た。
大陸東、バール領の宿屋に部屋を借りて待っているとの事だったが、店主に聞くところ宿自体貸し切りにしているらしい。泊まらせてほしいと頼み込んできた冒険者がいたらしいが三人が追い返してしまったという。
「随分と贅沢な暮らしをしているようじゃないか」
鍵の閉められた扉を魔法で開錠し中へ入ると、三人が一斉に振り向き、俺の顔を見たファランは大慌てでテーブルの上の物を隠そうとした。
「あ、兄貴……随分早いお帰りっすね」
「いつも言っているがその兄貴ってのやめろ。別にお前の兄貴になった覚えは無い」
「まあまぁ糖蜜の旦那、そう怒らねぇでやってくれよ」
「ガランド、お前もだ。その呼び方は止めろと言ってるだろ」
ファランは俺を兄貴と呼ぶ。慕われているのは悪い気はしないが俺はこの呼び方が好きじゃない。そしてもっと嫌いなのは糖蜜の旦那、だ。
俺の名前はジン。ジン・シュガー・ハニー。しがないおっさんである。ただでさえおっさんには似合わない甘そうな名前だというのにガランドがあちこちで糖蜜の旦那なんて呼ぶもんだから一定数そのふざけた呼び方をする輩が増えてしまった。この罪は重い。
「ジン、これはファランが勝手にやった事なの。だから私は関係ないわよ?」
俺に擦り寄って腕を絡ませてくるミーリルを振り払い、改めてテーブルの上を見る。
こんな宿屋では本来出てこないであろう豪華な食事と高い酒の空瓶が何本も。
「その割にはミーリルもしこたま飲んで上機嫌だったようじゃないか」
「だってー、お金があるならいい物を食べて飲むのは当然でしょう?」
「そうだぜ糖蜜の旦那。世の中ってぇのは俺達みたいな力の有る奴が金を有効に使う為に出来てるんだからよ」
「そうっすよ兄貴、俺達兄貴が居ない間に領主のバールっておっさんから依頼を受けてその報酬をもらっただけなんすよ? 何も悪い事はしてねーっすよ」
はぁ……これだからこいつらは……。
前々から性格に難がある連中だとは思っていたがほとほと愛想が尽きた。
「お前らの話はドアの外で聞いてたよ。当初の予定よりも多額の報酬をふんだくったんだろ?」
「そ、それは……お、思ったより大変な討伐依頼だったんで追加料金ってやつっすよ」
ファランの言葉にガランドもミーリルもしきりに頷く。
こいつらが依頼を受けて魔物討伐をしたのは間違い無いのだろう。だが俺達はこれでも王都のトップギルドの看板を背負って活動している冒険者だ。ギルドの名を地に貶めるような行いをしてはならない。こいつらはそれを全く理解していない。
どんなに実力があろうと精神が伴っていなければチンピラと同じだ。
「お前らわざわざここを貸し切りにして冒険者を追い返したんだってな?」
「糖蜜の旦那、あいつらは見るからに初心者のへっぽこパーティだったぜ? 俺等がわざわざ場所を提供してやる事はねぇだろ」
「それにイケメンも居なかったしねぇ」
……ここを追い出されたパーティは止む無く街での宿泊を諦め先へ進んだのだろう。
「俺が帰ってくる道中で三人組のパーティが魔物に襲われて死んでたよ」
野営の跡があったので夜中にでも襲われたのかもしれない。
「へぇ、この辺の魔物は弱っちぃのに三人もいて殺されるなんて馬鹿っすねー」
「ちげぇねぇや」
「あ、でも一番背の高い子はあと数年もすればいい男になりそうだったからちょっともったいなかったわねぇ」
「……お前らは自分が追い出した奴等がそのせいで死んだってのにそんな言葉しか出てこないのか?」
俺の言葉に三人が一斉に口をつぐみ一瞬の静けさが部屋を包む。
「その三人が死んだのは弱いからだ。それは間違い無い」
「そ、そうっすよ兄貴。結局世の中弱肉強食じゃないっすか」
「ファラン、お前さっきこの辺の魔物は弱っちいって言ってたよな? なのに討伐依頼は追加料金をふっかけるような大変な物だったのか? お強いお前ら三人がかりでも苦労するような相手がこの辺りにいたと?」
再び三人が黙り、皆俯いてしまう。
図星、というやつだろう。こいつらはただ自分らが幸せならそれでいい、弱者が死ぬのはそいつのせい、別に守ってやる必要は無いし、守ってほしければ大金を払え。そういう意識で生きている。
俺の大っ嫌いな人種だ。
「はぁ……もういいや」
その言葉を許しと捉えたのかファランが顔を上げ「すんませんっす。以後気をつけるっす」とヘラヘラ笑った。
もう全部どうでもよくなってしまった。
「お前クビな」
「……へ?」
「聞こえなかったのか? お前クビ。いらねーわ」
「ま、ままま待ってくれ兄貴! 俺強いっすよ!? 役に立つっすよ!?」
「どうでもいいよ」
「お、俺だけが切り捨てられるのっておかしくねーっすか!? こいつらだって同罪っすよ!?」
ファランは取り乱しガランドとミーリルを指差す。当の二人は我関せずと顔を背けるばかり。
「あぁ、確かにそうだ。言葉が足りなかったな。お前ら全員クビだ。どこへなりとも消えうせろ」
こんな奴等居なくていい。
「ま、待ってよジン! 私まで切り捨てるの!? 私、ジンが望むのならこの身体好きにしてくれてもいいのよ?」
「いらねーって」
「旦那……俺達のパーティから抜けるつもりなのか?」
何言ってんだこいつ。
「勘違いするなよ。お前らのパーティを俺が抜けるんじゃない。俺がお前らを切り捨てるんだよ」
「兄貴! 考え直してくれ、王都に呼ばれたんだってでっかい仕事の依頼だったんじゃないんすか!?」
「ああ、魔王討伐の命が下った」
「「「なっ……」」」
事の重大さに三人が言葉を失うものの、若さ故なのか今回も真っ先に口を開いたのはファランだった。
「だ、だったら尚更っすよ! 俺達の力が必要っすよね!?」
「そうだぜ旦那。相手が魔王となりゃ旦那に並んで戦えるのは俺達しかいねぇって」
「戦力は多い方がいいわよね?」
「お前らそんなに魔王討伐したくてしょうがないんだったら俺抜きで勝手にやれ」
「兄貴、そりゃあ無いっすよ。王様からの命令なんっすよね? 王の命令に背くんすか?」
「お前には関係無いだろ。とにかくお前らは全員解雇だ。俺に切り捨てられた後でどうするかはお前らが勝手に決めろって。分かったらとっとと失せろ」
もう俺はこいつらと関わるのをやめる。元々俺がギルドに声をかけて集めた冒険者だし、このパーティを終わらせるのも俺の仕事だ。
「……待てよ旦那ぁ」
「ちょ、ちょっとやめなさいよガランド! 何するつもり!?」
「ファラン、お前も手伝え。俺は犯罪者にはなりたくねぇ。だが旦那抜きで魔王に勝てるとは思えねぇ。だけどな、俺達三人がかりで旦那に負けるとも思ってねぇぞ」
こいつら俺とやろうってのか?
「……兄貴、俺達が勝ったら考え直してくれるっすか?」
「ちょっと、アンタ達本気なの!?」
「ミーリル、お前も手伝え。三人でいつものようにやりゃあ負けるはずがねぇ!」
「……しょうがないわねぇ……ジン、悪いけど覚悟……し、て……って、え?」
俺はミーリルの言葉が終わる前に三人を街からある程度離れた平野へ転移させた。
「さっきまで宿に居たってのに……やっぱ兄貴はすげぇっす」
「飲まれるな! 俺達は勝たなきゃならねぇんだ!」
「やるしかないのね!」
ミーリルが二人に各種能力上昇魔法をかけていく。複合魔法までは使用できないまでも同時に複数の魔法を使えるのはなかなかの才能だ。
「いっくぜー旦那ァァァ! いくら旦那でもこの一撃を受け止める事は出来ねぇだろ!」
ガランドの数少ない攻撃技。しかしその威力は強力で、自らにオーラの棘を纏い、自分の身体を弾丸のようにして渾身の力を込めて回転しながら突進する。近付いた者は回転による空気の渦に引き込まれ、その身を八つ裂きにされて吹き飛ぶ。
直撃しても俺が死なないと信頼してこその全力攻撃なのだろう。
「そっちにばっかり気を取られてていーんすか!?」
突進してくるガランドの背後に隠れるように移動していたファランがお得意のミラージュブレードを発動。
これはミラージュステップという姿を眩ませるスキルをファランが攻撃用にアレンジした物で、初めて見た時そのセンスに脱帽した物だ。そしてその姿は見えないのに速度もある。今ちょうどガランドの側面を回り俺に見えない刃を突き立てようとしている所だ。
「ほんとお前らセンスはいいのに性格がクソなんだよなぁ」
まぁセンスがいいから勝てるってもんでもないんだけど。
「幻影で誤魔化しても気配が読める相手には効果がないからな?」
俺は爪先で地面をタンタンと二度タップした。
詠唱を短縮したショートカットとして設定しているこれは意外と便利で、目の前の地面が二メートルほど勢いよく隆起する魔法が発動するようになっている。
突然地面から圧縮された土の柱が飛び出る。そしてそれはファランに直撃し大きく空中へと跳ね上げた。
「ぐえっ……」
ファランの方を見ている暇は無い。既にガランドの突進は俺から数センチ先に達していた。
「入った!」
「そういうのは当たってから言えよ」
ガランドの周囲には空気の渦が出来ていてそこへ身体が引き擦り込まれる感覚があったので俺は敢えてその流れに身を任せた。
ただ一つ、拳に魔力を込めた状態で。
俺の拳はガランドの突進に触れ、彼が纏うオーラの棘を砕き、分厚い鎧を貫いた。
ガランドの肉体に直接触れてしまう直前で魔力量を抑え、致命傷にはならないようにする。
しかし元々ガランドが物凄い勢いで突進してきていたのでその分のダメージは必然的に入ってしまったようだ。
声も出せずに地面を転がり回っている。
「まだまだっすよ!」
その頃には空中に跳ね上げられていたファランが落下してきて、その勢いを利用しつつ自らも回転を加え威力を増した斬撃を繰り出してくるが……。
真上から振り下ろされる攻撃なんて軌道が丸わかりだった。俺はまた爪先を二度タップするだけ。
もう一度ファランは高く跳ね上げられ、今度はそのまま地面へと落ちていく。
「……ミーリル、お前はどうする? かかってくるなら手加減くらいはしてやるけど」
ミーリルはその場にへたり込んで必死に首を横に振っていた。
「これで気が済んだだろ? 確かにお前らは強いし、現状冒険者パーティの中では最強だろうぜ。でもお前らはあくまでも俺に雇われてたんだって事を忘れるなよ? 俺がいらねーって言ったらいらねーんだよ。お前らみたいな奴等と一緒に旅してたら人間が嫌いになっちまいそうだ」
俺は言いたい事を全部ぶちまけて、亜空間収納から金貨の入った袋を取り出しミーリルへと放った。
「えっ、えっ……?」
「その金は今までの賃金だ。三人で分けても十分遊んで暮らしていけるくらいあるだろ? いい思いしたいだけならそれで一生遊んでろ。少しでも悔しいと感じたならそれで一級品の装備を整えて俺抜きで魔王を倒してみせろ」
「がはっ……だ、旦那……マジ、なんだな?」
ガランドが仰向けに転がったままそんな事を言う。顔はこちらを向いていない。まだ身体が上手く動かせないようだ。
「ああ、もういろいろ嫌になっちまったんだよ。俺は俺なりにやりたいようにやっていくさ」
「あに、き……国が、黙ってないっすよ……兄貴は、世界に四人だけ、の……デュアルマスターなんすから」
ファランは立ち上がり、フラつきながらガランドの傍らまで進み、座り込んだ。
ちなみにデュアルマスターってのはこの世に存在するジョブ、つまり職業の中で上級扱いになっている職業を二つ極めている者の事を言う。
「きっと、他のデュアルマスターが、兄貴を狙いに……」
なんだかんだこいつも俺を心配してくれているらしい。王命に背き犯罪者扱いになったら他の三人のデュアルマスターが俺の命を狙ってくる。それは確かにそうかもしれない。
「安心しろ。お前らには言って無かったけど俺はクアッドだからな。デュアルなんかに負けねえよ」
自分をデュアルと偽っている奴が俺以外に一人いるが……そいつとは面倒だから戦いたくないもんである。
「「「……は?」」」
「じゃあ話しは終わりだ。俺は適当に旅に出るからお前らも動けるようになったらさっさとどこかに隠居するなり修行するなりしろよ」
「ま、待ってジン! クアッドって!? クアッドマスターって事!? そんなの有り得ないわ!」
「兄貴! 兄貴は賢者と剣聖のデュアルじゃなかったんすか!?」
「上級職を四つ……? 冗談だろバケモンじゃねぇかよ……」
こいつら好き勝手言いやがって。
「お前らが知らないだけでトリプルだって一人居るぞ? 世の中は広い。上級職じゃなくたってとんでもなく強い固有スキルを持ってる奴もいる。俺はそういうギフトを持って生まれなかったから仕方なくこんなおっさんになるまで血の滲むような日々を送って地道に上り詰めたんだよ」
気が付いたら俺も四十後半だぜ畜生め。
どうして俺はもっと若いうちにこいつらみたいに遊んでおかなかったんだろう
まさかとは思うが俺はこいつらに嫉妬してたんじゃないだろうな? さすがに違うと思いたい。
なにせ俺ももういい歳なもんで、残りの人生国の為に尽くすなんて面倒だし嫌だなぁと思っていた所だった。
だからこれはいいきっかけだ。
こいつらがこの先堕落するのか、それともやる気を出して本当に魔王を倒せるくらいに育つのかは分からないしどうだっていい。
俺の知らない所で勝手にやってくれ。
俺はもう好きに生きる。
弱くたっていいから性格のいい奴等を仲間にして辺境の地でのんびり冒険して暮らすんだ。
住民を苦しめる魔物を倒して日銭を稼ぎ、野営をしたり釣りをしたり綺麗な自然を眺めて癒されたり。そういう余生を送りたいんだよ俺は。
という訳で、だ。
「それじゃあな。もう二度と会わない事を祈るよ」
「ま、待っ……」
まだ奴等が何か言っていた気がするが、もう俺には関係ないので放置してその場から転移した。
……と、勢いで王国への反逆者になってしまったので、出来る限り遠い所を選び新しい人生のスタート地点にする事にした。
大陸の南部にある小さな農村。国境を越えた遥か先まで来たのでここならば俺の命を狙って来る奴もいないだろう。
どうせなら名前も変えてしがないおじさんとしてまったり生きる事にするか。
なにせこの辺は自然が豊かで風景がとにかく綺麗だし、街道沿いには背の高い稲穂が揺れ、村人達が毎日必死に汗をかきながら作業をしている。
これだよこれ。こういうのんびりとした時間の流れる場所で癒されたかったんだ。
とはいえ夜を明かす家があるわけでもなく、こんな農村に宿屋なんかも存在しなかったのでやむを得ずホームレスのような日々を送る事になった。
森の奥に大きな池……というより小さな湖があり、そこで毎日身体を洗い、適度に服も洗って木の枝に吊るして乾かす。
その間ふんどし一丁で釣りをして食い物を調達。特にする事が無い日は穏やかな日差しの中湖畔の木にもたれかかって昼寝をする。
平和だった。
ただ、いつまでもこのままという訳にはいかない。だって寒い季節がやってきたら家も無しに生きていくのは難しい。
魔法で寒さを緩和するのは簡単だが、だからといって洗濯中極寒の中すっぱだかで過ごしているおっさんが目撃されたら気味悪がられてしまうだろう。
適当に木でも切って簡易的なログハウスでも作ろうか……なんて考えた事もあったが建築関連の知識が皆無なのはともかく、なんというかそういう作業と相性が悪すぎた。
あんなの丸太を組み上げていけばそれっぽく家になると思ったのに出来上がったのは思ったのと全然違う隙間だらけの箱だった。しかもジメジメしてカビは生えるし虫は寄ってくるしで俺はすぐにそこでの寝食を諦めた。
なので結局俺はほぼ野宿状態を続けたまま既に三か月ほど経過している。
「ぐわーっ!」
「大丈夫!? 私達だけじゃ無理だよ逃げようよーっ!」
そんな俺の平穏だがわびしい毎日に、突然大声が介入してくる。
「ここで逃げたら俺はいつまでも成長出来ないだろ! って、うわーっ! 退却だーっ!」
「やっぱり逃げるんじゃんかーっ!」
「逃げじゃない! 戦略的撤退だーっ!」
何やら二人……男女だろう。叫び声が聞こえた後、ドタバタと騒がしい音がこちらに近付いてきた。
「やば、俺今ふんどし一丁だぞ」
タイミングが悪すぎる。まだ服乾いてねぇぞ……。
女の子もいるみたいだからさすがになぁと木の枝の上に飛び乗り、様子を伺う事にした。
「うわっ、湖に出ちまった!」
「ちょっとルミナ! どうするの? 追ってきてるよ!?」
「クソっ! ……仕方ない。ここでケリをつけるぞ! スライムくらい倒せなくてどうする!」
おいおいなんだよ相手はスライムか。
スライムはいろんな種類がいるが、基本的には初級も初級の魔物である。
逃げてきた男女は見た所十代前半くらいの見た目で、一人がボサボサの赤髪で如何にも剣士初心者って感じの装備だった。
もう一人はピンク色のボブで温かい季節の割には厚手の服を着こんでいる。そちらは杖を持っているから魔法系なんだろうが、見た目からは補助系なのか攻撃系なのかは分からない。
「ほ、ほんとにやるの?」
「やらいでか! このくらい倒さなきゃ……俺は世界最強になる女だーっ!」
女ァ!?
赤髪の方も女だったの!?
万が一の事があったら助けに入るつもりで木の上から様子を伺っていたのだが……覚悟を決めた二人の連携はなかなか大したものだった。
勿論初心者としては、という意味だが、赤髪の方は剣技はさっぱりだけど身体能力がとんでもない。身のこなしだけでゴリ押しした感じだ。
ピンク髪の方は初級のファイア系魔法とブリザード系魔法を駆使して戦った。威力はてんで大した事無いが、あの年で複数系統の魔法を使えれば才能有り。将来有望ってやつだ。
「は、はぁ……はぁ……どうだ! ザマー見やがれーっ!」
「もうルミナってば息あがってるじゃないの……でも、ボク達だけでも倒せたね!」
「へへ、今なら誰にも負ける気がしねーぜ!」
一つ目標をクリアした時の一時的テンション上昇による全能感。俺にも覚えがあるが……そういう時が一番あぶねーんだよなぁ。
こいつらは気付いていないようだが何か大きくてやたら早いのが近付いてきている。
今出て行って警告するのもアリだが両方女となるとこんなふんどし一丁のおっさんがいきなり目の前に現れたらそれどころじゃなくなってしまうかもしれない。
さすがに変態扱いされるのは傷付く。
もうちょっと、もうちょっとだけ様子を見よう。
そう俺が行動を見送ってしまったが為に、次の瞬間、完全に油断していた二人は音も無く現れた巨大な蛇型の魔物ギガントスパインにぐるぐると身体を巻き取られ身動き取れなくなってしまった。
「ぎゃーっ! なんだこいつ、ぐえーっ、く、ぐるじぃ……!!」
「い、痛い痛い痛いーっ! でかいながいこわいよーっ!」
体長は七メートル以上、その太さは丸太くらいあるかなりヤバい奴だ。
こんな魔物が居るような森じゃないと思ったんだが……?
「ぐ、ぐえ……」
「……っ、あぁっ……」
ヤバい。さすがにこれ以上放置したら死んじまう。いきなり丸呑みされなかったのは僥倖だけど、奴の締め付けはかなりキツイ。女の子の身体じゃ全身の骨が折れててもおかしくないぞ。
「おい蛇野郎、そこまでにしとけ」
仕方ないので俺はふんどし一丁でギガントスパインの目の前に降り立った。
「……なんだキサマ。邪魔するなら、お前もコロすぞ」
「しゃべったぁぁぁぁぁぁっ!?」
あまりにびっくりしてつい絶叫してしまった。
喋る魔物ってのは確かにいる。でもそれは何百年も生きたドラゴンだったり、人型に限りなく近いタイプだったりするのだ。
こんな蛇タイプが喋るなんて聞いた事もない。
「フン、我、混沌の器ヨリ知識を得タリ」
……混沌の器、だって?
混沌の器ってのは古代文明の遺物で、長い年月をかけて土壌から吸収した魔素がなにかの拍子で吐き出されたりする。
俺は過去に一度それを壊した事があった。
あの時は古い遺跡の中に埋もれてたのが偶然作動してしまい、周囲の魔物を変質させて狂暴化させていた。
幸いにも迅速に対応出来た為大した問題は無かったが……こんなのが現れてるって事は結構まずいぞ。
本来は魔素の多い地域の土壌を浄化する装置だったらしいが許容量を超え、内部で濃縮された魔素が放出されると面倒な事が起きる。今回それが証明されてしまった。
だがそれについて考えるのは後だ。今は二人を助けないと。
「とりあえずそいつ等を放してもらおうか」
「……何故ダ? お前の大切なモノなのか?」
魔物と会話しようとしたのが間違いだった。こいつらは価値の基準が俺達とは圧倒的に違う。
「初対面だよ。でもな、そのままくれてやるわけにはいかないんだ」
「なるほど。我と獲物を取り合おうというのダナ? かかって来るがイイ」
「俺達の戦いに巻き込まれてそいつらがぐちゃぐちゃになっちまったら意味がないだろ? とりあえず離せ」
「……ソレモそうダ」
間違いだった、と思ったが会話が出来るというのは案外プラスにもなるようだ。
ギガントスパインは長い身体をくねらせしゅるしゅると二人を少し離れた場所に降ろした。
奴の身体が離れたのを確認して、気付かれないように二人に結界を張る。
これで二人がこれ以上傷付く事は無い。……が、早く処置しないと死んでしまうかもしれない。
「悪いがあまり時間はかけられないぞ?」
「フン、勝てると思っているノカ?」
「……思ってるよ」
収納用の亜空間へ手を突っ込み、聖剣ディアナソレイユを取り出す。
「一撃で潰すぞ。最後に言いたい事があったら今のうちに言っとけ」
「貴様を喰ろうて次はあの二人ダ」
「そうかよ」
ディアナソレイユは聖剣なんて呼ばれている伝説の剣だが、特別切れ味が良い訳でも特殊能力がある訳でもない。
ただひたすらに頑丈だった。
だが俺にはそれが最高に相性がいい。
炎系最大級魔法エグゾダスを水系最大魔法ヴォルテックスに付与。さらにそれをディアナソレイユに付与。
魔法の合成では無い。魔法に魔法を付与するという、つまりは上乗せだ。
合成魔法は特別なスキルを持った者のみが使用可能で、両方の特性を持った新たな魔法を生み出すものだが俺のは単純な付与魔法を俺流にアレンジした物。
これにも利点がある。合成魔法は二つの魔法の特性を持った魔法を一度の詠唱で発動させる物。威力は五割増しといった所だ。
その点俺の魔法付与は二度の詠唱が必要で魔力消費量が二倍な事の代わりに威力の方も単純に二倍だ。二つ混ぜ合わせて五割増しより二つ足して二倍の方が都合いい事もある。
合成魔法は相性のいい魔法同士しか合成不可能だが俺のは混ぜずに二つ同時に存在させる手法なので相性は気にしなくていい。その上同時発動させる魔法によって様々な効果を得る事が出来る。
魔法に魔法を付与してそれをとにかく丈夫なディアナソレイユに付与する事で俺の斬撃は相反する属性の最大級魔法の効果、性質を発揮する事が出来る上に、剣から同時に解き放たれた二種の魔法が初めてそこでぶつかり合う。
そう、俺はただ自らが極めた職業の一つ、剣聖の技を繰り出せばいい。
爆発的加速で対称に突撃し切りつける事だけを極限まで高めた光翼斬。
ギガントスパインも一撃で済ますつもりで棘だらけの尻尾の先をこちらに思い切り振り下ろしてきた。それを最小限の動きでかわし、凄まじい打撃により土煙が舞う。
それに紛れつつはじけ飛んだ地面の塊を足場に一気に頭上まで飛び上がり、ディアナソレイユを振り下ろす。
俺の剣が奴の頭部に触れ、その肉に食い込んだ瞬間に解き放たれたヴォルテックスとエグゾダスがぶつかり合い大爆発を起こした。
「相手が悪かったな」
ギガントスパインを跡形もなく消し飛ばすどころか巨大なクレーターが出来てしまい湖の水が勢いよく抉れた地表に流れ込む。
俺の視界の隅でその中に例の二人が落ちていくのが見えた。
「いけね、やりすぎちまった」
慌てて水に飛び込み、二人を抱えて助け出す。
結界をかけておいたおかげで水を飲んだりもしていないが、やはり骨があちこち砕けていて放置すれば長くはもたないだろう。
「回復系はそんなに得意じゃないんだがな……」
結果的に二人の命を助ける事には成功した。
なんとか俺の使える回復魔法で助ける事が出来たのはこいつらの生命力の強さのおかげだろう。
とはいえなかなか完治まで持っていけずに俺はふんどし一丁で三時間ほどひたすら回復魔法を唱え続けるという拷問を味わうことになった。
「……えっ? ここどこ?」
「う、うーん……ふわぁぁ……」
ピンク髪の方は状況が分からず困惑していたが、赤髪の方は気が付くなり大あくび。なかなか神経の太い奴だ。
「よう、ようやくお目覚めかいお姫様」
「うぁ……? おっちゃん誰だぁ~?」
「あっ、あのっ? えっ? だ、誰ですかっ?」
面白いくらい反応が両極端だなこいつら。
「まぁ、その……あれだ。お嬢ちゃん達が蛇に絡まれて大変だったからよ」
「蛇……うわーっ! そうだった! あの馬鹿でっかい蛇に俺達……」
「そ、そうですよ! ボク達……もう終わったかと……」
「あー、うん、まぁなんだ。助かって良かったじゃないか」
思えばここで適当に誤魔化せばよかったのかもしれない。ただこの時の俺は拷問のような回復地獄でへとへとだったので気が緩んでいたんだろう。
「あのでっかい蛇おっちゃんが倒したのか!?」
「あんな大きい魔物を……一人で?」
「んー、まぁね。こう見えておじさん結構強いんだぜ?」
疲れ切った顔で力こぶなんか見せてしまった。
若い女子二人を前に浮かれていたんだろうか? まったく情けない。
本当の所を言うと、この二人に自分の事を広めてほしいという気持ちが多少あった。
俺はこの辺の農村近くに住み着いた不審者なわけで、多少魔物退治なんかも出来るんだぞっていう実績があれば打ち解けやすく、もしかしたら村に受け入れてくれたりなんかしないかなーと。
そうなれば住処の件などが解消できるかもしれない。
でもそんな欲を出してしまったせいでよく分からない展開になってしまった。
「まじかよすげーなおっちゃん! ……いや、師匠!! 頼む俺を鍛えてくれ!」
おいおい簡単に信じすぎなのはともかくいきなり弟子入り志願とは思い切りがいいというか短絡的というか……。
「ルミナ本気なの?」
「あったりまえだぜ! だってあのめちゃくちゃデカい蛇を一人で倒しちゃうような人リオは見た事あるか!?」
「な、無いけど……」
そりゃ君達見てないだろうよ。
おじさんが君達守るために頑張ったっていうのに。というかその後必死こいて治してあげたのも知らんだろう?
まぁ無事だったからそれでいいけどさ。
「だろ!? このおっちゃん……いや、師匠はきっと名の有る冒険者なんだよ!」
「そ、そうなん……ですか?」
「……い、いやぁ……それはどうかなぁ」
どうやら言葉を濁してしまった事が余計彼女らにそうと思わせてしまったらしい。
「簡単に素性は明かせないよな! 分かる、分かるぜ! でも命の恩人だしあの蛇を倒したのは間違いないんだろ? だったら絶対強い人だ! 俺を鍛えてくれ頼む! 他に頼める人なんかいないんだよ」
「も、もし……本当におじさんが強い人なら……ボクからもお願いします。ボク達を弟子にしてくれませんか?」
ちょっとピンクの子までその気になっちゃって……どうしたものか。
「君等を鍛えるのは別に構わないけど……一つだけ聞かせてほしい事があるんだ」
そう。これだけは絶対に譲れない。
納得できなければこの話は無しにしよう。そう決めた。
「君達は……なんの為に強くなりたいんだ?」
「……俺もリオも小さい頃に両親を殺されたんだ」
赤髪の子がそう話し出すと、ピンクの子は俯いて小さく震えた。当時の事を思い出したんだろう。
「魔物か?」
「ううん、野党だよ。俺達は家族同士仲良くってさ、一緒に旅行なんかもいく仲だったんだ。その日は雨が降ってて……山肌が脆くなってたんだろうな。馬車が崖から落ちちゃってさ」
「……パパと、ママは血だらけで……でも、すぐに助けを呼べばきっと助かったはずなんです」
なんとなく話が読めて来たな。
「必死に崖下から助けてって叫んでさ、やっと人が来てくれてこれでみんな助かるって思ったんだけど……」
「……っ」
さすがにこれ以上は聞かなくても分る。
助けだと思ったそいつらが野党で、両親はそいつらに殺されてしまったのだろう。
この子らが無事なのすら奇跡だ。
「雨が降ってて危ないからって村の人が心配して見に来てくれたんだけど、その時にはもう……奴等は金目の物盗んで逃げてった」
村人が来たくらいで逃げていくのだから大した野党では無いのだろうが、一般人からしたら十分な脅威だ。
人は、普通に生きて死んでいくだけならそうそう他者から殺意を向けられる事なんて無い。
ましてや殺意すら持たずに当然のように命を奪われる事も無いだろう。
……その状況ならこの子達だけでも助かったのを運が良かったと思って平穏無事に普通の生活をしていくのが一番だと思う。
だが、この子達は違う道を選んでしまった。
「君が強くなりたいのは……強くなって仇討ちをしたいからか?」
もし頷くなら……。
「違う。……確かに殺してやりたいくらい憎いけど、どこの誰かも分からないしもう死んでるかもしれない。そんな奴を恨んで恨んで怒りに任せて生きるのは……なんていうか、ちょっと違うだろ?」
驚いた。この子の目は……とても真っ直ぐだ。
親を殺されてこんな風に育つ事が出来るのか?
「ボク達は……こんな事が二度と起きないように、せめてボク達の手が届く範囲だけでも守れるようになりたいんです」
「俺は手が届かないとこだって守りたいぜ! 俺達みたいな子供が増えないように」
……亡くなった両親達の代わりにこの子達を育てた人を見てみたいくらいだ。
そう思ってしまうほど、二人の目は強い意思の力で輝いていた。
今はその力は意思だけ。実力が伴っていない。
だが……。
「君等は強くなってもいつまでもその気持ちを持ち続けられると約束できるかい?」
「当たり前だぜ!」
「勿論です!」
ふふ、この子らに才能があるかどうかなんて知った事じゃない。
俺はただ、こういう真っ直ぐな子達を育ててみたいと……そう思ってしまった。
「いいだろう。その代わり、君等の本質が変わってしまったと思ったらその時点で俺は君等の前から去る。それでもいいな?」
「やったーっ!」
「よろしくお願いしますっ!」
「しがないおっさんだけどこちらこそよろしくな」
なんだかおかしな事になってしまったが、これから毎日忙しくなりそうだ。
ただぼけーっと余生を過ごすのもいいが、こんな真っ直ぐな子達が、力をつける前に魔物に殺されるような事があってはならない。
「おじさんは厳しいぞ? ……っと、それはそうと自己紹介してくれないか? 俺はジ……あー、えーっと……」
この子らは俺の事なんか知らないだろうけれど本名を名乗るのはさすがにまずいか。
俺もここから第二の人生が始まると思って心機一転新しく生まれ変わろう。
「俺の名前はシガー。君達は?」
「俺はルミナ・ブライト。女だけど男より強くなるってあの日に決めたんだ。どんな厳しい修行だって耐えてみせるぜ!」
「ボクはリオ・バクスタルト。よろしくお願いします」
こんな世捨ておっさんが急に十代の弟子、しかも女子二人を持つ事になるなんて不思議な事もあるもんだ。
「そういえばおっちゃんはどこに住んでるんだ? 家が森の中にあるのか?」
ルミナは思った事をすぐに口に出す。隠したりせず厳しい事も平気で聞いてくる。
ぶっちゃけこんなおっさんがまともな暮らしをしているように見えるんだろうか?
「あー、実は住む所を探しててね。村で俺が住み込んでも平気な所……なんてないよなぁ?」
この二人を助けたからと言っていきなり変なおっさんが村に受け入れられるかは微妙だ。
「だったら俺達と一緒に住もうぜ!」
「ぼ、ボクもそれがいいと思います!」
「……いやいやいや、さすがにまずいって。君等は若いって言っても二人とも可愛らしい女の子なんだからさ、こんなおっさんが一緒に暮らす訳には……」
仮にこの子らが村の人達に説明して受け入れて貰えたとしても俺がこの子らに何か良からぬ事をしてるんじゃないかなんて噂が立つのは目に見えている。
二人は顔を合わせてから、また両極端な反応をした。
ルミナはゲラゲラと腹を抱えて転げまわり、リオは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「な、なんだなんだ? おじさんそんな変な事言ったか?」
もしかして逆に妙な下心があるように聞こえたんだろうか? それだけは勘弁してほしい。
「ぎゃははは! リオ! 良かったな!!」
「……良くない」
「可愛らしいってさ!!」
「怒るよ!?」
「……えっと……?」
俺はやっと、この二人が本当の意味で両極端なんだという事に気が付いた。
「う、嘘だろ……?」
「ボク……男……です」
リオは更に顔を赤くして、恥ずかしがっているような怒っているような微妙な目で俺を見上げた。
「……すまんかった」
女だけど男勝りなルミナ。そしてどう見ても美少女な男の子のリオ。
これは将来有望……なのか?
わからん。どちらにせよ、俺の人生はこの瞬間不思議な二つの歯車に挟まれて再び動き出した。
まずはこの二人を最低限闘える所まで引き上げつつ俺は俺で情報を集めて早いうちに混沌の器を潰しにいかないと。
今の所正確な場所を知る術は無いが、きっとこれからも混沌の器の影響を受けた魔物は現れるだろう。
それは貴重な手掛かりになる。
そいつらが村を襲ってこないとも限らないが、その時は俺が気合でどうにかするしかない。
やる事が急に増えてしまった。
……しかし何より最優先でやらなきゃならないのはこの二人と一緒に住むにあたり、周りの人達に変な目で見られないようにちゃんと説明する事だ。
ぶっちゃけそれが一番気が重い。
だっていくらルミナが男っぽいとはいえ女の子な訳だし、いくらリオが男の子だとはいえどう見たって美少女だし。
……うーん、なんかダメな気がしてきた。
「おっちゃんどうした? 顔が暗いぜ?」
「ルミナ、失礼だよ」
「……あぁ、この先……どうなっちまうんだろうなって思ってさ」
「大丈夫だって! 俺達と一緒ならなんとかなる!」
「凄い自信……ボクも頑張ります!」
この前向きで純粋な瞳が若干俺には痛いけれど、強くてクソみたいな奴等より真っ直ぐなこの子らと組む方が楽しそうだ。
「これから忙しくなるなぁ」
「ところでおっちゃんなんでふんどし一丁なんだ? ヘンタイなの?」
「だ、ダメだよそんな言い方しちゃ! これしか服がないのかもしれないでしょ!?」
「……今それ言う?」
まったく、修行初日は絶対に厳しくしてやろう。
おじさんを馬鹿にした報いを受けよ。
俺はそんな事を思いながらいそいそと服を取りに行くのだった。
そろそろ乾いてるだろう。
……そして、村に受け入れて貰うのはさらに難しくなってしまった。
「……おいおい嘘だろぉぉ? 俺の服、ズタボロじゃねーか……」
ギガントスパインの一撃、きっとあの時だ畜生め……!
俺はふんどし一丁でこの子達と一緒に村に行くのか……!?
前途多難が過ぎる……。
俺の新しい人生が始まった途端にとんでもない試練が降りかかって来やがった。
……いいぜ、このくらいなんなく乗り越えてみせるさ。
なんてったってこれでも自称世界最強のおじさんなんだからね!
お読み頂きありがとうございます!
新作長編の書き溜めをしている時にふと思いついてしまいどうしようか悩んだ結果短編にして投稿しちゃえ! という勢い任せの作品です。
意外と細かい設定を作ってしまったのでおいおい連載版も書くかも。
少しでも気に入って頂けましたら思ったとおりの評価で構いませんので下の☆を★に変えてってもらえるとありがたいです( ◜◡◝ )
作者の過去作なんかもぜひぜひよろしくお願いします♫
それではまた別の作品でお会いできる事を祈って。
monaka.