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いまさら都市伝説  作者: 9602(クロオニ)
5/6

八尺様

その女性は背丈が高く白いワンピースと大きな帽子を被っている。

「ぽ、ぽ、ぽ」不気味に笑い少年を見つめる。

見入られてしまったら、その村から出るまでは安心できない。

夜中部屋の扉や窓を開けてしまうともう終わり。命を奪われてしまう。

八尺ほどの高さから「八尺様」と呼ばれる

「もう、開けていいぞ」

じいちゃんの声が聞こえる。

俺は恐る恐るドアを開ける。だが、そこにいたのはじいちゃんじゃない。

長髪で背の高い女性が立っていた。



 寒さで目が覚める。今日は12月30日、大晦日前日。

昨日のうちに部屋の大掃除を済ませている。

数年ぶりに田舎のじいちゃんの家に帰省することになった。

じいちゃんのから電話がかかってきて、

「今年はみんな集まるからお前も帰ってこい」とのことだった。

確かに最近会えていない親戚が多いしいい機会だ。

新幹線や電車を乗り継いでいる間昔のことを思い出す。

まだ、小学生の頃だった。

 夏のクソ暑い日にじいちゃんの家の庭先で遊んでいた。

庭は少し高めの垣根で覆われていて大人でなければ外は見えない。

虫を取るために木に登っていたら、垣根の反対側に誰かがいることに気づいた。

頭だけ見えている状態だ。長い黒髪に大きな麦わら帽子を被った女性だった。

女性は何かを見ながら歩いているのかこちらに気づいていない。

距離が1mもないくらいになってからようやく俺に気づいたようだ。

驚いたのか数秒止まった後、ひきつったような不気味な笑みをこちらに向けた。

そして、恥ずかしかったのか「ぽ、ぽ、ぽ」と言いながらどこかへ走っていった。

ちょっと笑い方が変だったがすごく美人な人で俺は一目ぼれしてしまった。

その日の夜じいちゃん達にそのことを話した。

「ねぇ、じいちゃん。今日なめっちゃ美人なお姉ちゃん見たんだ」

「へぇ、それは良かったなぁ。じいちゃんもみてみたかったのお」

「庭で遊んでたらな、垣根の外に麦わら帽子の髪が長いお姉ちゃんがいたんだ」

「!?」

じいちゃんの顔が一瞬ひきつった。次は考え込むように首を傾げる。

「その人はどんな服を着ていた?」

「いや、服までは見えなかった」

「何か話したか?」

「話ては無いよ。ちょっと笑ってから「ぽぽぽ」て、言いながら走ってった」

「うーん、なら間違いねえか。ここにはおらんはずじゃがの」

じいちゃんはあまり納得してない感じで電話を手に取る。

「もしもし、こんな時間にすまんな。

どうもショウタのやつが「八尺様」を見たそうなんだ。

服は見とらんようだが麦わら帽子を被って「ぽぽぽ」と言ってたらしい。

ああ、頼んだ」

じいちゃんが戻ってきて話始める。

「ショウタ、お前が見たのは八尺様かもしれん」

「はっしゃくさま?」

「なんでも気に入った男の子を取り殺してしまう恐ろしいやつなんだ」

「え?じゃあ、僕死んじゃうの?」

「いや、そもそも八尺様はこの村の伝説ではないしなあ、

ちゃんと対処法はあるし、お前が言うこと聞いていれば大丈夫だ」

急に怖くなってきた。じいちゃんから対処法を聞く。

見入られたその日には迎えに来るらしい。

明日の朝まで部屋の外には絶対に出てはならず、

誰かから呼ばれても窓やドアを開けてもいけない。

その日の夜、恐怖心を植え付けられた俺はものの数秒で寝た。

朝になって何ともない顔をしてじいちゃんのところに行くと

「やはり、気のせいだったか。一応、町の方に戻るか?」

俺は昨日のお姉ちゃんに会いたい気持ちもあったが、

じいちゃんが心配そうに見て来るので帰ることにした。

こうやってひと夏の思い出が終わっていく。

 じいちゃんの家に着いたのは俺が最後だったようだ。

既に家の中は祭り状態だ。いろんなところで酒を飲みながら談笑している。

居間の奥の方にじいちゃんが座っている。

じいちゃんは俺に気づくとニヤニヤとしながらどこかに行ってしまった。

暫くしてじいちゃんが俺の方に走ってくる。まだ、ニヤニヤしている。

「ショウタよう来たな」

「いや、じいちゃんが来いって言ったんやん」

「そんなこと言ったか?まあまあ、いいじゃないか」

「てか、何をそんなにニヤついてんの?」

「そうそう、お前に合わせたい人がいるんだわ。ついて来い」

俺はしぶしぶついて行く。通されたのは昔俺寝泊まりしていた部屋だ。

「しばらくここで待ってな」

そう言うとじいちゃんはどこかに行った。

暫く待つとがれかが近づいてくる。

「もう、開けていいぞ」

じいちゃんの声が聞こえる。

俺は恐る恐るドアを開ける。だが、そこにいたのはじいちゃんじゃない。

長髪で背の高い女性が立っていた。

お互い固まってしまう。よく覚えていないが見覚えがある。

女性は顔を赤らめてモジモジとしている。

「ほれショウタ、お前が恋焦がれておった八尺様だ」

「へ?」

「も、もう、その言い方はやめてください」

思い出した。あの夏に出会った女性だ。今でも俺より身長が高い。

本やネットで何度か調べたことがあるが、八尺様は高身長で美人らしい。

そう考えると、この女性が八尺様だと言われても納得してしまう。

「ショウタがずっと会いたい会いたい言っとった人がこの人じゃ」

唐突に本人の目の前で暴露される。

「そして、この人もお前n...」

「待ってください、私から話します」

女性は目を閉じて深呼吸してから話し始めた。

「あの時は怖がらせちゃってごめんなさい。

当時、人とあまり会っていなかったから驚いて変な顔で笑っちゃったの。

言葉もうまく出せずに変な人に見えたよね?

だから、ごめんなさい」

女性は謝りだした。昔俺を怖がらせたと思っているらしい。

こういう時、どういう行動をとるべきか決まっている。

「謝らないでください。俺はあの日からあなたのこと考えていました。

毎年、夏になるたびにあなたを思い出しては会いたいと思っていました。

こんなちんちくりんな俺だけどあなたの傍にいたいです。

結婚してください!」

我ながら完璧だ。俺は最高の笑みを浮かべる。

女性は先ほどに比べて更に顔を赤くする。

じいちゃんは後ろの方で笑い転げている。失礼にもほどがある。

女性はもじもじしながらな話始める。

「す、すいません。気持ちは嬉しいですが。

せめて恋人から始めさせていただけないですか?」

確かに付き合いもしないのに結婚はおかしいか。

「わかりました。では、俺と付き合ってください」

「はい、お願いします」

俺たちはこうして結ばれた。

 急に静かになったので足元を見てみる。

じいちゃんが満面の笑みで固まっている。呼吸をしていない。

急いで救急車を呼んで病院に搬送される。

原因を聞くと笑いすぎによる過呼吸だったそうだ。

なぜそうなったか親戚に事情を話すと、みんな笑い転げ始めた。

複雑だがみんな笑っているから良しとしよう。

次ここに来るときは結婚の報告になるだろう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

都市伝説に出て来る霊や妖怪の類で一番好きなのが八尺様になります。

皆さんは誰か好きなキャラ?などはいますでしょうか?

都市伝説事態であったり、都市伝説に出て来る霊や妖怪が好きであったりと

都市伝説へのアプローチはいろいろです。

私の作品もその1つになればいいなと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

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