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2.1 1ページ目 私のLIFEとWill and testament

 --1ページ目--


 はじめに


 このノートはマティアスという人からもらいました。

 彼については後で書こうと思います。


 私が青色が好きだということを知ったマティアスが『好きに使っていいよ』と、素敵なノートをくれました。大切に使います。

 大好きな深い青い色のノート。


 海って深く深く潜ったら、こんな色なのかな?


 水族館の色みたいだな……とも思う。


 私はこのノートに『私』を書いていきます。

 日記とは違うと思う。


 タイトルは『LIFE "Will and testament"』

 意味は辞書で調べてね。


 ここには幸せなことだけ書けたらいいな。


 だって人生は辛いことを言い出したら、キリがないでしょ?


 私は人の痛みがちゃんとわかるほど大人じゃないと思う。

 けれど、子どもだからってすべて単純に片付けられてしまうほど幼稚でもないと思う。


 世の中は冷たくて、不公平で、ときに意地悪で、でもやっぱりまだ優しい。

 だから、みんなが苦しんでいるけれど、みんながどこかで幸せになるチャンスがあると思いたい。


 私に——世界中を平和にすることは無理でも——町内を平和にできるくらいの力があればいいのに。


 そう思うから、ここに小さな奇跡を書き留めて、

 私のLIFEとWill and testamentをこのノートを開けたすべての人に捧げます。





 河野沙樹


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『すべての人に捧げます』……。



「ミャー」


 僕はマフィンの鳴き声で、我に帰った。

 閉めたはずの部屋のドアが開いていて、その隙間から僕の兄とも言えるマフィンがするっと現れた。


 マフィンは僕が生まれる前からこの一家とともに暮らしている、ゴールデンブラウン色の毛がふわふわした猫だ。マフィンはもうすぐ二十歳になる。もともと迷い猫だったマフィンは少し気難しいところがあり、怒らせると少し怖いので、僕はよくマフィンのことを『マフィンさん』と呼ぶ。


 ドアまで小走りで行って、階段下を覗いた。家の中はまだ静まり返っている。お母さんは、今日は帰りが遅いのかな? ドアを閉めて振り向くと、マフィンは僕のベッドの上に乗って毛繕いを始めた。


 僕は急いでベッドに戻ると、ベッド脇にあるスタンドライトを点けて、片手でマフィンを撫でながら、ノートを膝の上に置いてページをめくった。


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