空:ずっと近くで見ていたから
あなたが言葉を失って五年と数ヶ月。
今日、あなたは息を引き取りました。
生まれた時から見ていたから——いいや、もしかしたら、生まれる前から近くで聞いていたから——さっちゃんは僕にとってはどこまでも普通のお姉ちゃんで、どこまでも単純にあなたのことが大好きだった。
あなたの痛みを知りたくて、分かりたくて、あなたに笑っていて欲しくて、でもただただ一緒に居たくて、僕はいろんな本を読んだ。
もしかしたら、あなたをの痛みを消す方法がどこかに書いてあるかもしれない。
あなたと同じ痛みを持つ人がどこかに物語を残しているかもしれない。
七夕の日も、動物園に行って来た日の夜も、『薬』を飲んで無理した日にも、マティアスさんが亡くなって落ち込んでいたときにも、お姉ちゃんの結婚式で笑顔なのに四六時中泣きそうになっていたときにも、箱根旅行でみんなで大笑いした後にひとりで悩んでたときも、病室で嬉しそうに最後のプレミアチケットを受け取ったときも、僕はいつだって、あなたの痛みを知りたかった。
僕はあなたをずっと近くで見ていたから、幸せはたくさん分かち合ってこれた。
けれど、頭痛すら知らない僕は、あなたの感じる痛みを分かち合うことはできなかった……。僕はずっと傍観者だった。
マティアスさんのようにあなたに寄り添える存在になりたくて、直さんの言葉を借りるなら、そう僕はいつも、君の生きている世界を生きてみたいと思っていた。
『さっちゃん、 Death day おめでとう。
僕はさよならは言わないけれど、
あなたが痛みのない世界にたどり着いていること祈ります』




