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白猫と黒い病院  作者: 鬼桜天夜
序章
2/2

オチャラケタ患者

途中途中で書くことになってすいません!

私の諸事情ですがお許しください!


By鬼桜天夜

あれから数分、彼らは病院内の1階を当てもなく探索していた。


『1、2、、、3!?この大扉、鍵穴が3個もある!』


「普通の病院じゃ、ありえないわよね」


『ここは、閉鎖病棟だったのか?それも重度の患者が運ばれる程の』


「鍵を3重にかけとくほどの病院なんて聞いたことないわ。"よっぽど"なのね、ここ」


『、、、』

この病院がそれほど重度の鬱病患者、もしくはそれに匹敵する患者が運ばれる病院だとしたら!


『しっ、レディ!』


「言い直した事は褒めたげる。なに?」


『そりゃどうも。もしかしてレディは殆どの部屋に行ったこと無いんじゃない?』


「へぇ、良い眼ね。そうよ、この病院の部屋ほとんど調べられてないのよ。

だから少しお手上げ状態だったわ。この体だと開けられない部屋もそこそこ多くて」


『うん、状況はだいたい分かったよ。とりあえずしらみ潰しに部屋を当たってみよう』

どこに行けて、どこが閉まっているのかを把握する為に、彼らは1階を探索する事にしたのだ。




相変わらず暗い病院の廊下は、光源は月光と、その月光で照らされる白猫となった。歩く度に乱反射する光は、思いのほか目を細める必要も無く、廊下を規則的に照らしていく。

光で照らされると改めて思うのは、やはり"黒い"という事。ほんの一瞬、暗いから黒いという淡い期待は儚く消え去り、改めてこの病院は黒いというのを知った。








『ここは、あ、開いてる』


「やっとぉ?もう何十個も調べたわよもぉー!」

あれから片っ端からドアを開けようと試みたが、総スカンに会い一方は面倒くさくなり、一方は、


『うん、やっとビンゴ』

逆に元気になっているのだ。


「なんで意気揚々としてるのよ」


『そりゃ楽しいからね』


「わぁ変人」


『褒め言葉どうも。それじゃ開けるよ』

そこは病院の一室と言うよりも、倉庫のような場所だった。真ん中が人一人歩けるぐらいに空いていて、それか暗闇に続いている。周りにはうず高く本や小さな機材が置かれている。


『備品置き場、かな』


「そうね、それにしてもごちゃごちゃして、足場もギリギリあるかないか分からないぐらいなんだけど」


『君は猫だからほぼ関係無いと思うけど、、、』


「レディに対してそれはないんじゃないの?さぁ!レディをしっかりエスコートしてよね」


『はいはい。進むよ』

本を時には端へ退けながら、機材の山を掻き分けながら奥へと進む。


『!?待って』


「?どうしっむが」


『誰かいる』

先へ進むと、少し開けた場所に出た。そこは先程とは違い、棚に薬などがキレイに陳列されており、病院の倉庫だと思わせる。


「、誰かいるんだろ?早く出て来いよ、別にとって食ったりしねぇよ」


「えぇ?誰かいるのぉ?もぉお兄ちゃん早く言ってよぉ!」

気づかれてるか。

悠弥はチラリとレディにアイコンタクトをとる。レディはゆっくりとしかし警戒心を持って頷いた。


「へぇ、俺らみたいな病衣も着てねぇ。それに奇妙な人間と猫の組み合わせときた。てめぇらどこのやつらだ?」

見た目は俺より少し年上ぐらいの2人組。兄と言ったのだから2人は兄妹なのだろう。

だが驚くべきは男の態度だ。病人にしては顔色も良く態度は大きい。


「へぇ?あなた達、病人にしては随分元気なのね」


「わぁ!猫が喋ってるぅ!不思議だねぇ」

女の勘かプライドか、男である俺にはよく分からないが、見えない火花を散らしながら睨み合っているので、そっとしておこう。今はこちらの、兄と(おぼ)しき奴から情報が聞けるといいが。


「んで、お前らこんなヤバい所に何の用だ?まさか入院じゃねぇよな?」

兄と呼ばれる男は笑いながら尋ねる。


『まさか。こんな不気味な病院に入院するなんて有り得ないだろ』


「はっ、違いねぇな」


『単刀直入に言わせてくれ。俺はここから脱出したい、そのために協力してくれ』


「あぁ?あぁ、なるほどな。お前は"出られる"ってわけかクソが」

男は協力を持ちかけると、急に不機嫌になった。その理由が分からず、悠弥は少し眉をひそめるが、話を続ける。


『出られるとは、一体どういうことだ?』


「お前に話す義理はねぇよ。まぁいい、ここから出たいんだろ。ならあの玄関扉の南京錠は知ってんな?」


『知ってるよ。その3つの南京錠の鍵を探してるんだ』

それを言うと、男はその言葉を言うのを知っていたかのように笑みを浮かべた。その笑みを、俺は、どこかで見た気がした。


「あるぜ、その鍵」

ポケットから出した玄関扉の鍵だと言うそれは、病院の鍵にしては豪邸の物のようだった。銅色の綺麗な光沢を放った鍵を、男は俺にヒラヒラと見せつける。


「これだろ?探してんの」


『何をやらせる気だ?』


「おっ?なぁに?俺はそこまで鬼畜じゃねぇよ?」


『、、、その意地の悪さが滲み出てる笑みで物言われてもな』


「うっわ。お前思った以上に糞野郎だな」


『あぁ。案外俺らは似た者同士かもな?』


「ったく、これじゃ腹の探り合いの意味がねぇな。おい愚妹(あや)、さっさと行くぞ!」


「!はぁい」


「あっ、まだ話終わってないわよ!」


「おい」


『なんだ』


「鍵が欲しけりゃ2階に行ける所を探せ。俺らの目的はそれだ」


「2階?どうして」


「どうしてもだ。2階に行けるようになったらこの鍵くれてやんよ」


『分かった』


「はっ、朗報期待してるぜ?じゃあな」

兄妹が堂々と悠弥の横を通り過ぎると


「ちょっと。何話してたのか知らないけど、なんであいつと口約束なんてしてるのよ」

猫の顔にしては表情豊かな彼女は、恐らくムスッとした顔で聞いてきた。


『そういう君こそ、妹の方と何か揉めていたようだけど』

悠弥が尋ねると、明らかに図星だったのか分かりやすくたじろぐレディ。


「べ、別に男のあんたに関係ないわよ!で!?何か収穫はあったんでしょうね?」


『あぁ。どうやら兄の方は、2階に行きたがっていたようだ』


「2階?でもそうね。ここは見た所3階まであるようだけれど、今は2階にすら行けないもの」


『え?なんでこの病院が3階だなんて分かるんだ?』


「見た感じ」


『聞いた俺が馬鹿だった』

さて、どうするか。あの兄が言っていることが本当なら、俺達との目的にも合っているし言う通りにするのが良いのだろうが、少し気にかかる。

いや、気にかかるというより。気に触る、の方が正しい。


『気のせいか』


「何が?」


『何でもだよ。ともかく俺らも上に行く方法を探そう』


「今はそうするしかなさそうね、いいわ、ひとまず2階へ続く場所の偵察と行きましょう」





あれから数分の所に階段はあった。だがやはり問題があった。

「ただでさえ分厚い扉に雁字搦めの鎖、ホントにここ病院なのかしら」


『ここが現実かも定かじゃないんだ、考えてても仕方ない』


「それもそうね、猫が喋るんだもの」


『あのなぁ』


「鍵が無いならここから上に上がるのは選択肢に入れない方がいいかしらね」


『だろうね。君がその肉球でドアをぶち破れるなら、話は別だけど』


「レディになんてことさせるのよ、モテないわねあんた」


『余計なお世話だ。非常階段とかがあるか知ってるか?』


「そこまで重点的に調べた事はないけれど、可能性があるなら庭かしら」


「可能性があるなら縋るべきだ。行こう」












この庭は何かを思い出させる。俺の知らない記憶、でも決して楽しい記憶ではないのは分かる。唯一外が見れるこの場所は、辺りの風景を一望できる。どうやらここは町外れのようだ。周りには林と上へと続く山道があるが、人気がない。

小さな広場に噴水があり、周りには花々が植えられており、夜の月明かりに照らされている。花は明るい色彩が多いが、それが当たり前なのに異質さを感じる自分に胸が痛くなる。チューリップやストック、ネモフィラなど春に咲く花を多く見かけるあたり、季節までは考察出来るが、いかんせん実感が湧かない。春の暖かい風が来ないからなのか、むしろ冬の冷たさを感じるぐらいだ。


「お庭のお花なんか見詰めちゃってどうしたの?」


『聞く気がないのに、見え透いた嘘はつかないで欲しいな』


「なら聞ぃかない」


『非常階段ぐらいあいつらなら考えつきそうだが、探すだけ探すか』


「随分と買いかぶるのね、あの2人を」


『なんでだろうな』

庭から病院の方を見る。相変わらず病院は黒く、その鈍く月明かりに照らされた外壁を見ていると形容し難い感情になる。体が、心が縛られる感覚。俺は、この感覚を知っている、?


「まぁた顔面蒼白。病院見つめてどうしちゃったの?」


『なんでも、ないよ。なんでもない』


「あらそう。ならせっせと働いてね」


『はいはい。仰せのままに』

一通り探すと、庭の端に不自然な扉があった。


『なんの出入口かぐらい書いてある筈なんだけどな』


「多分それね!行ってみましょ!」


『即決か。分かった、行こう』

扉はこちらの感情とは逆にスムーズに開いた。そのまま奥へ進むと、また扉があった。どうやら普通に鍵で開けるタイプではなく、電子ロックがかけられているようだ。


『内側からしか開けられないか。やっぱりここ、異常に警備システムが高い』


「どうするのよ?あの兄妹たちはこれをどうにかしろって言いたいって事よね?」


『だろうね。さて、どうしたものか』

辺りを見回す。なんら変哲のない連絡路。後ろはドア、前は電子ロック、上は通気口。そうか、通気口なら!


『レディ、君の力を貸してくれ』

悠弥は真剣な眼差しで彼女、レディを見つめる。あまりの真剣さに、あのレディも少し驚いたようだ。


「な、なに?力を貸してって、一体何をするのよ」


『あの通気口から、あっち側へ渡って欲しいんだ。そうしたら、多分九桁のパスワードを入力する所があると思う』


「えぇ、分かった。そこにパスワードを打ち込めばいいのね?でも何でそんなに詳しいのよ。やっぱりあなたここに来たことあるんじゃない?」


『さぁね。でも知ってるんだ』


「覚えてるじゃなくて?」


『そうとも言える。でも今は、それは重要じゃないだろ?』


「それもそうね。で?まさか暗号も知ってるの?」


『5364』


「えホントだったの。冗談だったんだけれど」


『良いだろ、早く行ってくれ』

別にいいけど、とでも言いたそうな顔でこちらを見ると、俺の肩に乗り絶対にあそこまで強く蹴る必要がなかったのに、俺の肩を強く蹴って通気口へ入っていった。


『あんの白猫が」

俺のことを踏み台扱いしたな。正直、怒るほどの事じゃないからいいけど。

真上にある穴から爪の擦れる音が、どんどん遠ざかっていく。暗闇を見送ると、腕を組んだり壁に寄りかかったりして時間を潰す。

瞼を閉じて体感では数分ぐらい経った頃だったか、まだ来ないなと扉を見つめたらタイミング良く電子音が聞こえた。壁にもたれたまま扉を見続けたら、ゆっくりと扉が開いた。





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[良い点] とてもスリル満点で楽しかったです 最近ではあなたの小説を読んでいる時が1番の幸せです この先も頑張って下さい!応援しています [気になる点] 普段こうゆうの書くのに疲れたら何をしていますか…
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