89話 その時
スギノルリ、次はどこへ!?
ヴァイスとエクルと別れ、私が向かった先は、
スート国だ。
ジロッソさんの宿屋の部屋に転移する。
下の食堂を見ると、キュノさんがいた。
私がゆっくり階段を降りていると、店にいた兵士が動くのが見えた。
「明日、私の方から行くまで待っていてと伝えて」
その言葉に立ち止まった兵士は私の方を見て、軽く頭を下げて店を出て行った。
私は、キュノさんの方へと向かった。
「お話があります」
私の方を一度見て、食べかけのスープを飲んだ。
「疲れただろ。今日はゆっくり寝な」
ジロッソさんに挨拶をして、机を立つキュノさん。
「明日の朝店までおいで。話はその時に聞く」
笑顔なく淡々と話をする。
そのまま帰ろうとするキュノさんを呼び止めた。
「待ってください」
「話は、ギルドで出来ませんか?」
私の言葉に、キュノさんとジロッソさんが目を合わせた。
ジロッソさんが頷くと、キュノさんは少しため息をついて、
「わかった」
そう言って店を出て行った。
残された私に、ジロッソさんがいつものようにスープを出してくれた。
変わらないこの味。
違うのは、ジロッソさんの笑顔が少し元気がないのと、会話をすることがなかったこと。
お腹を満たした私は、部屋に戻って横になった。
ほっとするこの場所。
私の帰ってくる場所。
この場所がもし…
色々なことを考えながら、私は眠りについた。
翌朝、起きた私が食堂まで降りると、そこにジロッソさんの姿はなかった。
机の上に用意されたスープとパン。
それを食べ終わると、私は宿を出た。
朝日が眩しい。
まだ朝早い広場には人がおらず、閑散としていた。
私は、ギルドまで歩いた。
この国を歩くのはいつぶりだろう…
最近は、来てもジロッソさんのお店だけだったりだったから。
その前はこの広場で勇者とやり合い…
ギルドに行くのも、初めて冒険者登録してもらった以来だな。
私は、そのギルドの前で止まった。
入り口の前で、深呼吸をする。
そして、勢いよく扉を開けて中へと入った。
ギルドにもまだ人はいなかった。
受付も無人だ。
そのまま待っていると、奥から声がした。
「ルリ、こっちだ」
声の方へと動くと、部屋から顔を出すジロッソさんがいた。
私はその部屋の中へと入った。
そこには、ジロッソさんの他に、キュノさん、
そして、ケーンさんがいた。
「おはようございます」
入り際に挨拶をして席についた。
3人と向かい合う。
沈黙が続いた後、私から切り出した。
「ナデシコさんに会ってきました」
「……そうか」
ケーンさんの方を向いて話したので、少し驚いたように目を開いた。
「どうしてわかったんだい?」
ケーンさんが私を見る。
「僕が父親だと」
そう。ナデシコさんは、千代姫さんとケーンさんの子供だ。
私がそれに気付いたのは…
「剣です」
ケーンさんの腰に付けられた、年季の入った剣を指した。
「コレが?」
不思議そうに剣を持ち上げて、裏表を見るようにまわした。
そして私も、ジエラにつくってもらった剣を机の上に置いた。
「この剣は、創造国のある店でつくってもらいました」
3人がそれを見比べると、その二本の剣に入っている紋様がよく似ていることに気付いた。
「この店には、ある剣が飾られていました」
「日本刀です」
この世界での剣といえば、西洋剣。
日本刀を目にしたのは、ジエラの店だけだった。
その時に思った。
これは間違いなく、過去に召喚された者の物だと。
そしてそれは、
「あの剣は、ジロッソさんの物ですね」
突然のことに、動揺するジロッソさん。
ジロッソさんは相変わらず嘘がつけない。
初めから違和感があった。使い古されたケーンさんの剣。
年老いたギルド長が、そんな物をいまだに携えている理由。
「ケーンさんの中でまだ、冒険は終わっていないから」
昔の仲間である千代姫さんを救う為なのか。
もしくはその反対なのか。
どちらにせよ、そこまでの覚悟を持っているということは、千代姫さんと想い合ったのはケーンさんなのだろう。
「役目を終えたジロッソさんの刀は、創造国にて次の勇者への道標として遺された」
そして、その二本の剣と同じ紋様が入った物がもう一つ。
私は短剣を机の上に出した。
「キュノさんから頂いた物です」
「ケーンさん、ジロッソさん、キュノさんは、千代姫さんと共に500年前に召喚された人達なんですね」
短剣を見つめるキュノさんの目線に顔を入れた。
「教えてください。500年前に、一体何があったんですか?」
「キュノさん、いえ、雪乃さん」
スギノルリ、と500年前の召喚者達!




