表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/119

70話 モーブとウィスタリア


 スギノルリ、精霊王見つけました!



 「モーブ様が心配されています。里へお戻りください」

 

 「帰らぬ」


 「ウィスタリア様?」


 ノワールが頭を上げて精霊王を見る。



 「この石頭が首を縦に振るまではウチは帰らぬ!」


 その石頭というのは、どうやら眉を下げて困っている院長のことのようだ。


 「ですから、それは出来ぬとお断りしたではないですか」


 「やってみねばわからぬ!」


 子供が駄々をこねるように、人の話を聞こうとしない精霊王。



 「一体どうされたのですか?」


 ノワールがたずねたが、精霊王は黙ったまま答えようとはしなかった。


 

 「ウィスタリア様に、ある物を直して欲しいと言われまして。それは無理だとお断りしていたのです」


 口を開いたのは院長だった。


 「何か、壊れたのですか?」


 ノワールの言葉に対し、精霊王は扇を持つ手とは反対の手で、胸元を触った。


 服の形状からして、そこに何か入れているのだろう。



 「……其方は、時間を操ることが出来るのだろう?」


 ギュッと手を握りしめ、少し小さくなった声でつぶやいた。


 「時は流れるものです。それを戻すことなど、出来るはずがありません」


 「私に出来るのは、その流れを緩やかにすることくらいです」


 耳に届く院長のその言葉は、優しく、丁寧で、聞いていて心が落ち着いた。



 そして、やっと受け入れることが出来た精霊王は、扇をおろした。


 「もうコレを直すことができない…ウチは…ウチはどうしたらいい…」


 今にも涙を流しそうな表情な精霊王は、本当にただ無垢な少女だった。




 「壊れたものを、見せていただいてもいいですか?」


 私は思わず声に出してしまっていた。


 なんて畏れ多いことを!と隣のノワールの心の声が聞こえた気がしたが、もう後には引けなかった。


 「………コレじゃ」


 精霊王が胸から取り出し、手の上に乗せて見せてくれた。



 そこにあったのは、花びらがちぎれ、枯れた白色の花だった。


 

 なるほど…


 私は、精霊王の近くまで行き、膝をついた。



 「ウィスタリア様、モーブ様より、伝言を賜っております」


 その言葉に、精霊王が少しビクっとした。


 「ごめんね、と」



 「貴様に何がわかると言うのじゃ」


 精霊王が睨みつける。



 「お察しするに、コレはモーブ様のものですよね?」


 ノワールが驚いてこちらを見た。


 「お二人に何らかの衝突があり、その結果、モーブ様の指飾りの花がちぎれてしまった。モーブ様は悲しまれ、ウィスタリア様はそのままその場を離れてしまった」


 「なぜ…?」


 釣り上がった目を見開き、私を見る。


 「モーブ様と里でお会いした時、指輪を見て違和感があったんです。エルフの皆さんは、花や葉の飾りをしているのに、それをしていなかったので」


 「精霊王様だからなのかな、とも思ったんですが、ウィスタリア様はやはり葉の指飾りをしていた」


 「カーマインとビオレータの元へ行ったのも、山の頂上にあるこの花を採りに行くため。けれどそれは、何者かに折られていた」


 


 「……そうじゃ」


 「其方の言う通りじゃ」


 「あの日、エルフの里の月祭りへ向かおうと準備をしていた時、ウチよりも遅かったモーブを手伝おうとしたのじゃ」


 「しかしその時、誤って指輪に当たってしまったのじゃ」


 「砕け散る指輪を見て、ウチは思わず叫んでしまった」



 『モーブがノロマだからいけないのじゃ!』



 「そんなことを言うつもりはなかったのじゃ。ウチはモーブの顔を見るのが怖くなって、その場から逃げたのじゃ」


 「その後、新しい花を採りに行ったが、何故か折られておるし、時間を操れる者がおったと思い出して来てみたがこの通りじゃ」


 「ウチは、モーブに合わせる顔がない…」


 留めていた涙が、頬を伝い流れた。




 モーブに、ウィスタリア、二人の精霊王。


 今まで会った王といえば、巨人王と獣族王で、そのどちらも貫禄のある偉大な王、ってかんじだった。


 この二人の精霊王は、見た目もそうだけど、まだまだ精神的に幼いのかもしれない。


 それゆえに、純粋なる心を持っているのだろう。



 「ウィスタリア様」


 「花はいずれまた咲きます。指輪は、その時にまたつくりましょう」


 ウィスタリアが首を横に振る。


 「それではダメじゃ。それでは遅いのじゃ」


 「手ぶらでモーブの元へは帰れぬ」



 強い意志のウィスタリアに、私は少し周りを見た。


 ノワールも、院長も困ったように、でもウィスタリアの心配をしている。


 ヴァイスも同じく、ラピスは興味なし、と。


 あれ?エクルは?


 私は立ち上がり部屋をよく見た。


 すると、エクルが部屋の端にあった本棚のほうへいるのがわかった。



 「エクル、何してるの?」


 私は小声でエクルに近付いた。


 「ルリ、ごめんね、難しい話で疲れちゃって…」


 確かに仕方ないか、と思いつつ、本を見に来たエクルも、これまた難しそうな分厚い本を手にして困っていた。


 本を戻そうとした時、私はある事を思い付いた。



 「ルリ?それ何してるの?」


 エクルに変に思われながらも、私は準備をした。




 スギノルリ、思い付きました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ