58話 月祭り
スギノルリ、月祭り、とは?
残された私達に、エレが説明してくれた。
【月祭りの儀式】とは。
月祭りとは、40年に一度行われる特別なお祭りらしい。
40年に一度、1日多く月が輝く日。
その神聖な夜に、ある儀式が行われる。
その結果によって、里長が決まる。
「この数回は、連続でノワール姉様が里長を務められています」
そして、その儀式とは。
エルフの象徴たるもの、
【魔力】を競うものである。
魔力の【量】と【質】。
その2つそれぞれを測り、その合計点数で示される。
10段階評価×2、合計20得点。
「じゃぁ、その半分の得点を出すことが条件ってわけね」
半分…
平均ってことかな。
それならなんとかなりそうじゃない?
ヴァイスは何であんなに焦っていたんだろう。
「エレ。前回の最高得点と、10点以上を獲った人数を教えてもらえるかい?」
ヴァイスが聞いた。
「最高得点は、ノワール姉様の14点です」
「えっ!?」
私は思わず声が出た。
「内訳は、量8、質6です」
「10点以上は、その姉様を含め、5人だけです」
「……!」
そんなに少ないの?
「最高20得点なんだよね?」
「……。20点が出たことはありません」
「10点は、精霊王の力と言われています。なので、実際の最高は9点×2の18点です」
「それと、エルフにはそれぞれ特徴があって、魔力量と質、どちらか一方が秀でていて、もう片方の能力は低いのです」
「それ故、量か質、どちらかが 5 以上であれば一人前と言われ、両方5以上の者はエリートと呼ばれ、ごく僅かなエルフのみなのです」
「…………」
「わかったかい?どれだけ無謀な条件を出されたか」
長老様も、私の事を心良く思ってはいないということだ。
「月祭りの儀式は明日の夜です」
「ちなみに、2番目はシュヴァルツ様で、量5、質8の合計13点です」
「私達姉妹の一族は、代々魔力量が多く、シュヴァルツ様の一族は、魔力質が多いのです」
エレは耳に付けていたピアスを見せてくれた。
丸い、リングのようなピアスに、丸や線が掘られていた。
「これは、その魔力を示した物です」
「丸の数が魔力量、線の数が魔力質の分だけ刻まれています」
なるほど…
「もう片方は?」
私は、反対の耳にしてあるピアスを指差した。
「こっちのは、この里の中で、魔力数上位10名にのみつける事を許されているものです」
そこには、『3』の数字が刻まれていた。
「この数字は?」
私が聞くと、エレは少し恥ずかしがって、
「私は、この里で3番目に魔力が高いのです」
「えっ、凄い!」
ちょっと意外だけど…
「あ、そうか、ノワールが、アスワドとエレが同等だって言ったのは…」
「はい。私とアスワド様は、共に11点で同列3位なのです」
「へぇ〜。え、でもそれにしては、エレを見下し過ぎじゃなかった?」
「それは…」
私は、改めてエレのピアスに刻まれた丸と線の数を数えた。
「……9と2?」
「!!」
エレがピアスを手で隠した。
「………」
「9なんて凄いじゃん。最高点なんでしょ?」
手を戻し、その手をもう片方の手で強く握りしめた。
「9点が出たのは過去一人のみで、幻の数字と言われていました」
「最近では8が最高だと言われ、それ故、魔力量8の姉様と、魔力質8のシュヴァルツ様のどちらが里長として相応しいのかと、いつも揉めていました」
「そんな時、私が9点を出してしまったので、シュヴァルツ様を里長へ推すのであれば、魔力質9を出すべきだ、と」
「魔力質が2しかないにも関わらず、11点で3位というのも、魔力質派閥の人達に目の敵にされて…」
『この木偶の坊が!!』
アスワドがエレに対してあんな態度だったのはその為か…
「自分でも分かっています。私は、ノワール姉様のような優れた者ではないということくらい」
「それでも、儀式こそが全てというエルフの掟に逆らうことなんて出来ず…」
固く結ばれた手が震えていた。
「確か、ノワールはもう一つピアスしてなかった?」
「あ、はい。里長や族長は、更にもう一つピアスをしているんです」
ノワールとシュヴァルツはピアスを3つしていた。
シュヴァルツも族長ということか。
エルフの世界では、ピアスの数が強さの象徴になるってことね。
スギノルリ、エルフの縦社会を知りました!




