55話 エルフの里
スギノルリ、いよいよエルフの里です!
魔法陣を抜けた先は、
エルフの里でした!
「広い…」
今までいた森の中とは思えない、広い空間。
周りを高い岩肌に囲まれている。
これが、エルフの里…
一つの国くらいの大きさはあるだろう。
真ん中に泉があって、その中の小島に大きな樹が一本立っている。
泉の周りにも木がたくさんあって、その木の上に家が建っていた。
普通に地面に建っている家もあれば、岩肌をくり抜いた所にある家もあった。
肝心のエルフの姿は…
遠くてよく見えないな…
私が歩き出すと、
「止まれ」
紫色の大きな魔法陣に前を塞がれた。
「何者だ?」
2人のエルフが前に立った。
エルフだ〜!!
創造国で見たことはあったけど、こうしてまじまじと見るのは初めてだ!
褐色の肌に、紫色の瞳。
髪の色はバラバラで、
尖った耳には丸いピアスをしている。
すらりとした長い手足に、手には飾りの付いた指輪をしていた。
さすがエルフ。
美形です。
ここにいるのは男のエルフだけだけど、女のエルフにも期待大です!
そんな私のワクワクをよそに、冷たい視線を浴びせられている。
ヴァイスが前に出た。
「獣族よりの使者、ヴァイスです」
丁寧に挨拶をして、ここに入る時にも使った、紫色の魔石を見せた。
それを見たエルフはお互いを見て頷き、道を開けた。
「行こう」
ヴァイスが歩き出したので、それに続く。
凄いよヴァイス!!
顔パスならぬ、石パス!!
無事、エルフの里に入れたよ!
まぁ、私とラピスを見る目が若干怖かったけど…
とりあえずは、受け入れてもらえた、のかな?
「まず先に、長老に挨拶に行くからね」
ヴァイスがある方角を指差した。
そこへ向かう途中も、多くの視線を感じた。
話し声はしない。
ただ、見られている。
冷たく向けられるだけの視線が、私をこわばらせた。
「着いたよ」
岩肌にある家。
高い所にある。
今はまだその下にいる。
「私達は崖を登るけど、ルリはどうする?」
「大丈夫、魔法で登るから」
そう言って、ヴァイスとエクルは崖を登り始めた。
凄い、さすが獣族!
ロッククライミングのように、スイスイと登っていく。
「ラピスはどうする?」
鳥の姿になり、私の肩に乗った。
いや、鳥なら飛べるよね?
2人が上まで行ったのを見届けた後、私は風を使った。
一気に上まで舞い上がる。
それを見たヴァイスが、思わず声を出す。
「おぉ〜!」
「ルリ凄い!!」
エクルは手を叩いて喜んでいた。
下で見ていたエルフ達にも、少しは好感が持てたようだ。
家の扉の前に立つと、ヴァイスが呼びかけた。
「長老殿、私は獣族王ブランの息子ヴァイスです。御目通りいただけますでしょうか」
「お入り」
少しの沈黙の後、声がした。
部屋に入ると、椅子に座った老婆と、その後ろに立つ若いエルフの女の子がいた。
「お久しぶりです」
ヴァイスが頭を下げたので、私とエクルも同じようにお辞儀をした。
「なかなか面白い組み合わせだね」
老婆が私とラピスを見た。
「はじめまして。ルリといいます」
「長老のフェケテ様だ」
ヴァイスが紹介する。
「フェケテ様、こちらはビアンの息子のエクルです」
エクルが緊張しながらも挨拶していた。
ラピスは…、無言のままそこにいるだけだった。
「長老と言っても名ばかりだよ。ただこの里で一番の年寄りってだけさ」
「孫のエレだ」
後ろに立っていた女の子が軽く頭を下げた。
エルフの寿命がわからないけど、人族なら14.5歳くらいの外見だ。
薄桃色の髪に、紫色の瞳をしていた。
エルフの眼は、皆紫色なんだな。
そして、エルフも歳はとるんだ…
「それで?わざわざ何のようだい?」
長老と話をしようとした時だった。
「お婆様!!」
窓から急に誰かが入ってきた。
「ノワール姉様!」
エレも驚いている。
そのエルフは、私達と長老の間に入った。
「異質な気配を感じて来てみれば…。一体何のようだ」
ラピスを睨みつけている。
美人エルフ襲来!
スギノルリ、ワクワクがとまりません!




