50話 第三王子
スギノルリ、王子にモテモテです!?
翌朝、部屋にいなかったことがバレて、結局ラピスはヴァイスに怒られていた。
下へ降りると、二人の王子が既に来ていた。
早くない?
あ、キュノさんもいる。
「キュノさん!おはようございます!」
「おはよ。元気そーだね」
アレ以来のキュノさんも、私の頭を撫でてくれた。
「なーんか、面白いことになってるね。王子二人に求婚されてるんだって?」
「笑い事じゃないですよー」
楽しそうなキュノさんをよそに、私は憂鬱だった。
兵士達が何人かいるが、他のお客さんはいなかった。
昨日のこともあるし、中には入れてないようだった。
なら、さっさと話を終わらせよう。
私は二人の王子の元へと向かった。
王子はそれぞれ別の机に座っていたので、私も近くの椅子に座った。
「おはようございます。よく寝れましたか?」
「遅いぞ!この俺を待たせるとは!」
本当に、対照的な二人だなー。
「早速、結論から申し上げます」
王子二人が私を見る。
「私は、二人どちらの妃にもなるつもりはありません」
「何!?」
「どうしてですか!?」
「どうして?私を妃にするつもりなんてないくせに」
笑顔ない私の表情を見て、二人が黙る。
「どうせ、私を妃にでもして連れ帰れと、あの国王に言われたんでしょう?褒美は次期国王の座?」
「誤解ですよ。私は本当に貴方を必要としているのです」
「はっ、それが何だと言うのだ!妃になれば不自由ないと言うのは確かだろう!」
「ふふふっ」
私は笑った。
二人はその意味に気付いていない。
「本当に、対照的な二人ですね」
「兄弟ですからね」
「こんな奴と一緒にするな!」
「あははははは!!」
私はさらに大声で笑った。
「ルリ様、今は笑っている場合では…」
「私の事を、侮りすぎです」
私はまた、笑顔なく睨んだ。
「えぇ。私は召喚者です。召喚者の魔王討伐が義務ならば、その役目は果たしましょう」
「本当ですか!」
「けれど、勇者や、あなた達と一緒にすることはできません」
「なぜだ!」
「私は私なりに、魔王を倒しますので」
「ですからそれを、私がお支えしますので…」
「それ」
「え?」
「もうやめません?」
「何のことでしょう?」
第二王子が首を傾げる。
「私の職業、ご存知ですか?」
「……魔法使いです」
「そうです」
「はっ、役立たずが偉そうに…」
「そして私は、レベル40を超えています」
「……?」
「それが何を意味するか、わかりませんか?」
二人の王子は黙ったままだった。
「私は、【嘘を見抜く魔法】を使えるんですよ」
「!!!!!!」
驚く王子達。
「いやー。実に対照的な二人ですね」
「一人は嘘偽りなく。一人は話すこと全てが嘘だらけ」
「笑いを堪えるのが大変でした」
みるみると、一人の王子の顔が青ざめていく。
「全部バレてるから、第二王子さん」
下を向き、黙り込む。
「嘘ばっかりの優しい王子様役。お疲れさまでした」
初めから違和感があった。
ヴァイスとは違う、優しい王子。
何かが引っかかって、嘘の魔法を使ってみたら案の定だった。
「はははははは!!情けないな!!」
第二王子を嘲笑う第一王子。
「あれだけ息巻いていたくせに、その優男面もただの仮面だったとは!!」
「くっ……」
歯を食いしばり怒りを抑えている。
その表情からは、もはや昨日までの優しい第二王子の面影はなかった。
「第二王子はそれとして、第一王子もないからね」
「なんだと!?」
「それ。その上から目線、威張り、全てが嫌」
「嘘を全くついてなかった所は凄いけど、それ以前に、その国王そっくりの性格が大嫌いだから」
「貴様っ…!この俺に向かってよくも…!」
「なので!!」
「私はこの人の妃になります」
私はある男の腕を掴んだ。
二人の王子はもちろん、ラピスやヴァイスも驚いている。
「いいですよね?第三王子?」
スギノルリ、妃になります!?




