49話 第二王子
スギノルリ、を助けてくれるのは誰!?
落ちたスプーンを拾ってくれたのは、
………誰?
第一王子の腕を離し、私を椅子に座らせてくれた。
「はじめまして。私はアザーと言います」
丁寧に挨拶をしてくれたこの人もまた、金髪に青い目をしていた。
私に微笑みかけ、第一王子と距離をとった。
「はっ、第二王子が何の用だ」
やっぱり…
「何の用とは心外ですね。兄上こそ、少し乱暴なのではないですか?」
第一王子とは違い、物腰柔らかく接してくれる第二王子。
本当に兄弟なわけ?
性格違いすぎ…
顔は…、似てるような、ちょっと違うような…
母親が違うのかな。
「先にこの俺が話をしているのだ!!」
興奮した第一王子が食器をいくつか投げた。
第二王子は護衛の兵士達が守る。
エクルやヴァイスは難なくかわす。
他のお客さんに当たりそうになったのだが、私とラピスが障壁で防いだ。
私が第一王子を睨みつけると、舌打ちをして乱暴に椅子に座った。
「ルリ様。大変失礼をいたしましたこと、心よりお詫び申し上げます」
「どうか、少しだけ話を聞いてもらえないでしょうか」
大勢の人の前で頭を下げる王子に対して、私は頷くしかなかった。
第二王子は、現在の状況を話してくれた。
魔王討伐が厳しい状況であること。
勇者と祈り子がどのようにしているかなど。
そして、私に戻ってきてほしいとのことを。
「今更こんな事を申し上げて、調子のいいことだとはわかっています。それでも、お願いしたいのです」
「国王と勇者様がルリ様にした無礼についても聞いています。二人とも、深く反省しておりますので…」
「魔王討伐には、ルリ様のお力が必要なのです!」
「ルリ様にしか出来ない事なのです。この国の民を、いえ、この世界を救えるのは!」
「先程といい、先日城で見せた魔法といい、ルリ様のような魔法使いは他にはおりません!」
どこかで見た覚えがあると思っていたら…
この王子達、こないだ私が玉座で雷槍打ちまくってた時に、部屋の隅で魔法使い達と震えてた奴らだ…
必死に頭を下げて話すその姿を、第一王子も黙って見ていた。
「お役目を果たしていただけた後には、この国にとどまり、王妃となり豊かに暮らしていただければと」
「え?」
「私も王子です。ルリ様をお支えすることは出来るでしょう」
「アザー!結局は貴様も求婚しに来たのではないか!」
第一王子が声を荒げる。
なんか、流れるような話だったから、思わず聞き入ってたよ。
スマートだなー。
これぞ王子ってかんじ?
ヴァイスとはまた違う感じの、キラキラ王子だな。
「お断りします」
「はい?」
悩む事なくハッキリと答える私に、驚く様子の第二王子。
「ははっ。突然のことで驚かれましたよね。答えは急がなくていいのです。ゆっくり考えてくだされば…」
「お断りします」
「まだ事の重大さを理解されていないのです。また明日伺いますので、一晩じっくり考えてみてください。貴方にとっても、悪い話ではないと思います」
尚も笑顔を絶やさない第二王子にこれ以上何を言っても無理だと思い、その場はひとまず頷いた。
帰り際、第一王子はまた偉そうに自分の妃になるのが当然なんだと叫んで出て行った。
乱暴で高圧的な第一王子に、
優しく、国を思う第二王子。
私を妃に、ねぇ…
客が全て帰り、静かになった店内でジロッソさんの片付けを手伝っていた。
「すみません、騒がしくしちゃって」
「ルリのせいじゃねーだろ」
「転移門つかってないのに、どうして帰ってきたことがバレたんだろ…」
「店の客の中に内通者がいたようだよ」
ヴァイスがお皿を運んできた。
「お客さんに?」
「そう。我々が下に降りて来たのを確認した後、店を出て報告している者がいた」
「え、なんで知ってるの?」
「獣族は耳がいいんだ」
ヴァイスはニコリと笑った。
この国は、どうあっても私を放っといてはくれないらしい…
「今日はもういいから、上行って寝ろ」
ジロッソさんに頭をポンとたたかれた。
机に座ったまま眠そうなエクルをヴァイスが抱えて、部屋へ上がった。
「じゃ、おやすみ」
私が部屋に入ろうとすると、
「ちょっと待った」
ヴァイスに止められる。
ラピスが。
「なんだ?」
「なんだ?じゃないでしょう。何普通にそっちの部屋に入ろうとしてるの?キミはこっち」
ジロッソさんから受け取ったもう一つの鍵で、隣の部屋を開けた。
「は?いや、我はルリと一緒に…」
ラピスを無理やり引っ張り、部屋へ押し込む。
「じゃーね、おやすみ、ルリ」
扉が閉じる。
一人で寝るの、久しぶりだな。
少し心細く、布団に入り天井を眺めていると、
急に部屋が青く光った。
「えっ!?」
ラピスが目の前に現れる。
「ラピス!?」
「静かにしろ」
手で口を塞がれる。
「見つかるとまた面倒だ」
「……どうやって?」
私は小声でたずねた。
「布団に潜り寝たふりをして、転移で来た」
「ふふっ」
真顔で話すラピスを見て、なんだかおかしくなった。
「何だ?」
「んーん、別に」
ラピスが隣にいる。
この温もりが、いつも私を支えてくれる。
結論は出た。
明日、話をしよう。
スギノルリ、王子にモテモテです!?




