47話 エクルとヴァイス
スギノルリ、また出番なしでした!
今回からは登場します!
私達4人は獣族国を出て、スート国を目指していた。
転移ですぐに行かない理由は、エクルに外の世界を見せてあげたかったから。
今まで、ボロボロになりながら必死で戦っていたエクルに、少し余裕を持って旅をしてもらいたいと思ったからだ。
そう。
そう思ってたんだけど…
シュパッ
ドシーン!!
ザシュッ
ドドーン!!
道中に現れる魔物達を、エクルとヴァイスが競うように次々と倒していっていた。
「やった!これで連続ぼくが倒したよー!」
「倒しやすい魔物を譲ってあげただけだよ」
エクルはやっぱり強い。
刀の扱いにもすっかり慣れたようで、持ち前のスピードであっという間に倒していた。
一方のヴァイスもなかなかだ。
戦うところを初めて見たが、2本の短剣で確実に魔物を仕留めていた。
「獣族も、武器で戦うんだね」
「獣人や亜人の姿の時は基本武器を持って戦うよ。牙や爪では大きさ的に厳しいからね」
「なるほど。本来の姿にもなって戦うの?」
王弟ビアンの様に。
「場合によっては、かな」
獣族国にいる間、ヴァイスとあまり話す機会はなかったけど。
こうして旅をしていると、その人格が見えて来た。
獣族王にも感じたことだけど、余裕ある風格。
優しい口調と、時々見せる笑顔が、一国の王子だということを思い知らされる。
ラピスやジロッソさんよりも大きいのに威圧感がないのは、私に対して、そう接してくれているのだと感じるからだ。
獣族国では王子として、威厳ある口調で話していたけど、今はただの優しい青年だ。
そんなわけで、私とラピスは全く出番がない。
まぁ、楽でいいんだけどさ。
なんか、いつの間にかパーティー登録されてて、2人の戦闘成果のおかげて勝手にレベル上がってくれてるし。
ラピスは、いつもなら鳥の姿で肩に乗ってるはずが、獣族国を出てからはずっと人族の姿のままだ。
相変わらず機嫌は悪いけど。
「ねぇ!ルリ今の見てくれた!?」
「うん、見てたよ」
「ぼくがルリを守るからね!」
「ありがと」
エクルの頭を撫でた。
そういえば…
「エクル、話し方が上手になったね」
「そうかな?」
「うん。少しの間に背も伸びてない…?」
私が驚いていると、
「あの泉に長い間いた弊害だろう」
「え?」
「本来なら耐えられるはずのない空間だったはずだ。母親と妹がそうだったように。エクルに身体的影響がなかったのは、代わりに成長を止め、さらには退行させていたからだろう」
「その縛りがなくなった今、本来の姿に戻っていっているのだ」
なるほど…
出会った時のエクルは、8歳くらいの男の子だと思っていたけど、今の姿は12歳くらいってところかな。
可愛かった男の子が、すっかり美男子になっていた。
てゆーかこの状況…
ツンデレ?俺様の最強竜族
リアル王子のキラキラ白獣人
可愛い弟キャラ
乙女ゲームか!!
待って待って。
何この状況…
私、ゲームはもっぱらRPG派で、乙女ゲームは専門外なんですけど!!
▶︎ガンガン行こうぜ?
▶︎命令させろ?
▶︎魔法使うな?
やばい、選択肢が分からない…
美人エルフ求む!!
「このまま人族の国に行くの?」
「ううん、近くまで行ったら、転移で入るよ」
国門通って国王にバレるのは避けたいからね…
ジロッソさんの店につくった転移口に移動しよう。
「ぼく、人族の国初めてなんだ!楽しみだな〜」
そっか…
「エクル、聞いて?」
「ん?」
「これから行くスート国は、私の大事な人達がいる所なの。だからその人達にちょっと会いに行くだけで、長居はできないんだ」
「また、創造国とか、別の国にゆっくり行くから、観光とかはその時にしようね」
「そっか…。うん、わかった!」
なんて聞き分けのいい…!いい子だなー。
「ヴァイスも初めて?」
「そうだね。創造国やエルフの里には行ったことがあるけど、人族の国はない。歓迎もされないだろうしね」
「そっか…」
獣族が人族の国に入るのは大変なんだな。
今回はジロッソさんのお店だけだし、人族の姿の二人なら大丈夫かな。
「お腹空いたね!ご飯にしよう!」
「わーい!!」
残りわずかだったジロッソさんのスープを皆で分けた。
「美味しいー!!」
「本当に。美味しいね」
エクルとヴァイスの舌にも合ったようだ。
「このスープを作ってくれてる人に会いに行くの」
「じゃぁまた食べれるの?やったー!」
「こんな大きな鍋を持って旅をしている人を初めて見たよ。便利だね、アイテムボックス」
!!
「知ってたんだ。アイテムボックスのこと」
「一部の者は知ってるよ。多くの獣族は、単なる魔法だと思っているけどね」
「こうした食料や薬草、魔力回復薬など、いくらでも持ち運びが出来るなんて。魔力不足を気にしなくて良い。魔法使いにはピッタリのスキルだね」
魔力無限大♾なんで、回復薬は必要ないんですけどね…
お腹を満たした後また砂漠を歩いて、日が暮れる前に転移をつかった。
久しぶりに二人に会える!
スギノルリ、ただいまです!




