46-2話 祈り子ー浅葱美沙ー
スギノルリ、出番なしでした!
今回も別視点でのお話です。
【祈り子】の名前は浅葱美沙。
16歳。
高校1年生。
両親と妹の四人家族。
父親は姉妹が幼い頃に他界し、母親は再婚した。
新しい父親は、血が繋がっていない姉妹を本当の子供の様に可愛がってくれた。
そんな優しい父親に、幼かった妹はすぐに懐いた。
まだ本当の父親の記憶が残る美沙にとって、新しい父親を受け入れるのは時間がかかった。
しかしそんな美沙に、母親が言った。
「どうして美沙は妹と違ってお父さんと仲良く出来ないの!あんなに優しくしてくれてるのに!」
「お父さんが可哀想でしょ?」
「お母さんに恥をかかせたいの?」
何度言われても態度が変わらない美沙のことを、ついには母親は見放した。
お母さん、私のことは可哀想じゃないの?
もう、お父さんのことは忘れちゃったの?
しばらくして、弟が出来た。
妹と弟、両親は仲良く暮らしていた。
美沙だけを除いて。
美沙は、4人の邪魔をしない様にしていた。
自分からは話さない。
自分の気持ちを言わない。
受け入れてはもらえなくても、嫌われない様に。
顔色を伺い、怯えながら過ごしていた。
それは家の中だけではなく、学校でも同じだった。
そうして、【浅葱美沙】という人格が出来上がった。
異世界に召喚され、【祈り子】と讃えられた。
こんなにたくさんの人に期待され、話をしたのはいつぶりだろうか。
私はちゃんと出来ているのだろうか?
自信のなさが戦闘中にも現れる。
自分のこの決断は果たして合っているのか?
間違っていたらどうしよう…
迷いが判断を遅らせる。
勇者の怒鳴り声で慌てて力を使う。
周りの兵士達も呆れている。
この世界でもまた、嫌われる…
しかし、【祈り子】の立場は揺らがない。
私に、魔王討伐なんて大役が務まるはずがないのに…
私には無理だよ…
誰か、助けて…
スギノルリ、また出番なしでした!
お読みくださりありがとうございます。
明日から本編に戻ります。




